電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高橋克彦『火怨~北の耀星アテルイ~(下)』を読む

2008年04月29日 07時06分33秒 | 読書
講談社文庫の高橋克彦著『火怨~北の耀星アテルイ~(下)』を読みました。古代東北の英雄物語、当面の戦いに勝利したアテルイらは、物部氏の天鈴の導きにより、ひそかに都に上り、坂上田村麻呂と対面します。互いに尊敬できる好敵手と認め合い、船で陸奥に戻りますが、そこでは蝦夷の団結に乱れが見られました。東日流(つがる)の赤頭の日和見主義が一定の影響力を持っていたのです。しかし、アテルイらが東日流(つがる)に乗り込み、毅然と対応して蝦夷の内部分裂は回避されます。

そしてついに坂上田村麻呂が征東副将軍に任ぜられ、十万の兵とともに陸奥にやってきます。蝦夷の軍は一万五千。平原で戦えば勝ち目はありません。蝦夷軍の軍師である母礼は策をめぐらし、山中に多くの砦を築きます。一方、田村麻呂はそれまでの朝廷軍の失敗を詳細に分析し、一年かけて地形や天候を調べます。ついに始まる戦いとその結果については、実際に読んでみてのお楽しみと言うことで省略しますが、なるほど、そうきたか、という感じでありました。古代東北の英雄物語、ゲリラ戦の顛末は悲劇的な色彩を帯びながら、鎮魂の最後を迎えます。



裏岩手連峰の縦走を機に接して30数年、偶然に知ったアテルイ伝説の詳細は、じゅうぶんに満足できるものでした。


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2 コメント

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奇遇。 (きし)
2008-05-01 00:49:33
アザマロ違いだったのですね。
アザマロ以後はこちらでも読みたい気分です。
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きし さん、 (narkejp)
2008-05-01 05:44:42
コメントありがとうございます。高橋克彦氏は、アザマロに鮮麻呂という字をあてて、多賀城でついに決起した蝦夷の代表、といった扱いをしています。作者によって、とらえ方がどんなふうに違うかも、興味深いです。同じ「ロミオとジュリエット」の題材でも、チャイコフスキーとプロコフィエフの音楽はだいぶ違いますからね(^o^)/
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