土曜の夜、妻と二人で山形県民会館のアフィニス音楽祭2010(*1,*2)合同演奏会へ。東北芸工大の学生さんが作った県民会館前のオブジェを見たり、御殿堰の岩淵茶舗で抹茶ソフト白玉つきを食べたりしながら開演を待ちました。客席中央付近でしたので、三列ほど前方に、エメラルド色の洋服の吉村美栄子・山形県知事が来場されたのに気づきました。喜ばしいことですね(^o^)/
例によって、山響音楽監督飯森範親さんのプレコンサートトークから。
1曲め、モーツァルトのセレナード第10番K.361「グラン・パルティータ」(抜粋)について。指揮者なしで演奏されますが、楽器編成でフルートがありません。これは、当時モーツァルトが恋していた女性フルーティストにフラれたために、フルートを抜いたのだとか、諸説あるそうです。なんだかめめしいぞ、ヴォルフガング君(^o^)/
2曲め、R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン~23の独奏弦楽器のための習作」です。1864年生まれ、1949年に没した長命のシュトラウスが80歳で作曲した問題作です。身内にユダヤ人と結婚した人がいて、その人をかばうためにナチスに協力し戦後に裁判を受けるなど苦労しました。このメタモルフォーゼンは人間の変容ではなくて目に見える場所やドイツ文化、国家の破滅、過去の栄光と悲惨な現実を描いたもので、最後に「エロイカ」の葬送のテーマがコントラバスで奏されます。
3曲目は「英雄の生涯」。シュトラウスの主だった交響詩は35歳までに書かれており、以後はオペラに没頭、「薔薇の騎士」で大成功をおさめます。諸々の事象を音に描くのが得意だったシュトラウスは、この曲を「英雄」と名づけたかったようですが、最終的に「英雄の生涯」としました。誰かに「英雄とはご自身のことですか」と尋ねられたそうですが、「あなたに答える必要はない」とつっぱねたとか。でも、曲を見ると自分自身であることは確かです。たぶん、山形初演です。
モーツァルトの「グラン・パルティータ」。ステージ上に左からOb(2)、Fg(2)、その後ろにCb、正面にHrn(4)、右にBHrn(2)、Cl(2)と並びます。Ob-2の佐藤麻咲さん、Fg-2の高橋あけみさん、バセットホルンBHrn-2に郷津隆幸さん、Hrn-1~4に八木健史さん、岡本和也さん、関谷智洋さん、大和洋司さんなど、おなじみの山響メンバーが参加し、Ob-1,Cl-1,BHrn-1,Fg-1,Cbに音楽祭の講師やゲストが入っています。両端に座ったオーボエのクリュスさんやクラリネットのレクムさんの体の動きが大きい!たぶん無意識なのでしょうが、全身の動きの中で音楽を作ろうとしているのでしょう。フィナーレも軽やかな遊び心がよく出ていて、楽しそうです。演奏する側は大変なのでしょうが、聴いている方は実に愉悦感を感じました。
R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」は、じっくり聴くのはたぶん初めてでしょう。Vnの四方恭子さんがリーダーとなり、山響からは犬伏亜里さん、ヤンネ舘野さん、ヴィオラの成田寛さん、チェロの渡邊研多郎さん、コントラバスの米山明子さんなどが参加して、Vn(10)-Vla(5)-Vc(5)-Cb(3)という構成で「23の独奏弦楽器のための習作」。いや~、たしかに見た目は弦楽合奏ですが実は合奏ではなく、23本の独奏弦楽器のための作品です。それぞれが独奏者として位置付けられた、たいへんに精緻な、ハーモニーにあらざるハーモニー、いわば廃墟の音楽でしょうか。大いに堪能しましたが、個人的に何度も繰り返して日常的に身近に親しみ愛好する作品とは少し違うような気がします。こういうときに聴いて、良かったなーと思い出すのがよいのでしょう。
写真は休憩時の会場の様子。プログラムの最後は「英雄の生涯」です。
わーお、4管編成というのはこんなに大きかったのか!と今更ながら驚く総勢106人。いやいや、県民会館のステージが小さいんでしょうけど(^o^;)。ステージ左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、右手後方にコントラバス、正面奥に木管、その奥に金管、左手後方にハープとティンパニ、パーカッションが並びます。各パートの要所に今回の講師陣が陣取り、コンサートマスターは高木和弘さん。指揮の飯森さんは、遅めのテンポでじっくりと音楽をスタートします。最初の「英雄」はちょっとテンポが遅すぎるのかなと感じましたが、じきに慣れて、「英雄の敵」の始まりのフルートの独立したかけあいに、フルート二本ではこれはできないよな~と感心。「英雄の伴侶」では、高木さんがけっこう大きく表情をつけ、「オーッホッホッホ!」。のちには恐妻家となったらしい?シュトラウスの奥さんを描いたのかな(^o^;)。途中でTp三人が退出、おや?と思ったら、場外で、バンダというのかな、舞台左の袖奥からファンファーレ風に響きます。「英雄の戦い」は、バスドラムはドンドン、シンバルはジャンジャン、派手~。「英雄の生涯」にはおなじみのメロディが頻出、「英雄の引退と完成」では、全休止が効果的に使われています。16分音符バリバリのところもクリア、高木さんのソロが聴かせます。演奏時間は約50分、良かった~。じっくりと楽しみました。
見た目も迫力、四管編成の音の迫力を痛感するとともに、逆にいつもの二管編成の山響の美質を感じることもできました。たとえば山響の管楽器群は、バランスの取れた音がまとまって飛び出してきます。これは、いつものメンバー、いつものアンサンブルが生み出す成果なのでしょう。今回の音楽祭を契機に、山響本来の優れたアンサンブルにさらに生き生きとした表情が加わるのだろうと、今後の演奏会が楽しみです。そうそう、先の定期演奏会で出会った知人におすすめしたら、この夏から賛助会員に加わってくれたそうで、教えてくれてありがとうと逆にお礼を言われました。ちょいと嬉しい。
さて、月曜日の文翔館の室内楽演奏会のチケットを入手できていません。前売券はどこも売り切れで、あとは当日券だのみ。はたして当日券は出るのか?それが問題です。
(*1):アフィニス音楽祭2010~山形交響楽団ウェブサイトより
(*2):アフィニス夏の音楽祭公式ブログ
(*3):アフィニス音楽祭、壮麗な「英雄の生涯」~山形新聞より
(*4):アフィニス音楽祭で大学生ら連日活躍~山形新聞より
(*5):児童らが一流奏者と共演、山形で「あいうえオーケストラ」~山形新聞より
【追記】
おもしろいブログを見つけました。東北芸工大のアートプロジェクトの公式ブログです。制作に携わった学生さんの生の声、インタビューを受ける飯森さんや山響団員など、たいへん興味深いものです。
(*6):アートプロジェクト「英雄の生涯」~東北芸工大生
例によって、山響音楽監督飯森範親さんのプレコンサートトークから。
1曲め、モーツァルトのセレナード第10番K.361「グラン・パルティータ」(抜粋)について。指揮者なしで演奏されますが、楽器編成でフルートがありません。これは、当時モーツァルトが恋していた女性フルーティストにフラれたために、フルートを抜いたのだとか、諸説あるそうです。なんだかめめしいぞ、ヴォルフガング君(^o^)/
2曲め、R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン~23の独奏弦楽器のための習作」です。1864年生まれ、1949年に没した長命のシュトラウスが80歳で作曲した問題作です。身内にユダヤ人と結婚した人がいて、その人をかばうためにナチスに協力し戦後に裁判を受けるなど苦労しました。このメタモルフォーゼンは人間の変容ではなくて目に見える場所やドイツ文化、国家の破滅、過去の栄光と悲惨な現実を描いたもので、最後に「エロイカ」の葬送のテーマがコントラバスで奏されます。
3曲目は「英雄の生涯」。シュトラウスの主だった交響詩は35歳までに書かれており、以後はオペラに没頭、「薔薇の騎士」で大成功をおさめます。諸々の事象を音に描くのが得意だったシュトラウスは、この曲を「英雄」と名づけたかったようですが、最終的に「英雄の生涯」としました。誰かに「英雄とはご自身のことですか」と尋ねられたそうですが、「あなたに答える必要はない」とつっぱねたとか。でも、曲を見ると自分自身であることは確かです。たぶん、山形初演です。
モーツァルトの「グラン・パルティータ」。ステージ上に左からOb(2)、Fg(2)、その後ろにCb、正面にHrn(4)、右にBHrn(2)、Cl(2)と並びます。Ob-2の佐藤麻咲さん、Fg-2の高橋あけみさん、バセットホルンBHrn-2に郷津隆幸さん、Hrn-1~4に八木健史さん、岡本和也さん、関谷智洋さん、大和洋司さんなど、おなじみの山響メンバーが参加し、Ob-1,Cl-1,BHrn-1,Fg-1,Cbに音楽祭の講師やゲストが入っています。両端に座ったオーボエのクリュスさんやクラリネットのレクムさんの体の動きが大きい!たぶん無意識なのでしょうが、全身の動きの中で音楽を作ろうとしているのでしょう。フィナーレも軽やかな遊び心がよく出ていて、楽しそうです。演奏する側は大変なのでしょうが、聴いている方は実に愉悦感を感じました。
R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」は、じっくり聴くのはたぶん初めてでしょう。Vnの四方恭子さんがリーダーとなり、山響からは犬伏亜里さん、ヤンネ舘野さん、ヴィオラの成田寛さん、チェロの渡邊研多郎さん、コントラバスの米山明子さんなどが参加して、Vn(10)-Vla(5)-Vc(5)-Cb(3)という構成で「23の独奏弦楽器のための習作」。いや~、たしかに見た目は弦楽合奏ですが実は合奏ではなく、23本の独奏弦楽器のための作品です。それぞれが独奏者として位置付けられた、たいへんに精緻な、ハーモニーにあらざるハーモニー、いわば廃墟の音楽でしょうか。大いに堪能しましたが、個人的に何度も繰り返して日常的に身近に親しみ愛好する作品とは少し違うような気がします。こういうときに聴いて、良かったなーと思い出すのがよいのでしょう。
写真は休憩時の会場の様子。プログラムの最後は「英雄の生涯」です。
わーお、4管編成というのはこんなに大きかったのか!と今更ながら驚く総勢106人。いやいや、県民会館のステージが小さいんでしょうけど(^o^;)。ステージ左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、右手後方にコントラバス、正面奥に木管、その奥に金管、左手後方にハープとティンパニ、パーカッションが並びます。各パートの要所に今回の講師陣が陣取り、コンサートマスターは高木和弘さん。指揮の飯森さんは、遅めのテンポでじっくりと音楽をスタートします。最初の「英雄」はちょっとテンポが遅すぎるのかなと感じましたが、じきに慣れて、「英雄の敵」の始まりのフルートの独立したかけあいに、フルート二本ではこれはできないよな~と感心。「英雄の伴侶」では、高木さんがけっこう大きく表情をつけ、「オーッホッホッホ!」。のちには恐妻家となったらしい?シュトラウスの奥さんを描いたのかな(^o^;)。途中でTp三人が退出、おや?と思ったら、場外で、バンダというのかな、舞台左の袖奥からファンファーレ風に響きます。「英雄の戦い」は、バスドラムはドンドン、シンバルはジャンジャン、派手~。「英雄の生涯」にはおなじみのメロディが頻出、「英雄の引退と完成」では、全休止が効果的に使われています。16分音符バリバリのところもクリア、高木さんのソロが聴かせます。演奏時間は約50分、良かった~。じっくりと楽しみました。
見た目も迫力、四管編成の音の迫力を痛感するとともに、逆にいつもの二管編成の山響の美質を感じることもできました。たとえば山響の管楽器群は、バランスの取れた音がまとまって飛び出してきます。これは、いつものメンバー、いつものアンサンブルが生み出す成果なのでしょう。今回の音楽祭を契機に、山響本来の優れたアンサンブルにさらに生き生きとした表情が加わるのだろうと、今後の演奏会が楽しみです。そうそう、先の定期演奏会で出会った知人におすすめしたら、この夏から賛助会員に加わってくれたそうで、教えてくれてありがとうと逆にお礼を言われました。ちょいと嬉しい。
さて、月曜日の文翔館の室内楽演奏会のチケットを入手できていません。前売券はどこも売り切れで、あとは当日券だのみ。はたして当日券は出るのか?それが問題です。
(*1):アフィニス音楽祭2010~山形交響楽団ウェブサイトより
(*2):アフィニス夏の音楽祭公式ブログ
(*3):アフィニス音楽祭、壮麗な「英雄の生涯」~山形新聞より
(*4):アフィニス音楽祭で大学生ら連日活躍~山形新聞より
(*5):児童らが一流奏者と共演、山形で「あいうえオーケストラ」~山形新聞より
【追記】
おもしろいブログを見つけました。東北芸工大のアートプロジェクトの公式ブログです。制作に携わった学生さんの生の声、インタビューを受ける飯森さんや山響団員など、たいへん興味深いものです。
(*6):アートプロジェクト「英雄の生涯」~東北芸工大生
抜粋ながら演奏会での「グラン・パルティータ」は珍しいですね。以前FM放送で全曲の演奏(ヴェーグ/ウィーン管楽ゾリステン)を聴きましたが、各楽章間に相当長いインターバルをとっていました。長いところでは3分近く、管楽器奏者には負担がかかる大変な曲なんでしょうね。
それにしてもモーツァルトとR・シュトラウス!聴き応え十分の演奏会であったことでしょうね(^^
シュトラウスは大管弦楽が必要になり、山響のようなオケでは、おいそれとプログラムに組むわけにはいかない事情があります。でも、今回のように音楽祭の一環としてですと、良い経験になりますね。チケットを持っていれば練習も参観できるそうで、時間があればそれも行ってみたいものです。次回は広島で、その次は山形でというように、交互に長く開催できればいいなあと念願しております。