電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』を読む

2008年02月15日 06時26分53秒 | 読書
講談社文庫で、宮部みゆきの7編の連作短編集、『ステップファザー・ステップ』を読みました。少し前の1993年に刊行されたものの単行本化だそうです。なるほど、ワープロの誤変換をつかったネタなど、時代性を感じる部分もありますが、ほのぼのとしたユーモアを持つ面白さがあります。

第1話「ステップファザー・ステップ」。主な登場人物は、双子の中学1年生の男の子と、推理力に富む職業的窃盗犯(35歳)と、その雇い主である元弁護士の四人。双子の両親は、そろって(もちろん別々に)駆け落ち中で、子どもたちは偶然どじを踏んだ泥棒を、臨時の継父にする、という想定です。
第2話「トラブル・トラベラー」。暮志木町と倉敷市と、限りなく本物に近い偽物と、まぎれもない本物。画聖と画家。コピー時代の風刺でしょうか。
第3話「ワンナイト・スタンド」。職業的窃盗犯が中学校の授業を参観する話。二重の替え玉は私も予想できました。ただし、なぜ身代わりを立てなきゃいけなかったのか、その事情は想像の範囲外でした。それと、文庫148ページ、

「親父って、牛乳みたいな元弁護士だな」
「どういう意味だね?」
「腐っても役に立つ」

とありますが、役に立つのは発酵、役に立たないのが腐敗と、昔から決まっておりまする(^o^;)>poripori
第4話「ヘルター・スケルター」。湖に沈む白骨死体と前後が凹んだ乗用車、ちょっとしたサスペンス・ミステリー風の小編です。
第5話「ロンリー・ハート」。対向車が弾き飛ばした小石が、昔、乗っていた車のフロントガラスにバシッと当たって、見事にヒビが入ったことがありました。臨時の父親、本物が戻ってきたらお役御免なんて、たしかに切ないでしょう。
第6話「ハンド・クーラー」。山形新聞がネタに使われた小編。山形新聞ですよ!渡辺えりじゃなく宮部みゆきと山形新聞。ちょいとありえない組み合わせですが、やっぱり被害者はぜんぜん気づいていないおかしさ。そりゃそうだ、山形市旅篭町の山形新聞社の郵便番号は、今は990-8550と、とっくに七桁に変わってしまってますよ!
第7話「ミルキー・ウェイ」。双子の誘拐事件発生。臨時の父と祖父が激怒。アホな誘拐犯です。

双子の会話の分割話法は、古典的な行数稼ぎの手法でしょう。1993年当時、たぶんものすごく多忙だったと思われます。売れっ子作家もつらいですね。

コメント (6)    この記事についてブログを書く
« 私の好きな物語~海外編~ | トップ | R.シューマン「おとぎの絵本... »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今ごろすみません (stonez)
2008-03-15 02:21:58
ここしばらく、ご無沙汰しております(^^ゞ
しかも今ごろのコメント失礼します。
私はこの1冊で宮部みゆきさんに興味を持ちましたが、気軽に読めてストーリー展開も奇抜で面白いところがいいですね。最近は生活に追われて(言い訳です・汗)活字から離れていますが、また読みたいなと思いました。
返信する
stonez さん、 (narkejp)
2008-03-15 09:53:58
コメントありがとうございます。春ですね~。そちらはもう花の季節ですか。当地はもう少し後になりそうです。
宮部みゆきさんの本は、少しずつですが読んでいます。未読の作品がまだまだあるようなので、楽しみです(^_^)/
返信する
双子はザたっち (福田浩司賞味大臣)
2008-04-06 22:54:59
図書館で借りて読みました。いかにも宮部さんらしい女の子感覚で楽しい。子供っぽすぎるかなとも少し思いましたが。双子はお笑いのザたっちみたいでしたね
返信する
福田浩司賞味大臣(?)殿 (narkejp)
2008-04-10 20:07:43
コメントありがとうございます。
宮部みゆきさんの本のうち今まで読んだものは時代物が多く、現代を題材にしたものはそれほど読んでおりませんでしたが、軽いタッチで楽しめました。
コメント遅くなりましたが、ようやく単身赴任先に電話が開通、ADSLでインターネット接続できるようになったばかりです。今後ともどうぞよろしく。
返信する
Unknown (藍色)
2009-05-16 03:48:17
読んでいてほのぼのとしていて、面白かったです。

トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
返信する
藍色 さん、 (narkejp)
2009-05-16 13:10:20
コメント、トラックバックをありがとうございます。当方からもトラックバックを送りました。ほんとに、ほのぼのした物語でしたね。
返信する

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事