電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第256回定期演奏会でモーツァルト、タミール、メンデルスゾーン、ベートーヴェンを聴く

2016年10月17日 06時03分21秒 | -オーケストラ
10月中旬の日曜日、山形交響楽団第256回定期演奏会の2日目の公演を聴きました。今回は、「新たなる地平を目指して~世界を席巻する名手・バボラークが誘う世界」と題し、ラデク・バボラークのホルン独奏と指揮で、

  1. モーツァルト/ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447
  2. ナアマ・タミール/Spring Illusions(日本初演)
  3. メンデルスゾーン/無言歌集(パウル・アンゲラー編曲)
  4. ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
     10月16日(日)、15:00開演、山形テルサ・ホール

というプログラムです。

開演前のロビーコンサートは、山形弦楽四重奏団が、お得意の日本民謡から「さんさ時雨」「おてもやん」「会津磐梯山」の三曲を披露しました。親しみ深い音楽で、たいへん楽しみました。プログラムにも編曲者は明記されていないし、幸松肇さんが編曲したものでもなさそうで、もしかしたらメンバー自身による編曲かもしれません。

西濱事務局長が進行するプレコンサートトークは、ラデク・パボラークさんのドイツ語の通訳をソロ・コンサートマスターの高橋和貴さんがつとめます。パボラークさんと山形との関わりや、日本初演となる「スプリング・イリュージョン」の作曲家ナアマ・タミールさんとの接点など、興味深いお話でした。

一曲目は、モーツァルトの「ホルン協奏曲第3番」です。ステージには、向かって左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、ヴィオラ(5)、チェロ(5)、右手奥にコントラバス(3)、中央奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)が並びます。指揮台のないステージ中央にソリストが立ち、合図をしながら演奏するという形です。実に安定した音、伸びやかな音色、正確な音程とフレージング、あっけにとられるほどに、なんとも見事なホルンでした。素晴らしい!

続いて指揮台が登場し、楽器編成も変わります。弦楽五部の配置は変わらず、中央奥にFl(1)とOb(2)、その奥にFg(2)、左奥にTimp.とPerc.で右奥にHrn(2)が並びます。1984年にイスラエルに生まれた女性作曲家・ナアマ・タミールさんの2014年の作品、"Spring Illusions"です。
曲は、フルートによるかなり長めのソロで始まります。曲調としては、悲哀の中に美しさを感じさせるもので、一時の前衛的な不協和音を連ねるタイプの音楽ではありません。山響の弦楽アンサンブルの澄んだ音によく合っていると感じられ、かなり気に入りました。それと、ティンパニがダイナミックに活躍しますし、グロッケンシュピールやスネア・ドラム、スレイ・ベル、カスタネットにトライアングルといったパーカッションが効果的で、耳を楽しませる面もあります。いい曲です。

休憩後の第三曲目は、メンデルスゾーン「歌の翼に」。弦楽合奏と独奏ホルンによる演奏です。音楽に耳をすませながら、バボラークさんの立ち姿の見事さに感心しておりました。演奏に合わせていくら動いても、頭~臍~両足の三角形の重心が一直線で、立ち姿の軸がぶれません。妙な観察ですが、演奏の間ずっとあの安定感はすごいです。

最後の曲は、ベートーヴェンの交響曲第4番。楽器編成は、Fl(1), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(2), Tp(2), Timp.,弦楽5部となります。ホルンとトランペットはナチュラル・タイプ、そしてバロック・ティンパニが使われます。
第1楽章:ゆっくりとした序奏部の後に、やわらかく優しい響きですが、でも切れの良い演奏が続きます。第2楽章:緩徐楽章を堪能していたら、途中で地震があったらしく、無粋な緊急地震速報だかエリアメールだかが入ってしまいました。幸い、演奏は途切れずに続きます。大した震度ではなかったので良かったけれど、演奏家の皆さんは、たぶん停電しない限り続けるんじゃないだろうかと思ってしまいました。第3楽章:中低音が充実した、ベートーヴェンらしい中身の詰まった音です。第4楽章:無窮動的な速いテンポで始まります。ファゴットのポコポコいう音がおもしろく、見事な弦楽アンサンブルの中でナチュラルタイプの管楽器やバロック・ティンパニがとけこみ、いい味を出していました。指揮のバボラークさん、とても自然で、立派なベートーヴェンでした。

終演後のファン交流会では、ホルンの独奏者としての活動と、今回のような指揮者としての活動との違いを聞かれて、近年はソリストとしての活動よりも、指揮者としての活動も含む依頼の方が好ましく感じる、と話していました。たぶん、独奏者として演奏会の一部に登場するよりも、演奏会の全部を仕切るほうがやりがいを感じるのではないかと思います。器楽奏者であるとともに、音楽家だということなのでしょう。なんとなく、分かるような気がします。よほどの才能がないと難しいことだろうとも思いますが(^o^;)>

ファン交流会で感じたこと:今回は、膝小僧の抜けたジーンズをはいた子とか、やけに中高生が多いなあ。たぶん、吹奏楽部でホルンを吹いている子たちだね!
コメント (2)