普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

経済グローバル化の理想と現実

2007-12-10 10:09:59 | 国際社会

 いつもブログを読まして頂いている、Empire of the Sun 太陽の帝国 の「アメリカを責めるばかりでは・・・」で政治学者の中北浩爾立教大学教授の「公正なグローバル化で脱却を」の記事に関連して非常に先見性のあるご意見を書かれていた。

 その詳細は上記のブログを見て頂きたいが、私の書きたいのはその以後の問題だ。
 管理人の柳生すばるさんは、結論として、(グローバル化に伴う)「底辺への競争」を打破するために
次のような提案をされている。
・ WTOなどの貿易の枠組みに「社会条項」を導入
・自国と他国の賃金と労働条件を同時並行的に引き上げて行く
・具体的には中国などの発展途上の国に「ちゃんとした労働組合」を作らせ、世界中に最低賃金を保障させる
・日本政府、日本の労働組合・市民団体もあらゆる機会を捉えて世界の各国に (公正な競争を求める)社会条項(最低限の労働条件の保障)の徹底を要求する
・FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)の締結の場でも社会条項を盛り込む
・いくら日本人が勤勉でも発展途上国の1/10・1/20の低賃金には太刀打ちできない
・(世界的に)公正な労働条件で公正なグローバル経済が日本国勤労者の所得が上がる早道だ。

 その内容は正に正論かつ先を見据えた卓見だと思うので、それ以上つけ加えたることは何もない。。
 私が書きたいのはそれから先の実際問題だ。

 私は経済などは全くの素人だが、今のような自由主義経済によれば、開発途上国では発展の当初は低賃金で従業員を雇うことができるが、発展に伴って従業員が不足して来だす→やむを得ず給与を上げてその不足を補うの繰り返しで、他の先進国と給与の差が少なくなってくるのが実際の動きだと思う。

 これは私が何度も例を引く様に、日本企業が一昔韓国の台頭に苦戦を強いられていたが、現在は良い意味での均衡状態になっているのがその実例だ。
 日本としては幸い韓国が国土も狭く人口も少ないために、このバランスの状態が早くきたのだ。

 この点今当面の問題になっている、中国の台頭は同国が韓国と比べものにならない、膨大な人口を持ち、その給与も柳生すばるさんご指摘のように格段の差がある。
 これを自然に任せてある程度のバランスするのを待っていたのでは、何年経つか判らない。
 それで管理人さんが言われるように、中国へ外部から圧力を掛けて、その進行を早めるしかない。

 そしてその障害が管理人さんご指摘の中国が共産党の独裁政権だ。

 今の同国の政府は、経済発展一本槍で、同国の発展のためには、今回のインドネシヤの環境会議でも、その排煙で日本に迷惑を掛け散らしているのに温暖化防止対策についは他の先進国の批判ばかりだ。

 当面の外国からの圧力に応える人民元切り上げさえ殆ど進んでいない。

 その政府が、他の先進国へ追いつく唯一且つ最大の切り札である低給与を引き上げたり、日本のように時には政府の意向にさへ反対するような自由な労働組合を本気になって育成するだろうか。

 私は社会主義政党の一党独裁の国のシンガポールでそのやり方を見てきた。
 同国は伝えられる中国のやり方より遥かに合理的で、多数の国民の反感を買うようなやり方では無かったが、やはり独裁政府はその思うままに国を動かして行くのだ。
(余談だが、私は同国に滞在中に社会主義政党ながら市場経済を採用する中国系の人達の実利主義のやり方を見て、同じ中国人の共産主義政権が同じやり方を真似したら大変だと思っていたが、それが現実となった。)

 然しその中国でも、市場主義経済の導入に伴い所得格差の発生→社会格差問題→社会不安を抑える為に、少しづつではあるが、(多分発展を阻害しない程度に)対策を講じ始めているようだ。
 それが独裁政府のやり方だ。

 国民の今の生活レベルをを維持するには輸出しかない日本の場合は、最大の客先である米国の言うことも聞き入れるしかなかった。
 中国は米国、西欧、日本以外にも大きな市場を国内に持っている。
 この点からも、日本と米国の関係のように、外国の圧力がどれだけ中国政府に効果があるかは不明だ。
 然し、管理人さんのご主張のように、それでも日本は他の国と協力して中国に圧力を掛け続けなければならない。

 然しその成果が出るのは、前に書いたような中国国内の改善に向かう自然の動きを併せて考えても、何年先か何十年先か判らない。
 それまで日本がどのように耐えて行くのかが問題になるだろう。

 また心配性の私が書く様に、中国の給与水準が日本の現状近く迄に上がれば、詰まり世界経済が止めどもなく膨張すれば問題ないが、悪化する環境問題など多くの要因でそれにも限度があるとすれば、同国の給与水準が上がり、(現在契約労働者問題のように既にその兆候が現れている)日本の給与水準が下がった所で両国の企業の競争力がでバランスするかも知れない、つまり日本が(少子高齢化とも絡んで)貧乏になるかも知れない、その時の日本人の考え方をどう整理すれば良いか迄、考えておく必要もあるような気がする。

 それを防ぐため、結局は中国の給与水準より高いところで、日本の給与水準を保った所でバランスさせるには、今までの日本企業の生産性と技術力の向上しかないと思うのだが。

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