本日より、やっと当院にてクロザリル(商品名;クロザピン)が処方できるようになりました!本年の3月から登録申請の準備を開始し、半年かかりましたが、様々な審査を経てやっと認可に至りました。長崎県内の精神科クリニックでクロザピンが処方できるのは、さんクリニックについで当院が2軒目となります。なお、九州全体でもクロザピンがクリニックで処方可能なのは、現時点ではさんクリニックと当院のみのようです。
クロザピンは統合失調症治療薬のひとつですが、現時点でどの他の薬剤よりも治療効果が断トツで高く、保険診療上、治療抵抗性統合失調症への適応が認められています。しかし、クロザピンの流通・処方は厳しく管理されている現状があります。特に日本は他国と比べて規制が厳しいようです。なぜかというと、クロザピンは非常に効果が高い反面、「無顆粒球症」という致命的な副作用が時に現れるからです。
無顆粒球症になると白血球(好中球)が著しく減少し、免疫力が低下することで様々な感染症に罹患してしまい、未治療のままだと死に至ります。国内の臨床試験での無顆粒球症の発現率は2.6%でした。ただし、クロザピンが2009年7月に日本で発売されて以来、無顆粒球症による死亡者は国内では今のところ1名も出ておりません。皆様、どうぞご安心ください。
つまり、クロザピンは安全性を万全に確保するために、クロザリル適正使用委員会という第三者委員会(医療専門家を含めた有識者から構成)により「クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)」が運用されているため、安全にクロザピンを使用することが可能となっております。
ただ、当院でクロザピンの処方が可能となったといえども、新規でクロザピンを処方する際には必ず精神科病院での入院が必要とされています。入院中にクロザピンを開始後、効果が認められ、忍容性に問題がなければ、一定の期間を経て外来通院が可能となります。なお、現在、長崎県内でクロザピンの処方が可能な精神科病院は8ヶ所あります。
これまでは、上記のいずれかの病院で当院の患者さんにクロザピンを導入してもらい、改善したとしても当院に戻ってくることができず、その病院に通院するしかありませんでした。これは、患者さんにとっては不便なことですので、患者さんが元の地域に戻ってこられるように、今回のクロザリル通院医療機関の申請に至った次第です。
日本ではあまりにもクロザピンの流通・処方の規制が厳しく、治療抵抗性統合失調症患者の数%しかクロザピンでの治療を受けることができていないという現状があります。この背景のひとつに、地域のクリニックでクロザピンが使えないという現状が挙げられるかと思います。クロザピンは適正な使用により安全に使用することが可能な薬剤ですので、より多くの難治性の統合失調症患者さんに導入され、ひとりでも多くの患者さんがクロザピンの恩恵を受けられる一助になれればと思っています。