今年に入り、大変残念なことに著明人の自殺が相次いでいます。それに伴い懸念されるのが、自殺の連鎖や自殺者の増加です。これまでに報告されている多くの研究結果から、「有名人(celebrity)の自殺報道後1~2ヶ月間で自殺が13%増える」ことが分かっています。また、報道された自殺方法と同じ方法での自殺の増加はより大きく、30%上昇します。
実は随分前から自殺の連鎖については言われており、特にマスメディアの自殺報道に起因することが指摘されてきました。そのため1980年代後半にオーストリアでは自殺報道に関するガイドラインが策定され、 新聞社がこれに従うと自殺数が急減し、その後、他のEU各国も追随しています。
その後、2000年にはWHOが自殺を予防する自殺事例報道のあり方についてガイドラインを公表し、世界各国に改善を促していますが、日本ではほとんど守られていないのが現状です。
実は厚生労働省のHPにもそのガイドラインが掲載されています。「すぐわかる手引(クイック・レファレンス・ガイド)」には、〈やるべきこと〉と〈やってはいけないこと〉が具体的に示されています。
〈やってはいけないこと〉の中には、
- 自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと
- 自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
- 自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
- センセーショナルな見出しを使わないこと... etc.
と示されていますが、実情はどうでしょうか。明らかにこれらに反する報道が多く、国はマスメディアに対して、著名人の自殺後の報道についての規制を速やかに強化することが強く求められます。
本日も、大変著明な女優の自殺が報じられました。とても悲しく、胸が痛みます。ただ、特にうつ病をはじめとした精神疾患を患っている方々は、あまりネットやTV、雑誌、新聞等の報道に触れないようにしてください。
(院長 森)