心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

マスメディアに求められる自殺報道の在り方

2020年09月27日 | ブログ
今年に入り、大変残念なことに著明人の自殺が相次いでいます。それに伴い懸念されるのが、自殺の連鎖や自殺者の増加です。これまでに報告されている多くの研究結果から、「有名人(celebrity)の自殺報道後1~2ヶ月間で自殺が13%増える」ことが分かっています。また、報道された自殺方法と同じ方法での自殺の増加はより大きく、30%上昇します。

実は随分前から自殺の連鎖については言われており、特にマスメディアの自殺報道に起因することが指摘されてきました。そのため1980年代後半にオーストリアでは自殺報道に関するガイドラインが策定され、 新聞社がこれに従うと自殺数が急減し、その後、他のEU各国も追随しています。

その後、2000年にはWHOが自殺を予防する自殺事例報道のあり方についてガイドラインを公表し、世界各国に改善を促していますが、日本ではほとんど守られていないのが現状です。

実は厚生労働省のHPにもそのガイドラインが掲載されています。「すぐわかる手引(クイック・レファレンス・ガイド)」には、〈やるべきこと〉と〈やってはいけないこと〉が具体的に示されています。

〈やってはいけないこと〉の中には、
  • 自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと
  • 自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
  • 自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
  • センセーショナルな見出しを使わないこと... etc.
と示されていますが、実情はどうでしょうか。明らかにこれらに反する報道が多く、国はマスメディアに対して、著名人の自殺後の報道についての規制を速やかに強化することが強く求められます。

本日も、大変著明な女優の自殺が報じられました。とても悲しく、胸が痛みます。ただ、特にうつ病をはじめとした精神疾患を患っている方々は、あまりネットやTV、雑誌、新聞等の報道に触れないようにしてください。

(院長 森)

テトラミドの出荷再開のお知らせ

2020年09月15日 | 抗うつ薬
本年の2月17日にテトラミド10mg錠が製薬企業のMSDにより自主回収され、その後さらには同薬剤の30mgも出荷が制限されておりました。そのため、処方薬の変更を余儀なくされた患者さんが多数いらっしゃり、多大なご迷惑をお掛けしている状態が続いておりました。

この度、9月18日よりテトラミド10mgの出荷の再開および30mgの出荷制限が解除となるお知らせをいただきました。つきましては、今後は再びテトラミドを通常通りに処方できるようになります。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

(院長 森)

COVID-19罹患後のPTSDや不安、抑うつの治療を準備する必要性について

2020年09月07日 | ブログ
これまでに報告されている多くの研究結果より、2002年に始まった重症急性呼吸器症候群(SARS)流行や2012年からの中東呼吸器症候群(MERS)流行時に、これらの感染症に罹患した患者では、回復後にうつ症状や不安、疲労、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が多く認められたことが分かっています。

COVID-19罹患患者に関するデータはまだ不十分であるため何とも言えませんが、イギリスの研究者らは、「COVID-19罹患後にも同様の精神症状が出現する可能性があるため、精神科医療機関はこれらを治療する準備を整えておく必要性がある」と述べています。

当院では、新型コロナウイルス(COVID-19)流行に伴う情緒不安定や抑うつ、不安、不眠などの相談、治療にも力を入れておりますので、どうぞお気軽にご来院ください(初診のみ電話での予約制となっております)。

一日も早くワクチンが開発され、COVID-19が終息することを心より願っています。

(院長 森)