心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

高齢者の睡眠障害

2013年01月30日 | 睡眠障害

睡眠障害は加齢に伴って明らかに増加し、高齢者の少なくとも20%が不眠に悩んでいるといわれています。歳をとるにつれて体力や記憶力が低下するなど心身の機能が衰退するとともに、寝つきが悪くなったり、途中で何度も目が覚めたり、朝方に目覚めてしまって眠れなくなったりします。それに加えて、高齢者では昼間にぼんやりしていたり、何度も昼寝をしたりするなど、睡眠障害は単に睡眠の問題だけではなく、起きている時の障害を伴うことが多いのが特徴です。

また、高齢になると加齢に伴って心身に変化が起こり、そのために睡眠障害をおこしやすい状態となっています。「体が弱るため」に起こってくる睡眠障害のなかで具体的な病気として、脳梗塞や脳出血、喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、高血圧、疼痛、痒みに伴うものなどがあります。これらは高齢者にとってはありふれた病気ですので、睡眠障害が非常に高率におこることになります。また、体が弱ったことによって服用するお薬によって不眠が起こる場合もあります。

「心が弱るため」に引き起こされる睡眠障害については、認知症やうつ、不安に伴う不眠があり、ことに高齢者では、家族や仕事を失うなどの喪失体験が多くなるため、悲嘆や哀悼に伴う不眠もみられます。また特殊な病気として、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群に伴う不眠もあります。


過眠症

2013年01月21日 | 睡眠障害

精神科には、不眠の逆で、過眠を訴え受診される方もいます

過眠症とは、日中(本来起きて活動を行う時間帯)に過剰な眠気が出現し耐えることが困難、もしくは眠気が突然に襲ってきて無意識のうちに眠りに落ちている状態のことをいいます。過剰な眠気によって集中力や作業能率が低下し、学業や仕事に支障をきたすことがあり、交通事故や作業ミスにつながる場合もあります。また、慢性的な日中の眠気から疲労感や頭痛、意欲の低下、抑うつ気分などに苦しむこともあるため、早期の対応が求められます。

過眠症は、様々な原因で生じます。原因となる疾患としては、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、パーキンソン病などの身体疾患、冬季うつ病や双極性うつ病などの気分障害、過活動膀胱、前立腺肥大症、概日リズム睡眠障害、ナルコレプシー、特発性過眠症などがあります。

しかしながら、世に遷延する眠気の原因で最も多いのは、睡眠時間の不足によるものです。日本人の睡眠時間はわずか40年で約50分も短縮しています。仕事(交代勤務)や勉強、遊び、家でただなんとなく(テレビ、インターネット、携帯電話、メール、ゲーム)など理由は様々ですが、結果的に現代人は睡眠を犠牲にする場面が増え、睡眠不足が生じやすくなっています。睡眠不足者の睡眠覚醒パターンには一つの特徴があり、時間の制約がない週末や休日には平日よりも長く(多くは2時間以上)眠ります。これは平日に蓄積した睡眠負債を、週末や休日の長時間睡眠で補うためです。しかし、睡眠負債が膨大になるにつれ、次第に「寝だめ」が眠気の解消に無効となります。

このような睡眠不足が続いた場合(3ヶ月以上)、“睡眠不足症候群”と診断されます。治療は、十分な睡眠時間を確保させるのと同時に、睡眠衛生指導を行います。寝る前のパソコンやインターネット、携帯電話の使用、カフェインやニコチンなど刺激物の摂取等、誤った睡眠習慣を修正する必要があります。


精神疾患の診断基準;DSM-5

2013年01月08日 | ブログ

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

現在、世界で用いられている精神疾患の診断基準は、大きく分けて二つあります。ひとつはWHOが出しているICD-10で、もうひとつは米国精神医学会が出しているDSM-Ⅳです。DSM-Ⅳは1994年に作成されましたが、その後、新しい研究結果や知見が得られ、改定作業が行われてきました。そして本年5月、約20年ぶりに新訂版であるDSM-5が発表されることがほぼ確実となりました。

まだ詳細は分かりませんが、概要をみたところ、結構、改定されているようです。診断基準が変わったからといって、その翌日から治療方法が激変するわけではありませんが、現在の科学に基づいた、より正確な診断に役立てることができるのではないかと期待しています。