睡眠障害は加齢に伴って明らかに増加し、高齢者の少なくとも20%が不眠に悩んでいるといわれています。歳をとるにつれて体力や記憶力が低下するなど心身の機能が衰退するとともに、寝つきが悪くなったり、途中で何度も目が覚めたり、朝方に目覚めてしまって眠れなくなったりします。それに加えて、高齢者では昼間にぼんやりしていたり、何度も昼寝をしたりするなど、睡眠障害は単に睡眠の問題だけではなく、起きている時の障害を伴うことが多いのが特徴です。
また、高齢になると加齢に伴って心身に変化が起こり、そのために睡眠障害をおこしやすい状態となっています。「体が弱るため」に起こってくる睡眠障害のなかで具体的な病気として、脳梗塞や脳出血、喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、高血圧、疼痛、痒みに伴うものなどがあります。これらは高齢者にとってはありふれた病気ですので、睡眠障害が非常に高率におこることになります。また、体が弱ったことによって服用するお薬によって不眠が起こる場合もあります。
「心が弱るため」に引き起こされる睡眠障害については、認知症やうつ、不安に伴う不眠があり、ことに高齢者では、家族や仕事を失うなどの喪失体験が多くなるため、悲嘆や哀悼に伴う不眠もみられます。また特殊な病気として、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群に伴う不眠もあります。