宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

宇宙の3次元地図を作ってみると、一般相対性理論の正しさが検証できた

2016年05月22日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡を用いた銀河サーベイ“FastSound”により、
宇宙の3次元地図が作られました。

作られた3次元地図は、
130億光年もの遠距離にある約3000個の銀河までの距離に基づくもの。

さらに、地図の中で銀河の運動を詳しく調べてみると、
大規模構造が成長していく速度を初めて測定することが出来たんですねー

そして、この測定結果から確かめられたのが、
遠方宇宙でも構造形成速度が一般相対性理論の予測と一致することでした。


一般相対性理論の検証

宇宙はビッグバンで誕生して以来、膨張を続けています。

単純な理論予測では、その膨張速度は減速していくはずなんですが、
反対に加速膨張していることが観測から知られているんですねー

その原因としては、
  ダークエネルギーが宇宙を満たしている
  宇宙論が基礎に仮定している一般相対性理論が破綻している
という2つの可能性が考えられますが、いまだ未解明のままになっています。

宇宙の加速膨張は、100年前にアインシュタインが発表した一般相対性理論に、
“宇宙定数”というものを追加することで理論的に説明することができます。

ただ一般相対性理論は、
太陽系以下のスケールでは高い精度実験で検証されているのですが、
100億光年を超えるような宇宙論的なスケールでも成り立つかどうかは分かっていません。

そこで理論の検証方法として登場したのが、
遠くの銀河を多数観測して、その距離を測定し、宇宙における銀河の3次元分布、
つまり宇宙の大規模構造を調べることでした。

網の目のような宇宙の大規模構造が、
広がるにつれて、個々の銀河がどのくらいの速度で運動しているのか?

これを調べることで、大規模構造の成長速度を測り、
その速度が一般相対性理論の予想と合っているかを検証することになります。

今回研究グループが試みたのは、
すばる望遠鏡のファイバー多天体分光器を用いて銀河サーベイ“FastSounnd”を実施し、
遠方宇宙での重力理論の検証なんですねー


銀河サーベイ“FastSounnd”

観測する天体からの光が、私たちに届くまでの時間に、
これまでの宇宙膨張を考慮して算出される距離を共動距離といいます。

この共動距離が約124億光年から147億光年、
赤方偏移の値が1.2から1.5の宇宙における銀河までの距離を、
測定するサーベイが“FastSound”です。

2012年から2014年にかけて行われた観測をもとにして、
2015年には約3000個の銀河からなる宇宙の3次元大規模構造地図が完成しています。
“FastSound”サーベイによって明らかになった3次元銀河地図。

研究チームは地図中の個々の銀河の運動を調べ、大規模構造の成長速度を測定。

測定の統計的有意度99.997%で、
100億光年を超える遠方宇宙において、これほど高いで成長速度を測定できたのは、
世界で初めてなんですねー

そして、測定値を一般相対性理論の予測値と比べてみると、
測定誤差の範囲で一致していることを確認。

この距離でも一般相対性理論の正しさが検証されたことになります。

ただ、宇宙定数の物理的な起源は依然として謎で、
今回の測定誤差の範囲内で、
わずかに重力が一般相対性理論からずれている可能性も否定はできず…

まぁー 宇宙論研究を進めていく上では、
今回の結果は重要なステップにはなるそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ さらに詳細、広範囲の地図作成へ “スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”


最新の画像もっと見る

コメントを投稿