夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『伏 鉄砲娘の捕物帳』

2012年10月24日 | 映画(は行)
『伏 鉄砲娘の捕物帳』
監督:宮地昌幸
声の出演:寿美菜子,宮野真守,宮本佳那子,小西克幸,坂本真綾,神谷浩史,
     野島裕史,水樹奈々,桂歌丸、竹中直人,劇団ひとり他

日曜日にひょっこり1本だけ観る時間ができました。
立ち寄る劇場をテアトル梅田に限定して、
間に合いそうな作品を出かける前にネットにて物色。
大のお気に入りの石ラーにまつわる『ペンギン夫婦の作りかた』が気になるけれど、
なんとなく気分は桜庭一樹のアニメ作品。

桜庭一樹の著書で初めて読んだのは『赤朽葉家の伝説』。
名前からこの桜庭一樹という人も男性だと思い込んでいました。
ある村で製鉄業を営む名家に生まれた女三代について、
三部に分けて描いた壮大な小説で、これが面白いのなんのって。
男性作家なのに女のことをうまく書くなぁと思っていたら女性作家でした。

その後、これは読んでみなくちゃと手に取った彼女の著書いろいろ。
直木賞受賞作の『私の男』は暗い生々しさに引き込まれました。
『少女には向かない職業』と『少女七竈と七人の可愛そうな大人』も好きでした。
でもライトノベルっぽいものはどうもイマイチ、苦手です。
時代劇も映画同様食わず嫌いというのか読み進められる自信がなくて敬遠しているため、
本作の原作『伏 贋作・里見八犬伝』は未読です。

山に囲まれた村で育った浜路(はまじ)は、まだ少女でありながら腕の立つ猟師。
祖父を亡くし、この家にたった一人になった彼女のもとへ、
近くの寺の住職が持ってきた浜路の兄・道節(どうせつ)からの手紙。

字が読めない浜路に代わって住職が読んで聞かせるには、
道節が江戸で一緒に暮らそうと言っている。
浜路は村を離れる決意をすると、さっそく江戸へ。

江戸のにぎわいは浜路の想像をはるかに超えるもの。
右も左もわからずおたおたしていると、犬の首が並べられているのを発見。
こんなものは山で見慣れているが、子犬の首まで取る理由がわからない。
聞けばこれは人と犬との合いの子、“伏(ふせ)”と呼ばれる生き物で、人の心臓を喰うらしい。
人に化けて江戸に潜む“伏”を殺せば、徳川家定公から報奨金が貰えると言う。
道節と浜路はただちに“伏狩り”を始めることに。

そんな折り、犬の面を付けた美しい青年・信乃(しの)と浜路は出会う。
ふたりは少しずつ心をかよわせていくのだが……。

『蛍火の杜へ』(2011)を思い出させますが、
こちらは話の流れがちょっと大ざっぱで、理解しづらい場面があります。
多少わからないところがあってもええかと思えるのは、作画の美しさ。
江戸のにぎわい、吉原の艶っぽさ、はらはら舞う桜、舟が行き交う川、
きわめつけは朝日に映し出される川面。

人物も魅力的で愛嬌のある人ばかり。
浜路と親しくなる冥途ちゃんはなんと滝沢馬琴の孫という設定で、
この冥途ちゃんの語りで始まり、終わります。

滝沢馬琴が『南総里見八犬伝』を書いたのは、
悪者に見られている“伏”を救いたかったのだという台詞があり、
それを心に留めつつ浜路と信乃を見ていたら涙が。

映像とともに、音楽にもやられました。
エンディング曲のCHARAの『蝶々結び』以上に心を揺さぶられたのが
挿入歌の浜田真理子の『のこされし者のうた』。
「ゆかないで わたしをおいて ゆかないで
 悲しくてこころが はりさけそうだ
 夜空の星も 朝の霧も みんなみんなあげるから
 わたしをおいてゆかないで」。
ちょっぴりおおたか静流を感じる曲調で、強く印象に残りました。

『赤朽葉家の伝説』もこの監督がアニメ映画化してくれないかなぁ。

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