「諫干、長期開門へ」4月28日、長崎新聞一面トップの見出しでした。
嬉しくなって、すぐに有明海漁民のしのさんにメールを入れました。
しのさんは、開門を求める訴訟の原告の一人です。どんなに喜んでいらっしゃるだろう…
と思っていましたが、それほど楽天的ではありませんでした。 しのさん曰く、
政権交代してやっとまともな議論をしてくれるようになったなという感じですが、
まだまだ現場の実態が理解できていないようで、
今の感じでは約1年後というような見通しです。
もう漁民の多くは耐えられないといったような状況であり、ましてやまだ門は開いておらず
漁場環境が改善するまで更に時間が掛かってしまうと今後も犠牲者が出ないとは限りません。
一人でも多く勇気を持って自由に本音で語り合えるようにがんばっていきたいと思います。
また、しのさんたちの訴訟を支援する会のTさんやGさんの感想も同様でした。
確かに大きな一歩であることは間違いありません。
しかし、予想される障害や妨害・反対の動きは山ほどあります。
まず、民主党・政府と農水省官僚組織が「本気か?」です。
官僚が地元開門反対勢力と結託して巻き返しを図るでしょう。
いままで何度も優秀な農水官僚に巻き返しをされてきましたから予断は許せませんが
大きな一歩だと思います。
大臣の政治決断に期待したいものです。
また、佐賀地裁判決に対する国側の控訴取り下げや和解協議も検討されているようです。
漁業被害と諫干との関係を一切否定している国の主張と矛盾するものですし、
解決に向けて裁判の場で゜和解協議に進むことが最善の方法でしょう。
ところで、テレビニュースを見ていたら、中村知事は、
「2002年の短期開門調査では実際に被害が生じている」
「(堤防閉め切りの)影響は諫早湾内にとどまり有明海に及んでいないとの結果が出ている」
などと語っていましたが、これは昨年私が裁判所で聞いた内容と全く異なっています。
「平成20年(ワ)第258号 小長井・大浦漁業再生等請求事件」 の裁判で、
平成21年9月14日、原告ら訴訟代理人弁護士・後藤富和さんは、
その意見陳述書の中でこう述べられました。
「国は、2002年4月から5月にかけ短期開門調査を実施し、実際に水門を開け調整池に海水を導入しました。この時、農水省がアセスで懸念するような背後地への影響は生じませんでした」
当時、開門の影響を心配する背後地の農業者に対して、
農水省は短期開門への理解を得るためにパンフレットを配布したそうで、
それには次のように書かれていました。
・洪水調整機能は変化しません
・ガタ土が既設樋門の前面に堆積することは、ほとんどありません。
・潮遊池への塩水の浸入を防ぐため、土のうを設置します
・降雨時の塩水逆流を防ぐため、招き戸の故障個所を補修し、適正に管理します
・潮遊池からの農業用水は今までどおり使えます
「この時、農水省は開門に関する事前アセスなど実施することなく、いきなり開門を実行しています。そして、実際に1ヵ月間、海水を調整池に導入しましたが、防災機能や農業用水への影響は生じませんでした。農水省が被害は出ないから安心して下さいと背後地の農業者に約束してきた通りの結果となったのです」
私のように、最近長崎県民になった者は、諫早干拓問題の知識もあまりありません。
昨年、裁判を傍聴していなかったら、知事の言うとおり、開門したら被害が出るんだ…
と思ってしまいます。
それなら開門には慎重になるべき、と感じる一般の人も多いのではないでしょうか?
テレビや新聞のメディアは、知事の発言をそのまま流すだけでなく、
本当にそのような被害があったのか、
あったのならば、どんな被害だったのか、補足説明を入れてほしいものです。
また、堤防閉め切りの影響について知事は、有明海全体には及ぼしていないと言っていますが、
後藤弁護士は、開門によっておこった変化として、
調整池の水質が劇的に改善したことなど5点をあげており、その中には、
④有明海奥部で何年も捕れなかったタイラギが回復し
⑤有明町沖合に多数の稚魚が現れる
など、有明海全体への好影響があったことも述べています。
それは堤防締め切りによって、有明海が悪影響を受けていることを示すものです。
正確で豊富な情報環境なくしては、正しい民意は生まれないでしょう。。