(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0297JapanAbuDhabi.pdf
1.茂木経産相のアブダビ訪問で二つの大きな成果
茂木経済産業相が昨年2月に続き二度目のアブダビ訪問を行い、日本のエネルギー外交に二つの大きな成果を勝ち取った。その一つはジャパン石油開発(JODCO、国際石油開発帝石INPEX子会社)のザクム上部油田の利権契約が2041年まで15年間延長されることになったのである。20日の茂木経産相とムハンマド皇太子との会談で合意された(1/21INPEX記者発表) 。
翌21日には同じくアブダビで日本のコスモ石油とスペイン第二の石油企業CEPSAが原油・天然ガス開発で業務提携することが発表された 。コスモ石油の筆頭株主は世界の石油関連産業に対する投資で知られるアブダビの政府系ファンド(SWF)International Petroleum Investment Company(IPIC)であり、同時にIPICはCEPSA株式を100%保有している。IPICから見ればグループ企業間の連携と言うことになる。因みにコスモ石油はアブダビでムバラス油田の開発生産を行っているアブダビ石油の親会社であり、さらにエルブンドク油田を開発生産しているBunduq社の筆頭株主でもある。
後ほど触れるようにアブダビでは上記の他にも日本企業が利権を保有している海上油田がいくつかあり、また現在は欧米国際石油企業が操業している陸上油田についても日本企業の参入の可能性が取りざたされている。
本稿では先ずアブダビの海上及び陸上油田について利権の保有比率及び各利権の契約更新期限並びに生産量等について述べ、次いでIPICを軸とするアブダビの世界石油戦略を俯瞰することとする。
2.アブダビ油田操業に対する日本企業の参入状況及び利権延長問題
UAEの石油埋蔵量は978億バレルで世界第7位(2012年末、BP資料) 、また同国の2012年の石油生産量は338万B/Dでこれも世界7位であるが(同BP資料) が、そのほとんどをアブダビ首長国が占めている。アブダビには陸上及び海上に多数の油田があり、国営石油会社ADNOCと日本を含む国際石油企業により共同操業が行われている。大型油田についてはいずれもADNOCが60%以上の利権を保有しているが、実際の操業は国際石油企業が担っている。合弁事業及び油田ごとの概要は以下のとおりである。
*出典:JOGMEC発行「石油・天然ガスレビュー」2013.11 Vol.47 No.6 P55-68 「アブダビの石油天然ガス開発をめぐる現況」)
(表:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-53.pdf 参照)
I.海上油田
(1) Abu Dhabi Marine Operating Co.(ADMA-OPCO)(油田名:下部ザクム、ウムシャイフ他)
利権保有率: ADNOC 60%, BP 14.67%, Total 13.33%, INPEX(JODCO) 12%
利権更新期限: 2018年
生産量: 575,000B/D
1972年に合同石油がADMA(現ADMA-OPCO)の45%の株式をBPから取得、後にジャパン石油開発(JODCO)がこれを継承した。JODCOは2004年に国際石油開発(INPEX、現国際石油開発帝石)の100%子会社となり現在に至っている。
現在生産中の油田は下部ザクム(生産量30万B/D)及びウムシャイフ(同27.5万B/D)。このほかウムルル、ナスル、SARBの3油田を開発中であり2016-18年に生産開始が予定されている。なお1978年にJODCOとADNOCがZADCO(下記参照)を設立、ザクム上部構造の開発に乗り出したことにより現在ではそれぞれ下部ザクム油田、上部ザクム油田と呼ばれている。
(続く)
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