石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2009年版解説シリーズ:石油篇(2)

2009-06-16 | その他

*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(5)原油価格が一括掲載されていますのでご覧ください。

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(2):世界の石油生産量

(1) 地域別・国別生産量

 2008年の世界の年間石油生産量は日量8,182万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると中東が2,620万B/Dと最も多く全体の31%を占めている。その他の地域については欧州・ユーラシア1,759万B/D(22%)、北米1,313万B/D(16%)、アフリカ1,029万B/D(13%)、アジア・大洋州793万B/D(10%)、中南米669万B/D(8%)である。(グラフ「地域別石油生産量2008年」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-95bOilProductionbyReg.gif参照)

  各地域の生産量と埋蔵量(前回参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の60%を占めているが生産量ではその半分の31%に過ぎない。その他の地域は埋蔵量では世界シェア11%の欧州・ユーラシアが生産量では22%を占めており、同様にアジア・大洋州も埋蔵量のシェアよりも生産量のシェアが大きい。特に北米は埋蔵量シェアが世界全体の6%にとどまるのに対して、生産量のシェアは16%と10ポイントも上回っている。このことから地域別に見て将来の石油生産を維持又は拡大できるポテンシャルを持っているのは中東、アフリカおよび中南米であることが読み取れる。

  次に国別に見ると、最大の石油生産国はサウジアラビアであり、同国の2008年の生産量は1,085万B/Dであった。第2位はロシア(989万B/D)であり、両国で全世界の4分の1(26%)の石油を生産しているのである。この後には米国(674万B/D)、イラン(433万B/D)、中国(380万B/D)が続いている。6位以下10位までの生産国はカナダ、メキシコ、UAE、クウェイト、ベネズエラの各国である。生産量3位の米国と5位の中国は次回に触れるように世界1位及び2位の石油消費国であるため、国内生産量だけでは不足し大量の石油を輸入している。ベスト・テンのその他の国はいずれも有力な石油輸出国であり、米国と中国は巨大石油生産国の中でも特異な存在であると言える。(表「国別石油生産量ベスト20(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-95%20Oil%20Production(Barrels).htm 参照)。

(2) 石油生産量の推移とOPECシェア

(上図「世界の石油生産(1965~2008年)」参照。拡大図:http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-95aOilProduction1965-.gif

  1965年の世界の石油生産量は3,181万B/Dであったが、その後生産は急激に拡大し、1980年には6,295万B/Dとほぼ倍増した。その後1980年代に石油需要は低迷したが、1990年代に入り再び生産は右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,810万B/D)以降急激に伸び2000年に7,486万B/D、2005年は8,109万B/Dに達している。これは米国での需要が堅調であったことに加え、中国、インドの消費量が急増したことが主たる要因である。その後は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産は停滞し、2008年は8,182万B/Dであった。

  これを地域別の生産量と世界全体に占めるシェアで見ると、1965年は北米が1,030万B/D(シェア32%)でもっとも多く、中東(839万B/D、26%)、欧州ユーラシア(565万B/D、18%)、中南米(433万B/D、14%)、アフリカ(224万B/D、7%)と続き、最も少なかったのはアジア・大洋州の90万B/D(3%)であった。しかしその後北米の生産量が停滞する一方、中東及び欧州・ユーラシア(特にロシア及び中央アジア各国)の生産量が急成長したため、現在(2008年)では冒頭にも述べたとおり、シェアは中東、欧州・ユーラシア、北米の順位となっている。最近ではアフリカの生産が伸びており、同地域のシェアは13%に拡大している。

  OPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1965年は45%であり、第一次及び第二次オイルショックの頃は50%近くに達した。しかし80年代に入るとシェアは急激に低下し85年には30%に落ちた。その後80年代後半から90年代前半にシェアは回復し、95年以降は再びシェアは拡大傾向にあり2000年、2005年は44%、2008年は45%に達した。

  上図で見ると1985年は世界の生産量が落ち込み、OPECのシェアがそれ以上に急落するという特異な様相を見せている。これはオイルショック時の価格暴騰が引き金となって世界の石油市場で需要の減少と価格の下落が同時に発生、これに対してOPECは世界平均を上回る大幅な減産を行ったためである。このときOPECのシェアは3割を切っており、OPEC加盟国が多い中東地域の生産量が急減したのである。

(石油篇第2回完)

(これまでの内容)

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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