石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPECの暗雲:減産に同調しないロシア(上)

2009-09-14 | OPECの動向

()本稿はHP石油と中東」に上下一括掲載されています。

 9月9日、オーストリアのウィーンで第154回OPEC総会が開かれ、昨年12月総会で決議された生産枠を維持することとなった。8月以降WTI原油価格は60ドル台後半、時として70ドルを超える状況にあり、OPEC加盟国はこの価格水準にほぼ満足している。一方需要は米国、中国で景気回復の兆しが見られるものの、その他の欧米、日本、アジア新興工業国などは依然不透明である。

  原油を減産するべきか、はたまた増産するべきか、OPEC加盟国に迷いが見られた結果が今回の現状維持の決定に至ったと考えられる。一方、そのようなOPECを尻目にロシアは大幅な増産を行なっており、今やサウジアラビアを上回る世界一の生産量を誇っている。ロシアはこれまでOPEC総会にオブザーバーとして出席し、少なくともOPECの決定を尊重する姿勢を示していたが、今では自国の増産について「OPECに謝罪する必要は無い」とまで発言している。

1. 第154回OPEC総会で生産枠維持を決定

 9月9日、ウィーンのOPEC本部で第154回OPEC総会が開催された。加盟12カ国の石油相が集まり(但しベネズエラは石油相がチャベス大統領のロシア訪問に随行したため代理出席)、アンゴラのバスコンテロス石油相を議長に現行生産枠の当否について議論が交わされた。因みにOPEC加盟国は昨年末にインドネシアが脱退しており、アルジェリア、アンゴラ、エクアドル、イラン、イラク、クウェイト、リビア、ナイジェリア、カタール、サウジアラビア、UAE及びベネズエラの12カ国で構成されている。

  現在のOPEC生産枠は昨年12月の第151回総会で決定されたものであるが、これは同年9月の加盟12カ国の実生産量のうちイラクの生産量(221万B/D)を除く2,905万B/Dを420万B/D削減(△14.5%)し、11カ国の生産枠を2,485万B/Dとするものであった。この結果、今年1月1日以降の各国生産枠は大きい順に並べると、サウジアラビア(8,065千B/D、以下同じ)、イラン(3,342)、UAE(2,228)、クウェイト(2,227)、ベネズエラ(1,990)、ナイジェリア(1,677)、アンゴラ(1,484)、リビア(1,471)、アルジェリア(1,205)、カタール(732)、エクアドル(425)となっている 。

  2008年は原油価格が史上まれに見る乱高下となり、それにつれてOPECの生産枠も大きく変動した年であった。年初にバレル当り100ドルを突破した原油価格(WTI原油)は、その後も急激に上昇、7月には遂に史上最高の147ドルに達した。しかし9月にリーマン・ショックにより世界の金融市場が100年に一度といわれる危機に見舞われると、原油価格も秋の陽のつるべ落としのごとく急落、年末には遂に30ドル台前半に落ち込んだのである(上図参照)。

  OPECは9月及び11月の総会で急落する価格に対して生産量削減を打ち出した。価格が急上昇しつつあった2007年12月に開かれた総会で2,967万B/Dに設定された生産枠(インドネシアを含む)は、2008年9月の総会で90万B/d減の28,800千B/Dに、さらに11月総会では150万B/D減の2,730万B/Dに削減された。

  それでも2008年末の価格はピーク時の147ドルから30ドル前半まで急落したため、12月総会では遂に、9月の実生産量をベースに420万B/Dを削減し、OPEC11カ国の割当総量を2,485万B/Dとしたのである。従来OPECの各国別生産割当量は常にその直前の割当量を元に均等な割合で増減されていたのであるが、今回初めて9月の実生産量を新割当量の算定ベースにしたのである。これは従来のやり方を見直した大きな転換点であったと言えよう。リーマン・ショックが未だ需給に反映されていない9月の実生産量は、イランやベネズエラのような生産余力の乏しい国にとっては生産量のピークを示していたと言えよう。潜在的な生産余力を持つサウジアラビア、UAEなどとは事情が異なっていたのである。12月総会でイランやベネズエラなどのOPEC強硬派が大幅削減に反対しなかったのはそのためと考えられる。

  そしてこの生産枠は2009年2月の152回総会から今回の154回総会まで維持されたのである。この削減が功を奏し、原油価格は09年年初から徐々に回復し、3月には40ドル台、5月には50ドル台を回復、6月以降はOPEC加盟国の多くが満足な価格水準と考える60~70ドル台を維持している。

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前田 高行

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