南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

刑事事件の言渡しに立ち会う人

2007年11月07日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回は刑事事件の判決について、実刑と執行猶予付き判決の違いについて書きました。
 今回は、刑事事件の判決にどんな人が立ち会うのかについてです。

 判決は、裁判官が読み上げますので、裁判官が立ち会うのは当然です。

 判決を受けるのは、被告人ですから、被告人も立ち会います。

 そのほかには、検察官が必ず立ち会うこととなっています。

 それから、書記官という人もいます。
 書記官というのは、なじみが少ないですが、法廷が撮影されたときに、裁判官の手前、一段下のところにいる人です。
 裁判所の職員で、文字どおり書記役をこなします。

 このほかに弁護人も立ち会います。
 
 被害者は現在は法廷で立ち会う権限がありませんが、被害者参加制度が2008年12月までには施行されますので、それ以降は立ち会う権限がでてきます。

 被害者参加制度についてご興味のある方は、過去記事”被害者参加制度(改正刑事訴訟法)の成立”もご参照下さい。

 被害者参加制度は、改正刑事訴訟法では、被害者側の弁護士は自費でしか依頼できないようになっていますが、11月6日の朝日新聞記事(下記に引用)では、公費での負担も早期に検討されるということです。
 公費での依頼ができれば、法廷への被害者の立会いの権利を広く保障することになると思います。



(朝日新聞記事より引用)
犯罪被害者給付金の引き上げ決定 政府の推進会議
2007年11月06日18時51分

 政府の犯罪被害者等施策推進会議(会長・町村官房長官)は6日、首相官邸で会合を開き、犯罪被害者等給付金の最高額を引き上げることなどを柱とする支援策を、有識者検討会の最終報告に基づいて決定した。

 犯罪被害者等給付金は殺人など「故意」の犯罪の被害に遭いながら、加害者から損害賠償などを受けられない被害者や遺族に支払われる。遺族給付金の最高額は現在1570万円だが、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の支払い限度額である3000万円程度まで引き上げる。また、障害給付金も現行の1850万円から4000万円程度に引き上げる。

 また、犯罪被害者が刑事裁判で意見を述べることができる「被害者参加制度」の導入に向け、被害者を支援する弁護士の費用を公費で負担する制度を、早期に検討する。




 

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実刑と執行猶予付き判決

2007年11月05日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回、判決言い渡しの風景ということで、民事事件と刑事事件とに共通の風景である公開の法廷のことについて書きました。

 今回は、刑事事件の判決について見てみます。

 刑事事件の判決は、裁判官がそのほとんどを読み上げる形で言い渡されます。
 言い渡されるのは
1 刑の内容(主文)
2 被告人がどのような犯罪行為をしたか
3 言い渡した刑の内容をどのような事情(情状)を考慮したか
というようなことです。

 まず、刑の内容ですが、大きく分けると
  「実刑」と「執行猶予付き判決」
に分かれます。
 「実刑」は、言葉どおり、”実際に刑務所に行きなさい”ということで、例えば、既に勾留(身体拘束をうけてること)されている被告人には、

「被告人を懲役1年に処する
 未決勾留日数中20日をその刑に算入する」

というように宣告されます。

 通常の報道では、この、「被告人を懲役1年に処する」の部分だけ報道され、「未決勾留日数中20日をその刑に算入する」というのは報道されません。

 未決勾留日数(みけつ こうりゅう にっすう)というのは、判決がでるまでの間に勾留されている日数です。
 その間の何日を実刑から差し引くのかを裁判所が決めるわけです。

 たとえば、2月1日から勾留されて、4月1日に判決があった場合、2月1日から4月1日まで勾留されているのですから、未決勾留日数は60日になります。
 この60日を全部算入するということは通常はありません。
 通常は3分の1から2分の1くらいのところです。

 この未決勾留日数の算入があるはずなので、「懲役1年の実刑」と報道されていても、そこから引かれる日数がありますので、1年間懲役に服するわけではないということになります。

 「執行猶予付き判決」は、”今後、一定期間犯罪を行わなければ刑務所に行かなくてもいいですよ”というものです。
 例えば、このような形で宣告されます。

「被告人を懲役1年に処する
 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する
 訴訟費用は、被告人の負担とする」

「被告人を懲役1年に処する」というところまでは、実刑判決と同じですが、その後に

”この裁判確定の日から3年間、その刑の執行を猶予する”

という言葉が続くかどうかが実刑と執行猶予付がつくかどうかの分かれ目です。
 先ほど、「執行猶予付き判決」は、”今後、一定期間犯罪を行わなければ・・・”と説明しましたが、この判決例では”3年”というのがその期間にあたります。
 これを執行猶予期間といいますが、この期間の間、他の犯罪を行わなければ、実際には刑務所にいかないということです。

 逆に、この期間中に犯罪を行ってしまうと、執行猶予が取り消しになりますので、
 「懲役1年」
というのが実際に効力をもってきますし、プラス、次に行った犯罪の分まで刑務所に行くということになります。

 

 

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判決言渡しの風景

2007年11月02日 | 交通事故民事
 最近判決の言渡しがいくつか続きまして、その説明や控訴の準備をしているときに色々なご質問をいただきました。
 
 判決の言渡しがどんな風にされるかは、テレビ中継もありませんので、よくおわかりにならない方も多いのではないかと思います。

 判決の言渡しといっても、刑事事件と民事事件では、かなり違いますので、いずれ刑事事件の判決言い渡しがどんなものか、民事事件の判決言い渡しがどんなものかを書こうとは思っておりますが、両者には共通点もありますので、今回は共通点の部分からみてみます。

 判決は、公開の法廷で行われます。社会の耳目を集める事件では、傍聴席に座る為には抽選で当選を得なければなりませんが、そうでない事件は、何の予約もいりません。
 立ち寄って傍聴席に座れば、それで見る事ができます。

 一般の方は、テレビ等で報道されるイメージが強い為、傍聴には抽選が必要ではないかと思っておられる方が多いのですが、事件数からすると報道される事件はほんの少しで、圧倒的多数の事件は報道もされませんから、抽選にもなりません。
 実際、傍聴席が満杯になるという事件はほとんどなく、傍聴席に2~3人というような事件は結構あります。

 裁判官の声が聞き取りにくい、早口だという方が多いようです。
 このような一般の方の声を聞くと、大変反省させられます。
 長い事そのような裁判官の言い方を聞いてきたせいか、弁護士からはそのような声がおこらないからです。

 私の場合、裁判官の声が小さくて、多少聞き取りづらいかなということはあっても、その内容がわからないということはありません。

 これは、おそらく判決のある決まったパターンが、既に弁護士の頭の中には入っており、決まりきったパターンの部分は、ある程度聞こえないでも、頭の中でフォローでき、肝心なところ(裁判官の判断がわかれるところ)だけ集中して聞くようにしているからだと思います。

 ところが、一般の方は、そのような決まったパターンなど分からないわけですし、一言一句耳をそばだてていないといけないのですから、聞き取りにくいという現象が生じるのでしょう。

 判決が公開の法廷で開かれるということは、わかりやすい言葉で話すのが当然ですから、一般の方がわかりやすいように大きな声ではっきりと朗読することが裁判官には必要とされるでしょう。


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