2020年4月17日、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)から和解事例が公表されました(和解事例1633から和解事例1642まで)。今回は、1638から1642までの和解事例を紹介いたします。
1638=避難指示解除準備区域(浪江町)の日常生活阻害慰謝料に関するもの
1639=旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)の日常生活阻害慰謝料に関するもの
1640=会津地方の営農損害に関するもの
1641=避難指示解除準備区域(浪江町)の日常生活阻害慰謝料に関するもの
1642=自主的避難等対象区域(桑折町)の生活費増加費用等に関するもの
和解事例(1638)
避難指示解除準備区域(浪江町)から避難した申立人について、避難によりペットの猫を喪失したことについての慰謝料10万円のほか、日常生活阻害慰謝料(増額分)として、認知症の父及びうつ病の母を介護しながらの避難であったことを考慮し、平成23年3月分から平成30年3月分まで、仮設住居に入居する平成23年8月分までは月額8万円又は月額9万6000円、同年9月分以降は月額5万円で算定した金額(直接請求手続による既払金127万5000円とは別に318万7000円)が賠償された事例。
和解事例(1639)
旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)から避難した申立人ら(母及び子2名)について、申立人母の日常生活阻害慰謝料(増額分)として、仕事のために申立人子らを避難先に残して申立人母のみが帰還した平成23年4月分から申立人子らも帰還した同年12月分まで、家族別離状態であったことを考慮し、月額3万円が、申立人子らのうち1名の日常生活阻害慰謝料(増額分)として、平成23年4月分から平成24年8月分まで、同人が広汎性発達障害により避難先での環境変化に十分適応できず、また、帰還後の生活環境に適応するにも時間を要したことを考慮し、月額3万円が、それぞれ賠償されたほか、診断書取得費用及び上記別離期間中に生じた家族間面会交通費が賠償された事例。
和解事例(1640)
会津地方でしいたけの植菌及び栽培事業を営む申立会社の平成31年2月から3月までの間に購入した原木に係る営業損害(追加的費用)について、原発事故により原木の価格が高騰したとして、原発事故前の原木の単価と上記購入した原木の単価との差額に、申立会社が原発事故前に保有していた原木の本数である2200本ではなく、事故当時に有していた事業計画等を考慮して、実際に上記平成31年に購入した原木の本数である6500本を乗じた額(ただし、原発事故の影響割合とした8割の限度)が賠償された事例。
和解事例(1641)
避難指示解除準備区域(浪江町)に居住していた申立人母の日常生活阻害慰謝料(増額分)につき、事故当時1歳の申立人長男及び事故後に出生した申立人二男の世話を恒常的に行ったこと等を考慮して、平成23年3月分から平成29年3月分まで月額3万円が賠償された事例。
和解事例(1642)
自主的避難等対象区域(桑折町)から母子のみが避難した申立人ら(父母及び子2名)について、生活費増加費用として、平成24年1月分から平成27年3月分まで、原発事故前は自家消費用の米及び野菜を栽培していたこと等を考慮した月額9500円の食費増加分、二重生活となったこと等を考慮した生活費増加分月額3万円並びに避難先で子らが入園した幼稚園の授業料と事故前に通園していた幼稚園の授業料との差額から自治体の補助費を控除した68万9700円が、上記同期間の避難雑費として子1名につき月額2万円が、それぞれ賠償されたほか、平成31年3月に自宅に帰還した際の帰宅関連費用が賠償された事例。