南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

遷延性意識障害の将来介護費用に定期金賠償判決

2013年01月28日 | 遷延性意識障害
 被害者側は将来介護費用を一括払請求を求めていたのに,裁判所が定期金賠償方式で認めた判決が東京地裁(会議部)ででました。
 この判決は遷延性意識障害のケースでは,色々と影響がでてきそうなので紹介いたします。

 東京地裁平成24年10月11日判決(自保ジャーナル1883号1頁)

 まず,「一括払」「定期金賠償」の意味について説明します。
・一括払・・・将来の介護費用を一括で請求する方式
・定期金賠償・・・将来の介護費用の場合は「その死亡に至るまで1ヶ月○円の割合による金員を支払え」というように死亡まで毎月支払われる方式

 これまで,被害者側が一括払を主張し,被告は定期金賠償でと主張されてきたことはあったのですが,被害者側が一括払いを求めている以上,一括払で判決するという裁判例が多数でした(名古屋地裁平成24年3月16日判決,自保ジャーナル1874号など)。

 しかし,東京地裁は被害者側が一括払いを求めていたとしても,裁判所の判断で介護費用について定期金賠償にできるとしたのです。
 東京地裁のケースは,「自発呼吸なし,人工呼吸器装置下で経管栄養,全身管理されている遷延性意識障害とのことであり,状態が重篤なケースについてだけこのような考え方をするのか,それとも遷延性意識障害一般についても適用を広げていくのか,この判決だけではなんともいえません。

今後,他の裁判所にもこの考えが広がるかなど注目すべきだと思います。


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14級か12級か

2013年01月21日 | 未分類
 神経症状の後遺障害等級が14級か12級で損害賠償の額はかなり変わってきますが,その境目はどこにあるのか,なかなか難しい問題です。

 被害者側の12級の主張を否定して,14級を認定した裁判例を紹介します。

 神戸地裁平成23年8月17日判決(自保ジャーナル1861号73頁)
 1 画像所見で頚椎不安定性+,頚椎のC3~5では局所後変等を呈しているという変性所見があるが,これでは足らない。
 変性所見が交通事故による外力によるとの診断がされたことの十分な証拠がない。
 2 被害者には,脊髄,神経根に明らかな圧迫所見がない。
 神経の損傷や腫脹もない。骨折や軟部組織の腫脹などの外傷性変化も明らかではない。

→ このような状況からすれば,
 自覚症状が他覚的所見で明らかとなる程度にまで至っているとの十分な証拠がなく,12級認定ができない。

以上が判決の内容ですが(当方で適宜要約),
 自覚症状のみ → ×
 他覚的所見あり → ○
というのが12級となる基本的な要件で,他覚的所見があるといえる為には画像所見での異常所見があるというだけでは不十分で,それが交通事故による外力によるとの診断が必要というのが本判決の立場であるといえます。

 理屈としてはこのようになるのですが,被害者側からこのハードルを超えようとすると,医師の的確な診断が必要となってくるなど,そう簡単ではありません。


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14級後遺障害に13年間分の逸失利益を認めた判決

2013年01月15日 | 未分類
 神経症状で14級というと,逸失利益は長くても5年間とされることが多いのですが,裁判でチャレンジすることによりそれよりも長い期間分の逸失利益を認められる場合があります。
 今回はそんな判例を紹介します。

 京都地裁平成23年9月6日判決(自保ジャーナル1861号53頁)
1 逸失利益は症状固定から5年間は10%
  その後8年間は5%を認めた
1 後遺障害慰謝料は150万円(基準は110万円)

 このような判断となったのは,交通事故による傷害として左膝前十字靱帯損傷だったことや,左膝の疼痛が軽微とはいえないということが大きな要因であると思います。
 むちうちで14級というケースだとこの判決のようにはいかないであろうと考えられます。


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交通事故と公務員の逸失利益

2013年01月07日 | 未分類
 公務員は法律で非常に手厚く地位が保障されています。
 その関係で職場に復帰すると事故前に比べて減収なしという場合があります。
 このとき逸失利益はどうなるのか?というのはなかなか難しい問題です。

 最終的にはケースバイケースなのですが,最近の自保ジャーナルに掲載されていた裁判例を紹介します。

 神戸地裁平成23年9月7日判決(自保ジャーナル1861号36頁)
・41歳男性バス運転士(公務員)
・後遺障害→左下肢疼痛等で12級認定
・事故後はバス運転士から内勤職に転任

裁判所は,
・症状固定時から6年間は逸失利益ゼロ(これは事故から判決まで6年経過しており,その間減収がなかったことが理由です)
・それ以降10年間は5%の労働能力の喪失(12級の基準は14%なので,喪失率も低目に抑えられています)
としました。

 かなり低いなあと思われる方も多いのではないかと思いますが,後遺障害の程度(この判決では12級)や実際の勤務内容がかかわってくるところですので,訴訟となるとこの点についてどう主張し,立証していくかがポイントとなります。


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