例会・イベントのご案内とご報告

特定非営利活動法人 京町家・風の会

すべりこみ!夏の宿題~第7回例会ご報告(2008.7.20)~

2008-08-30 11:30:58 | 例会・イベントのご報告
夏休み最終日に一気に日記を書き上げる子どもよろしく記憶をたどり・・・
第7回例会のご報告です(新学期に間に合うたといえるのか・・・?!)。


まだまだ暑さ本番!の頃、第7回例会「畳について熱く語ります!」を開催いたしました。
会場は鞍馬口・磯垣タタミ店。実際に畳を見せていただきながらお話をうかがいました。

夏休み目前の小学生も参加して真剣にお話しを聞いていましたよ~。自由研究のヒントにもなったかな?

以下、ご報告です。

日本での畳の歴史は1200年前までさかのぼるそうで、現存の最古のものは奈良の正倉院に保存されています。形状も今のものとはちょっと違って「まこも」(これが事務局ブログクイズの右写真の答えです!)で編んだござを重ねていぐさで覆ったもの。それを板の間に置いてベッドとして使っていたとか。

現在の畳はまこも製ではないですが、地鎮祭など神具関係にこの名残があります。京都では巨椋池-おぐらいけ-に生えていたものがよく利用されていたようで、しばらく前までは淀にまこもの畳を作られる職人さんがおられたそうですよ!

もちろん、部分的に使うことしができないほどに高価ともいえ、もっと時代を下がって描かれた北野天神縁起絵巻のなかにはお坊さんが畳を持って逃げている場面がみられるものもあるそうです。「当時はそれほどに貴重なものやったんですよ~」と磯垣さん。当然庶民の家で畳敷きなんてことはなかったそうです。

一般にひろく畳が普及したのは明治大正にかけてで、大正末期にはそれまでの手縫いの藁床に加え機械製の藁床が登場したこともあり、その拡大に拍車がかかったようです。

ところで畳屋さんの仕事はなんでしょう?
わたしは畳をぜ~んぶ作るのが畳屋さん!と思っていましたが実際は・・・。



畳は大きく分けると、畳表―畳床―縁という構造になっています。
畳表は、大抵いぐさの産地(広島、岡山、熊本など)に製造基盤があり、縁は織屋さんの担当。畳屋さんは、畳床(事務局ブログの答えその2です)を作ってほかの部材と縫い合わせるのがお仕事です。


ただ昔ながらの藁床(左写真)の畳はあまり扱われなくなってきており今や藁床は全体の1割程度だとか。
理由はライフスタイルの変化や価格面だけでなく、畳に適した稲藁が入手しにくくなったことが大きいそう。これはお米穫りシステムの変容によるもので、藁の丈が短く畳に適さないものや田んぼに鋤きこまれてしまうものが増えてしまったそうです。

では残りの9割は?というと主流は1970年ころから出て来た化学床の畳。

磯垣さんはそれぞれの畳床のメリットデメリットを詳しく説明してくれました。


藁床は価格が高いのですが、手入れ(表替えなど)すれば100年以上もつ。
発泡樹脂を藁で覆った化学床(右写真)は安くて軽いけれど調湿性能が低く、熱と重量に弱い(火鉢でへこむことも!)、防虫シートの安全性の問題もある。耐用年数が15年ほどと短いのにその処分費が藁床のものより随分高くつく。

こう考えると、価格的にはどちらが安いのかわからなくなりますね。
ほかにも炭化コルクを芯にしたコルタ畳という畳もありまして、こちらはダニの発生は藁より低いものの硬いんだそうです。


さて、種類が多岐にわたるのは畳床だけではありません。

畳表も産地(備前・備後・小松・肥後、国外など)、染土(泥や淡路島の瓦に使う土など)、糸、織り方などによってさまざまな種類があります。
ただ問題になっているのは偽装。大阪の畳屋さんでは8割、京都では5割は輸入表を使っているそうですが、明記していないところもあるようです。なかには産地ですでに偽装が行なわれていて畳屋さんが騙されてしまうケースも!
産地のほうも信用を守るために畳表を織る時に証紙を織り込むなどの工夫をされているそうですが、なかなか大変なようです。
当然、一般消費者にはとても見分けは・・・
「いい畳屋さんを見つけんのが一番とちゃうかな~」と笑顔で磯垣さん。

しかも国産表の生産者もだんだんと減ってきている上に織機の生産がストップしているので、国産表の入手が困難になったときのためにと、磯垣さんは畳表の織機を入手されています(織りは練習中

これに框が板か樹脂か、縁を織物(これにも上から下まで数種類)かビニールにするかなど、構造が分かれているからこそ、それぞれの部材を選んで、自分の生活スタイルや懐具合(!)に応じた畳を作ってもらうことができるんです。

しかも1回作ったら終わりではないので、畳床だけ藁床にしておいてあとは表替えの際に段階をおって替えていく・・・ということも可能です。
きちんとした国産畳は高いしな~と思っていたのですが、身の丈に応じたもんを作ってもらえるなら玄関間だけでも、と出来心が・・・。
まずは畳ベッドから・・・?

ところで畳屋さんの仕事は畳を作ってお仕舞いではありません。部屋に入れるまでが仕事です。
畳作りもまずは下見に行って寸法をとってから。磯垣さん曰く「真四角の部屋はありません!」。つまり部屋にあわせた畳を作るのであって規格品の在庫が畳屋さんにそろえてあるわけではないんですね。菱形の部屋があれば菱形の畳を作る。そういうものだそうです。
更にどこの部屋でも大抵歪んでいるそうで、そこにびっちりと畳を敷き詰めるのが腕の見せ所!逆に計測の折、大工さんが「な、な、いがんでへんやろ?」と畳屋さんの眼をたいそう気にするそうです

また住宅用だけでなく、特別な畳を作るのも磯垣さんのお仕事のひとつ。
京都にはさまざまな地域の神社やお寺の畳が集まって来ます。
岩清水八幡宮、筥崎八幡宮、天神さんの船渡御の畳・・・。織屋さんの技術が高く、寺社用の畳縁を入手しやすいというのも理由だそう。

「遷宮が20年ごというのは、それにまつわる技術の継承のサイクルに見合ったもんやと思いますね。ただ、寺社関係も最近は厳しいから・・・。どことももっと間があいてくるかしらんね」

畳をめぐるお話は尽きず、予定の2時間はあっというまに過ぎました。
機会があれば今度は実際の作業時にお話ししていただくのも面白いかもしれません(過去の例会でやったことがあるんですよ!)。
磯垣さんで畳を入れられる方、ご一報くださ~い!



Q 1人前になるにはどのくらいかかりますか?
A 寸法をとって自分で畳を部屋に入れられるようになるまでには、訓練校を出てから4~5年はかかるでしょうね。ただもう畳屋さんで新規参入というのはないでしょう。
家の奥に入って金庫まで動かすような仕事やしお客さんとの信頼関係も大事やからね。
訓練校にも毎年20人のうち3~4人、家が畳屋でない子がいてるけど独立はむつかしいやろなぁ。

Q 裏返し、表替えて何ですか 
A 「畳表」の裏返しと表替えなんですよ。だいたい5年間隔でやります。だから1枚の畳表が10年持つということになりますね。


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