波佐見の狆

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Cantores CD その(1) 'Strawberries & Cream'

2007-09-02 17:35:19 | Harry Sever

では、Cantoresの2枚のCDについて、2つの記事に分けて書きますので、ぜひこの後に続く記事の方も併せてお読みくださいね

まず、Cantores Episcopi(「主教様の歌手たち」の意味)というアンサンブルについて簡単におさらいをしておくと、Winchester College学生のいわゆる課外活動として30年前に結成された男声アカペラグループで、現在7名で活動中。Harryは、2005年から参加しています。2005年というのは、まだ変声前(ソプラノの絶頂期)です。本来「男声アンサンブル」は成人男声により構成されるものについて言うので、一番高いレンジでもカウンターテナーなのですが、Harryはprep schoolで既に1年飛び級しWinchesterには皆より1歳早く入学した関係で、ボーイソプラノでも特別に入団したとのことです。詳しいことは、今年3月から4月にかけてアップしたこの記事(「とことん型破り」)、さらにこちらこちらをご覧ください。


Harry参加後に制作されたCDが2枚あり、1枚目が2005年秋の録音で‘Strawberries & Cream’、2枚目が2006年8月の録音で'Twilight’というタイトルです。どちらも、Harryのソロはなく、Harry の声はあくまでアンサンブルの一部として収まっています(Harryのためのグループというわけではありませんからね)。また、Harryが過去のソロアルバムで歌ってきたようなクラシックの歌曲ではなく、ほとんどポップスと映画音楽であるということもTwilightとStrawberries との共通点です。そういう意味では、どちらとも、今までHarry のCDを聴いたことがなかった皆さんも気軽に聴けると思います。

概要については、とりあえずここまでにして、まずStrawberries & Creamの内容から説明しましょう。

Altos:  Harry Sever, Dominic Burnham
Tenors:  Matt Woods, Ed Goble
Basses: Tom Keen, David Clarkson, Tony Ayres(←
先生。写真で右端に写っている白髪の男性。「とことん型破り」の記事中では別の先生の名前も挙がっていましたが、やはりこの写真はAyre氏のようです・・)

さっきも書いたように、男声アンサンブルではソプラノは要らないため、Harryはアルトということでクレジットされており、実際の歌い方もあのソプラノ独特のきらめく高音の響きは抑えて「しっとり」「まろやか」な味を出しています(Die Schone Mullerinとほぼ同じ時期の録音であることを考えれば、これはかなり意識的、意図的に調整したということだと思われるのですが・・・)。なお、もう1人のアルト、Dominic(写真向かって一番左)は、カウンターテナー(あるいはファルセット?)で彼のほうはおそらく変声していると思われますが・・・ともかく、Harryが最も高い音域を担当しているということです。


Track list:

1. Homeward bound   Simon & Garfunkel, arr. Eley    *
2. Ain't misbehaving    Ruzaf, Waller & Brooks
3. Where is love ?   Bart, arr. Eley **
4. Help   Lennon & McCartney, arr. Eley  *
5. Yesterday  Lennon & McCartney
6. Hey Jude   Lennon & McCartney, arr. Hamilton *
7. Just the way you look tonight   Fields & Kern, arr. Chilcott
8. Gershwin Medley   Gershwin & Gershwin, arr. Chilcott
9. My love is like a red, red rose   trad.
10. I got rhythm  Gershwin & Gershwin, arr. Clapham  **
11. Georgia   Carmichael, arr. Simpson
12. And so it goes   Joel, arr. Chicott **
13. Breakaway  Garfunkel
14. When I fall in love   Cole
15. The windmills of your mind   Bergman, arr. Horsewood  **
16. Red sails in the sunset   Kennedy & Williams, arr. Robb 

2005 Diamond Records    DRCD019

* 印は私がつけたもので、Harry の声がどの程度飛び出してはっきり聴こえてくるかという分量の目安と思ってください。*はある程度聴こえる、**はかなり沢山聞こえる(つまり、リーディングパートとなっている)という意味です。何もついていないものは、ハーモニーの中に融合してしまってHarryの声は単なるサブになっている(あるいはあまり聴こえない)トラックです(全く参加していないトラックもあるようです)。こうしてみると、少ないじゃないかと思われるかもしれませんが、これは量より質の問題でして、**のものだけでも、その内容は素晴らしいものです。この**のトラックを中心に、私なりにポイントを解説してみたいと思います。

1. Homeward bound (「家へ帰りたい」)

Simon & Garfunkel の名曲のひとつで、早く我が家に帰りたいという旅回りのミュージシャンの心情を歌ったもの (オリジナルをYouTubeで聴く)。テナー&バスによるI’m sittin in the railway station / Got a ticket for my destination…mmm という静かな導入部からHomeward boud / I wish I was とだんだん盛り上がり、2回目のHome, where my thoughts escaping /Home, where my musics playing. /Home, where my love lies waitingに入ってHarryが加わります。そしてSilently for me….で彼の声が飛び出して聞こえてくると、、ああ、変声前のHarryが帰ってきた!と早くも胸きゅんになるのです。。。

 3. Where is love?

ミュージカル’Oliver!’の中で、かのMark Lesterくん(懐かしい・・・)が、いかにも幼くか弱げなアマチュアの(?!)ボーイソプラノで歌っていたものです(→YouTube)。アァウゥ・・という短いスキャットに続き、Where is love?/ Does it fall from skies above? / Is it underneath the willow tree / that I've been dreaming of? Harryがこれぞプロのボーイソプラノ(アルト)だという感じでエレガントに聞かせてくれます。それに続くDominicのカウンターテナー、およびテナーも上手いですね。最後の方は全部のパートが一斉にWhere is love?と大きく盛り上がってHarryのアルトもよく聞こえるのですが、ただ、録音レベルが小さいのでしょうか。ボリュームを上げるとやや音が割れて聞こえるのが残念・・・・(ん?私のコンポだけかな?)。

歌詞全部をここに掲載したいのですが、著作権の関係上心配なのでやめておきます。多分部分的には大丈夫だと思うので、説明上必要な最小限載せます。でも、where is love lyricsで検索するとすぐ調べられますから(他の曲も同様の方法で)、歌詞を見ながら鑑賞してみてくださいね。

6. Hey Jude

Harry のララランラーンをもっと聴きたかった・・・

10. I got rhythm

Gershwin兄弟作詞作曲によるジャズのスタンダードナンバー。「音楽があり、花に囲まれ、夢もあって、友もいる。これ以上なにも望むものなんてないさ。歌おうよ!」といった、歌詞も曲も楽しい歌です。YouTubeで検索すると、Gershwin自身の映像(ピアノバージョン)を含めいろいろなアーティストのものがあるのですが、多分ボーイソプラノでの録音はHarryが初めてだと思います。I got starlight,ララッ / got sweet dreamsララッ / I got my man / Who could ask for anything more?というように、間にララッ!(I got!と畳み掛けているようですが、ララッ!と聴こえる・・・)とつなぎが入るのも可愛い。最後の方、テナーと重ねながら I got daisies / In green pastures / I got my man /......Old man trouble /  I dont mind him  / You wont find him round my door….軽快でいかにも楽しげなHarry の声がかなり大きく聞こえてきます。

12. And so it goes   

Billy Joelのヒット曲(→YouTube)。こちらの千葉県の英語の先生のHPで、歌詞と素敵な訳詩を覧下さい。「本文」というところをクリックすると解説がでてきますが、ここにも書いてあるように、so it goesのitは特定のものを指しているのではなく、いわゆる「状況のIt」で、大きく人生を含めた今の状況を受け入れ、「(人生って)そんなもの。こうして過ぎていくのだろう。」というある種の達観を歌っていると思われます。In every heart there is a room / A sanctuary safe and strong / To heal the wounds from lovers past / Until a new one comes along...と、冒頭からすぐ、Harry の声がかなり飛び出して大きく聴こえてきます(他のパートと重ねているのですが、ヘッドフォーンで聴いてみると、全体的に左チャンネルからよくHarryの声が聞こえてきます)。1回目のAnd so it goes, and so it goes  / And you're the only one who knows….というところはテナーのリードですが(これもいい声!)が、これに色合いをつけるようなHarryの優しい控えめのウウゥ~というスキャットもまた引き立っています。この曲だけに限らずですが、クラシックの歌唱法にはなかったスキャットを随所で披露しており、Harryの歌声のまた新たな魅力が広がっていると思います。Billy Joelがソロで歌っているのはシンプルで意外とさらっと歌っているのですが、このCDでは、Harryのと他のメンバーとのハーモニーが素晴らしく、もっとたっぷりと情感を込めた歌い方をしていて、ぐっと惹き込まれるトラックに仕上がっています。

15. The windmills of your mind (「風のささやき」) 

スティーブ・マックイーン主演のサスペンス映画’ The Thomas Crown Affair (「華麗なる賭け」)の主題歌です。歌詞を見ながら聴いていると、詩に込められたメッセージも哲学的だし、歌い方も難しいと歌だなという感じを持ちます。最初はテナーとバスのリードで、Harryのスキャットがかなり強く入ります。しばらく聴いていくと、各パートが単独で2行ずつ歌っていくのですが、その流れが実に美しい・・・・

Keys that jingle in your pocket
Words that jangle your head  <
ここまでバスのみ
Why did summer go so quickly
Was it something that I said  <
ここまでカウンターテナーのみ
Lovers walking allong the shore,
Leave their footprints in the sand <
ここまでテナーのみ
Was the sound of distant drumming
Just the fingers of your hand    
<この2行がHarryのみ>

(lyrics: Noel Harrison)

この後、各連の最後にLike the circles that you find / In the windmills of your mindという歌詞が来ていて、ここが意味上最も重要なところなのですが、これをHarryがシャープなアルトでかなり強く響かせて歌っています。windmillとは「風車」ですが、始めも終わりもなく、くるくると円を描いて君の心のなかでいつまでも回り続ける・・・・全体的に短調の曲ですし、とりわけHarry の歌い方は力強くあくまで知的なのですが、どこか悲哀を秘めたようなトーンがあります。心の風車は常に回り続け止まることはないが、一方で全ては常に変わってしまうものだ、といったような、諸行無常といった方がいいようなメッセージを感じてしまうのですが、、、。皆さんはどういう印象を持たれるでしょうか?ともかく、Harryの洗練された「アルト」ヴォイスが大きく生かされるアレンジになっており、私としては、12とともに一番気にいったトラックです。

                                         

というわけで、Harryの声がどう聴こえてくるかという観点から以上述べましたが、他のメンバーも皆きわめてレベルが高く(少なくとも学生のアカペラグループとしては)、全体的によくまとまったアルバムになっていると思います。ですから、*印をつけていないトラックも、十分楽しめますよ。

なお、Strawberries & Creamというのは、Wimbledon名物の生クリームをかけたイチゴのデザートのこと。ジャケット写真(ちょっとわかりにくくなってしまいましたが、白地です)の、可愛い蝶ネクタイは、リバティプリントでしょうか?私もちょうどこれとそっくりの柄のハンカチだったかを持っていた記憶があるのですが・・・。

'Strawberries & Cream'についてはこのへんにして、引き続き月曜か火曜までに'Twilght'について、およびご注文に関するお知らせなどについてアップしますので、どうぞまたお付き合いくださいね!

   


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
早々に (桃太郎の母)
2007-09-03 22:18:16
これだけ詳しく説明をして頂けると、音楽には無知な私にも入り込みやすくなります。
ハイ、もとろん予約です。
きっとCDを聴いてから、またこの紹介文を拝読すると、世界が新たに広がっていくような気がします。
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Unknown (Keiko)
2007-09-04 00:13:00
ありがとうございますーー!桃くんのおかあさんは、前の予告記事の時点ですでにメールで予約宣言してただいていたので、もちろん、さっそく受け付けました。桃くんといっしょに聴いてねっ。

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たいへん長らくお待たせ致しました (吉岡 淳)
2008-06-16 22:03:01
 Keikoさん
 たいへん長らくお待たせ致しました。ハリー・セヴァーが加入したCantoresのCD評2回に分けて掲載します。
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ありがとうございます! (Keiko)
2008-06-16 23:30:28
吉岡さん(=ボーイ・ソプラノの館の館長さま)お知らせありがとうございました!

皆さんも、こちらで素敵なレビューをご覧ください。

http://www5d.biglobe.ne.jp/~yakata/syoseki.htm
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