波佐見の狆

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「清盛」の音楽は全部素晴らしい

2012-04-22 15:41:52 | 平清盛ほか歴史関連

全50回の「平清盛」も、16回目を過ぎました。これまで、彼の人と成が形成される土台となる少年~青年時代の様々な出来事と心の葛藤が、とても見応えのあるストーリーとして展開されてきましたが、平家の棟梁となり、いよいよ「武士の世を作る」という大きな夢を実現するための大驀進が始まります。

音楽については、私は当初、KeithのTarkusがどう挿入されているか、ということだけに関心があり、吉松隆氏のオリジナルのオープニングテーマ曲やその他の挿入曲のことは、どうでもよかったというのが正直なところでした。しかし、ストーリーそのものにとても惹き込まれ、いろんな登場人物の心情に感情移入をしてこのドラマを観るようになるにつれ、吉松氏の音楽がいかに素晴らしいものかが分かってきました。

それで、サントラを買いました!

多くの大絶賛のレビューの通り、本当に美しい叙情性あふれる音楽の絵巻物です!!

NHK大河ドラマ《平清盛》サウンドトラック 
吉松隆 (作曲), NHK交響楽団 , 舘野泉 (ピアノ), 藤岡幸夫 (指揮)他

日本コロムビア  ¥2940

この中でも、とりわけ私が心揺さぶられる曲は、やはりオープニングテーマと、ドラマのもう一つのメインテーマというべき「遊びをせんとや」です。

オープニングテーマ:

NHK 大河ドラマ 平清盛 メイン・テーマ

たったの2分30秒ほどの曲なのですが、静と動、儚さと逞しさという変化に富むオーケストレーションで、吉松氏自身の説明によれば・・・・

番組の「顔」ともなる2分30秒のテーマ曲は、この歌(「遊びをせんとや」のこと)をモチーフとしつつ、清盛の生涯が走馬燈のように走り抜ける音楽にしたかった。冒頭は(少年時代の)水の雫のような「遊びをせんとや」の呟き。それが青年としての独立宣言「清盛のテーマ」に変貌し、次の瞬間、彼は咆哮しながら全力で疾走し始める。やがて世界は開けて栄華を謳歌する響きが広がるが、その向こうから敵(源氏)の姿が忍び寄る。そして、数度にわたる叩き付けるような衝撃の後、すべてが崩れ落ちる。最後に「遊びをせんとや」と歌う子供の声を微笑みの中で聞きつつ、すべては歴史の彼方に消えてゆく。

いいですねえ・・・・!特にこの最後の、衝撃の後すべてが崩れ落ち、遊びをせんとやの歌声の中、一瞬のうちに何もかもが歴史の彼方に消える・・ここのところが胸に迫ります。!ドドン、ドドドン!という激しい打楽器の後、シュルシュル・・・と花火が消え落ちるような音を弦楽器が表現しています。平家滅亡・・・・そして「遊びをせんとや・・・」さらに、あどけない子供の笑い声。。すべては夢だったのか?

この、「遊びをせんとや」ですが。。私は当初、この詩と曲はどちらも、平安時代から既に存在したものだと思っていたのです。

NHK大河ドラマ "平清盛"より T.No-04

「遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ。」この詩は確かに平安時代のもので、松田翔太が演じる「酔狂な(清盛の言葉)」雅仁親王、のちの後白河法王が編纂した『梁塵秘抄』(りょうじんひしょう)という歌謡集の中の1編だそうです。でも、このいかにも昔の童謡のような可愛らしいメロディ。。これが吉松氏の作曲だったとは驚きました。

(番組サイトの説明によれば、もともとメロディがあったが、現存していないため、吉松氏が、雅楽の香りを残しつつ分かりやすくシンプルでありながら、微妙なゆらぎを持ち、繰り返しドラマの中で聴かされても飽きないものを目指して作曲した、とのことです。)

ガールソプラノのソロに続き、この曲のモチーフがオーケストラで展開されていきますが、このアレンジがまた素晴らしい。清盛ばかりでなく、主要登場人物の深い心の吐露のシーンで使われます。あの鳥羽院(三上博史さんの演技力ってすごすぎ・・・!)が璋子のためにひどく傷つき、初めて得子に飛び込んでいくシーンでこれが流れてきたとき、ぞくっとしましたね・・・得子も一瞬にして自らの運命を悟り、その中に身を委ねる決心をします。そして、家盛が、桜の舞い散る中で、最後に宗子に「一度でよいから、当たり前の母として笑いかけて下さりませ・・」と言うあの名場面でも・・泣かせてくれましたねえ。。。

番組スタッフによる詳しい説明はこちらです。 

さて、吉松氏のこと。私は、この人はいったいどこの有名音大卒の超エリートだろうと思っていました・・・しかし、実は、先日の小田原お泊り会のとき、エリーユキママさんが新聞の切り抜き記事を持って来てくださったお陰で、プロフィールを初めて知ったのですが、音大でもなんでもない、工学部中退(慶應義塾)で、作曲や管弦楽法は、高校の部活中にファゴットを吹くかたわらに本を読んで独学されたのですって!本当にもう驚くべき努力で、才能を開花させた方なのですね。。イギリスにChandos(シャンドス)という、優れたクラシックのレーベルがありますが、彼は日本人として初めてこちらと契約。既に7枚もCDをリリースしているとのことで、そちらも興味津々です。

まだいろいろ書きたいことは山のようにありますが、来週は帰省ですので、いろいろと忙しく、このあたりでとりあえず、おしまいにいたします。

皆さまもどうぞ有意義なGWをお過ごし下さい。