こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『NO推理、NO探偵?』征木政宗

2023-08-29 20:39:26 | 読書感想
 
本格ミステリの王道を行き過ぎて、事件を完璧に解決できるけれど推理の披露のあまりの長さに飽きられている女子高生探偵・美智駆アイ。
一方、その状況に助手の取手ユウは危機感を持っていた。

そんなある日、犯人さえも長い推理に自白したいほどになったと犯人自身が、アイに推理ができなくなる呪いをかけた。

ピンチに陥ったアイではあったがユウは逆に人気を取り戻すチャンスと受け止め、推理をせずに事件を解決しろという無理難題を吹っ掛けた。
果たしてアイは推理なしにミステリの探偵役を務められるのか?

しっかし、ユウはスパルタ過ぎませんか?
というより暴言暴力が行き過ぎています。
第四話なんて酷すぎるでしょ?
とはいえ、最終話できちんと風呂敷を畳んでいます(SFじゃないけどある意味、大風呂敷かも)

実はこの作品、youtubeの「ほんタメ」で紹介されていたうちの1つなんです。
メタミステリ枠です。
好き嫌いがはっきり分かれると仰っていましたが、本当ですね。
私は好きですが、本格ミステリファンによっては大嫌いかも。

あと、某古典ミステリのネタバラシをなさっていますので(物語内できちんと予告をしています)お気をつけ下さい。
いまさらながらノックスの十戒も、ミステリの禁止事項と言いつつ古典のネタバラシで、反則だよなあと考えたりもしています。思っている方々も多いと思いますが。

ここまででネタバラシはしていないと思います。2017年の作品ですし。
笑いながら読みました。
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『おやごころ』畠中恵

2023-08-26 19:54:57 | 読書感想
 
今回、麻之助が親になるという事のせいか、親子関係にまつわる揉め事が多いように感じられます。

親子だから仲良しとは限りませんし、兄弟姉妹でも色々とあります。
特に表題作の内容は、読んでいて結構辛いものですし、それを言えば「たのまれごと」も似たようなものです。
いっそ他人なら気楽に縁切りもできますが、肉親となると色々と愛執がややこしくて難しい面も多いですよねえ。どうにも心の持って行き場が無かったりして。

現代にも麻之助さんのような名(迷)名主が、欲しいものです。
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『鈍色幻視行』恩田陸

2023-08-23 19:54:41 | 読書感想
 
作家の蕗谷梢は、再婚相手でありやはり彼自身も再婚になる弁護士の雅春と、中国への豪華客船クルーズへと出発した。

この船旅は新婚旅行みたいなものであったが、呪われた小説『夜果つるところ』の噂の理由である2回の頓挫した映画化の関係者(彼の親戚なども含む)へのインタビュー企画を、彼が梢に提案したようなものでもあった。

『夜果つるところ』は主人公が自分のアイデンティティーを探す物語らしいのですが、今回の関係者のほとんどがこの話のファンなだけあって、どこか満たされないものを抱えているように見える人々が多いようですね。

クリエイターと言える人もいれば、そう思われたいのに力のない人、普通の人でもそこに憧れる人など、様々な葛藤とあがきと挫折、その他もろもろを色んな割合で持ち合わせているようです。

読者としてもどこか思い当たる節があり、読みながらその負の面の特にドロドロとした面に無理矢理向き合わされているようで、胸苦しく感じました。
私自身、本の半分を過ぎる辺りまで自分の嫌な面を濃縮して突きつけられているようで、辛かったです。

そこを超えれば一気に全てが昇華される大団円まで一気に読み進める事が出来ました。
さらに、現実でも抱えている日頃の鬱屈が晴れるように思えたのは、いくらかは救いになりました。

他の読者の皆さんはどう思っておいでなのか、できればこの達成感と爽快感を気持ちが風化しないうちに同好の士と語り合ってみたいと珍しく思わせて下さった作品でもありました。
でも自分の醜さもさらけ出してしまわないかと悩ましく感じてもいます。
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『犬小屋アットホーム!』大山淳子

2023-08-15 20:43:36 | 読書感想
 
十二年振りに刑務所から出てきた正丸銀太は古巣の組に戻ろうとするが、組長はすでに亡くなり跡を継ぐはずの若は堅気というか政治家になっており、帰る場所を失くしてしまっていた。

しかし、その事を知る前に彼を迎え入れてくれたホームがあった。
ニーシャシャンという名のそのホームは年齢制限なく無料で入居でき、どうやら生活に困る事のない環境らしかった。
ただ1つ、入居する条件として1匹の犬と暮らさなくてはならないというものがあった。
つまり、犬の食事を1日2回与え、糞尿の始末をし、散歩は1日2回する事。
年齢制限は無いと言いつつも、そこに住むのは高齢者が多かった。

そこには様々な犬種の色んな育ち方をした犬がおり、それぞれに合いそうなパートナーが選ばれる。
一見、穏やかそうな物語になりそうに思われるが、人も犬もそれぞれに訳アリで、過酷な生き方をして来たものもいます。

特にアキラくんの犬生は読んでいて心が痛すぎて、何度ページをめくるのを止めようと思った事か。
でも、どうやら今後は落ち着いた生活ができそうな様子ですので、いくらか安心して読み終える事が出来ました。

最後に語られるこのホームが出来た理由などもまた、良い話でありながら心に突き刺さる面もありました。
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