こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『南海ちゃんの新しいお仕事 階段落ち人生』新井素子

2022-12-30 20:43:55 | 読書感想
 
R大学の学生の高井南海は、幼い時から一日に二回も三回も転び、大学生になってもしょっちゅう階段から落ちるため、同級生にまで粗忽姫と呼ばれる始末。

そんなある日も、歩道橋から落ちて怪我をしたところに救急車を呼んでくれた男性から、その顛末の異常さを指摘され、気がつくと大企業の社員になっていた。

つまり南海は、空間の亀裂を修復できる超能力者で(バイテン(竹本泉©)ではない)なぜか亀裂を見る事が出来て大企業の常務でもあったその男性(板橋氏)からスカウトされたのだった。

何というか、その後も様々な方向からいい事も悪い事も分かってきて、きっとハリウッド映画ならもっと派手な方向に行くところを、素子さんならではの結末に持って行くところが好きなんですよね。
何だかんだ言って、みんな善意の人ばかりなので、安心して読めました。
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『千吉と双子、修業をする 妖怪の子、育てます2』廣嶋玲子

2022-12-29 20:12:33 | 読書感想
 
千弥が禁忌を犯し、何も知らない赤子になってしまってからはや六年。
弥助は赤子を千吉と名付け育てていた。

元が千弥だったからか、千吉も以前と変わらず弥助だけを慕って生きていた。
それもあってか、千吉は弥助を守るためだけに西の天宮の妖怪奉行・朔の宮に弟子入りしたのだが・・・。

千吉は一途といえば聞こえはいいけれど、視野が狭すぎます。
千弥はその傾向が一番悪い方向に向かう生き方をしてしまったのでしょうし、だからこそ今生は、少しでも心に余裕を持って周りをゆっくり眺められる人生を過ごして欲しいと思います。

朔の宮もそれが分かっていて、根気よく導いているのだと感じます。
千吉の成長が楽しみですね。
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『非可能犯罪捜査課 ゴッドハンド』草上仁 SFマガジン2023年月号掲載

2022-12-28 20:18:12 | 草上仁
 
ゴッドハンド。
難しい外科手術を成功させ患者を生還させる確率が高い外科医の腕、または、その高い能力の持ち主の事を言う。

一般的には、こういうイメージでしょうか?

ところがここに出てくるゴッドハンドの持ち主は、医師免許を持たずに非合法に手術を行い、それにはメスを使わず、血を流す事もないと言います。

それが今回に限って、彼が手術した患者が不思議な状態で死亡し、その後の対応のまずさもあって遺族が疑問を持ち、裁判にまで発展する事になってしまったようです。

いやあ、普通ならば超常現象の真偽から争われそうなものですが、面白い方向から戦っています。
しかもこの結末、つまりはどういう事なのか?
いくらでも想像の飛躍する余地がありそうで、何倍にも楽しめそうです。
しかも続編があるというじゃないですか。
SFマガジン編集部様におかれましては、必ず載せてくださいますよね?

さらに今回のアンケート結果によって、草上さんはいつもの倍も書いて下さっているとの事。
これはきっと担当様を始めとしたSFマガジン編集部は、特集を組んでくださいますよね?
宜しくお願いいたします。
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『まず牛を球とします。』柞刈湯葉

2022-12-18 20:14:54 | 読書感想
 
この本のタイトルが物理学者に関するジョークとは知りませんでしたが、すんなり面白いと受け入れられたのは、以前、どこかの科学よみものなどで説明の前提条件として書かれ倒してきた表現なのではないかと思いました。

そしてこの表題作。
本当に牛を球体にしているところが凄い(^^;)
その後の話の展開もかなりぶっ飛んだ世界観でして、これを冒頭に持ってくるところも好きです。
続く作品群もかなりバラエティに富んだ内容で、舞台が地球外、創世記、宋時代の中国、日本も大正時代など、なかなか面白くなっています。

私が好きな作品としては「東京都交通安全責任課」「天地および責任の創造」「家に帰ると妻が必ず人間のふりをしています」「タマネギが嫌い」「大正電気女学生~ハイカラ・メカニック娘~」「沈黙のリトルボーイ」そして、「ボーナス・トラック・クロモソーム」が挙げられます。

特に「ボーナス・トラック・・・」は、人が悪いと言うのか、科学者が陥りやすい所業というのか、何とも言えない結末となっております。
大好きです(私も悪?)
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『それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影』六草いちか

2022-12-16 20:06:32 | 読書感想
 
森鴎外の「舞姫」のエリスのモデルとして語られてきた鴎外の恋人エリーゼ。

様々な説があっても悪く言われる事が多いと感じるエリーゼの本当の人物像を、彼女の記録を調べる事で明らかにしていこうとされています。

ここであまりはっきりと書かない方がいいと思いますが、この本を読む限りではエリーゼが騙されて追い返されたようで。
鴎外自身も彼女を追いたかったようですが、留学させてもらった国への恩義と、自ら学びながら彼を教育し育ててくれた母や家族を捨てられなかった様子。

そして鴎外と心ならずも分かれて母国に戻ったエリーゼがどのような人生を送ったのかを、六草さんが多くの教会や州立公文書館など、様々な役所を巡って調べていらっしゃいます。
時にはそこの役人の無駄話に付き合わされたあげく、時間だからとろくに調べさせてもらえなかったというような妙な苦労もなさっています。

あ、そうそう。
鴎外のファンの方に重要な情報として、ベルリンの鴎外記念館は実際に鴎外が住んだ住まいではないという内容が記載されています。
本当は元の住まいを記念館にしたかったけど、住人がおられたので出来なかったとか。
伝言ゲームで、いつの間にかベルリンのスタッフも元住居と思い込んでおられるようです。
まあ似たようなところではありますので、実際の間取りを想像しつつ雰囲気を味わわれるといいと考えます。

なかなか興味深い本でした。
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