『臨床の砦』夏川草介

臨床の砦 夏川草介 小学館

 

令和3年1月3日の救急車の中で、主人公の医師の敷島寛治は、新型コロナウイルスに感染している患者の呼吸状態が悪化した事による専門病院への搬送に付き添っていた。
敷島のいる信濃山病院から、筑摩野中央医療センターへの搬送だった。

この物語では、長野県を舞台に1か月間のコロナウイルスとの戦いの最前線と、それに関わる人々の心身両方の動きが描かれています。
本来なら専門ではない医師さえ中心となって、あらゆるスタッフと共に、死と隣り合わせでもある状況に心身ともにすり減らしながら、時には非関係者からの誹謗中傷に傷つけられながら、無理解に苛立ちながらも、命の為に戦っていきます。

できれば、特に政財界とマスコミの方々に、ぜひ！最後まで読んでいただきたいです。

『本好きの下剋上 短編集Ⅰ』香月美夜

【小説】本好きの下剋上～司書になるためには手段を選んでいられません～ 短編集１ 本好きの下剋上（短... 香月美夜 TOブックス

 

第一部Iで、高熱で死にかけていたマインが、姉のトゥーリから見て変になったという話や、第二部Iでは、マインから見たら困ったちゃんに感じられるロジーナにも、彼女なりの常識や見方がある事が分かったり、第三部Iでも、フィシュピールコンサート後の脇役貴族たちから見たエーレンフェストの変化など、視点を変えると全く違う世界が見えてきて、とても面白く感じられました。

また、この本では、第一部から第四部の後半までを急ぎ足で駆け抜けるようなものですから、マインが急速に成長し、あっという間に違う世界にやって来たという実感がわきます。

今後、ローゼマインとなったマインが、どのようにこの世界で生き抜いていくのか、とても楽しみです。

『スガリさんの感想文は絶え間ない嵐の中 銀河鉄道の夜編』平田駒

スガリさんの感想文は絶え間ない嵐の中 『銀河鉄道の夜』編: 『銀河鉄道の夜』編 (5分シリーズ+) 平田 駒 河出書房新社

 

久しぶりに恋人の絵馬に再会した直山杏介。
しかし、このままではお互いの両親への紹介さえ無しに、結婚届を出しかねない勢いの彼女である。
さらに、彼女の弟の壮馬は、この結婚に反対している。
実は彼女には、人に言えないある境遇があるのだった。

初めから絵馬はトラブル続きで、彼女のスーツケース3つ全てが行方不明になるは、爆弾騒ぎがあるは、仕舞いには彼女まで誘拐されるはで、いやー、こんなのでは結婚してもゆっくり休めません。

ただ、杏介の考え方は、彼女たちのような境遇にある人々からすれば、偽善者と思われても仕方ないのかもしれません。

読んでいる私からして痛いところを突かれましたし、最近、その考え方はどうなのかな？と思っていたところだったので、ドキッとしました。

結果として、こうなるしか無いのかもしれませんが、辛いですよね。

コミックス『部屋裏のバイテン(3)』竹本泉

部屋裏のバイテン ： 3 (webアクションコミックス) 竹本泉 双葉社

 

今回から、美緑さんの弟の葵くんも、穴塞ぎのバイトを始めています。

以前より、穴が開く頻度が上がっているような気もしますが・・・。

物語を読み進めていくうちに、ふと、もしかして正社員になると名前に「バイテン」と付けられるのでは？と、思ったりしました。
役職みたいに。

ま、何にしろ、縫物の苦手な私には不向きな仕事です。

『遅番にやらせとけ 書店員の逆襲』キタハラ

遅番にやらせとけ 書店員の逆襲 キタハラ KADOKAWA

 

漫画が安く買えるので、書店でバイトしている大学生の小島伸介。
推しのアイドルの応援資金のためにバイトしている島尾海。
専門学校でクリエイターを目指しながらここでバイトをしている吉行夏男。
東京の生活を満喫し過ぎて大学を留年しかけてはいるが、この書店の居心地の良さにバイトは続けている遠藤昇太。
そして、この爽快堂書店のベテランバイトで正体の知れない庄野祐樹。

若手のバイト書店員の事情が明かされながら、ベテランの庄野の状況が分かっていく過程が面白いです。
また、若手の中では島尾と吉行の成長過程が特に好きです。
あと遠藤は、若気の至りとも言えますが、騙されそうで心配です。
何よりも、庄野の目標が達成できますように。