45)竜葵(リュウキ)に含まれるSolamargineの抗がん作用

図:イヌホオズキはナス科の一年草。茎の高さは30~90cm。葉は広卵形。夏に小さい白花を数個つける。果実は球形の液果で、黒豆大、熟すと黒色になる。世界の温・熱帯に広く分布する。有毒なアルカロイドを含み、その薬理効果を利用して、抗炎症作用や抗がん作用の目的で漢方治療に使用される。生薬名は竜葵(リュウキ)

45)竜葵(リュウキ)に含まれるSolamargineの抗がん作用

ナス科の植物の中には有毒なアルカロイドが含まれるものがあります。ジャガイモもナス科ですが、ジャガイモの新芽に多く含まれるソラニン(solanine)は有毒で腹痛や痙攣やめまいなど引き起こすことが知られています。
ソラニンと似たアルカロイドに
ソラマルジン(solamargine)があります。
このソラマルジンは抗がん生薬としてがんの漢方治療で使用されることの多い
竜葵(リュウキ)の活性成分として知られています。リュウキの抗炎症作用や抗がん作用はソラマルジンなどのアルカロイドによることが報告されています。
特に最近はソラマルジンの抗がん作用の研究が報告されています。
生薬のリュウキやその活性成分のソラマルジンの抗がん作用が注目されているようです。
ソラマルジンに関する最近の論文を紹介します。

Solamargine induces apoptosis and sensitizes breast cancer cells to cisplatin.(ソラマルジンは乳がん細胞にアポトーシスを誘導し、シスプラチンに対する感受性を高める)Food Chem Toxicol. 2007 Nov;45(11):2155-64
培養細胞を使った実験では、ソラマルジンはヒト乳がん細胞に対して、シスプラチンやメソトレキセート、5-フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミドよりも強い抗がん作用を示す。ソラマルジンは、アポトーシス(プログラム細胞死)に関連する受容体や細胞内蛋白の影響して、乳がん細胞にアポトーシスを引き起こす作用がある。Bcl-2やBcl-xLといった、アポトーシスを起こしにくくする蛋白の量ががん細胞内で増えると、そのがん細胞はシスプラチンに対して抵抗性になる。ソラマルジンはBcl-2やBcl-xLの発現を抑制する作用がある、したがって、シスプラチンとソラマルジンの併用は、シスプラチン抵抗性の乳がん細胞の治療に有効である。
Solamargine upregulation of Fas, downregulation of HER2, and enhancement of cytotoxicity using epirubicin in NSCLC cells.(ソラマルジンは、非小細胞性肺がん細胞に対して、Fasの発現を高め、HER2の発現を低下させ、エピルビシンの抗腫瘍活性を高める
Mol Nutr Food Res. 2007 Aug;51(8):999-1005.
Fasは細胞表面にあってアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する受容体で、HER2は細胞の増殖を促進する成長因子の受容体。したがって、細胞表面のFasの量を増やし、HER2の量を減らすことは、その細胞の増殖を抑えアポトーシスを引き起こさせる効果がある。この研究では、非小細胞性肺がんの培養細胞を用い、ソラマルジンががん細胞のFasの発現を増やし、HER2の発現量を減らす効果があることを報告している。その結果、抗がん剤のエピルビシンの抗腫瘍効果を相乗的に高めることを報告している。
Downregulation of HER2/neu receptor by solamargine enhances anticancer drug-mediated cytotoxicity in breast cancer cells with high-expressing HER2/neu.(ソラマルジンによるHer2/neu受容体の発現量抑制は、HER2/neuを多く発現している乳がん細胞の抗がん剤感受性を高める)Cell Biol Toxicol. 2007 Sep 19; [Epub ahead of print]
HER2/neuは細胞表面に存在する糖蛋白で、受容体型チロシンキナーゼです。正常な細胞において細胞の増殖や分化の調節を行っているが、がん細胞においてはこの蛋白が過剰に発現していることが細胞増殖や抗がん剤抵抗性の原因の一つになっている。この研究ではHER2/neuを過剰発現している乳がん細胞を用い、ソラマルジンが乳がん細胞の表面のHER2/neuの量を減らす作用があることを報告している。その結果HER2/neuを過剰発現して抗がん剤抵抗性になった乳がん細胞の抗がん剤感受性を高めることを報告している。

また、ソラマルジンでは無く、リュウキに含まれる多糖成分の抗がん作用も報告されています。

Antitumor activity of crude polysaccharides isolated from Solanum nigrum Linne on U14 cervical carcinoma bearing mice.
(
U14子宮頚がんを移植したマウスに対する竜葵から分離した粗多糖成分の抗腫瘍活性) Phytother Res. 2007 May 8; [Epub ahead of print]
ヒト子宮頚がん細胞(U14)を移植したマウスに、竜葵(Solanum nigrum Linne)の多糖成分を経口にて与えると、移植したがんの増殖を顕著に抑制した。その機序としてがん細胞のアポトーシスの誘導作用が示唆された。また、血中のTNF-αのレベルを低下させる効果が認められた。

 

ソラマルジンががん細胞にアポトーシスを誘導することは10数年前から多くの研究が発表されています。ここで紹介した乳がんや肺がんだけでなく、多くのがん細胞を用いた研究で、ソラマルジンががん細胞にアポトーシスを誘導することが示されており、その作用機序の研究が行われています

以上のように、
竜葵(りゅうき)は抗がん剤治療の効果増強の目的で併用したり、進行がんの漢方治療において使用する価値はあると思います。

 


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