碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

女性セブンで、「テレビ東京」についてコメント

2017年12月04日 | メディアでのコメント・論評



視聴者を裏切らないテレ東 
「カネはないがプライドはある」

『家、ついて行ってイイですか?』、『YOUは何しに日本へ??』『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』など、オリジナリティーあふれる番組を数多く放送するテレビ東京が勢いに乗っている。

今年6月には、週間平均視聴率(5月29日~6月4日)でテレビ朝日、フジテレビを抜き、民放3位となり、開局以来初の快挙を達成。

行政や自治体から依頼を受け、池の水を全部抜き、そこに何が潜んでいるのか調査するというドキュメントバラエティー『池の水ぜんぶ抜く』(放送は不定期)が9月3日放送で11.8%の高視聴率を叩き出し、11月26日の放送でも12.8%を記録。2回連続で同時間帯に放送されていた、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』を抜き、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)に次ぐ2位となった。

かつて“最下位”が定位置だったテレビ東京は最強の“弱者”と生まれ変わった。

テレビ東京の前身は、日本科学技術振興財団テレビ局として授業放送をメインに行う教育番組専門局として1964年にスタート。慢性的な赤字体質のため、1969年に日本経済新聞社が経営参画したが、その後も視聴率は低迷を続けた。キー局で4位となった民放局からは「振り向けばテレ東」と揶揄されるほどだった。

そんなテレ東が最強の“弱者”となったのはなぜか。テレビ東京で常務を務め、著書に『テレビ番外地 東京12チャンネルの奇跡』(新潮社刊)がある石光勝さんはこう言う。

「テレビ東京が生まれ変わったわけではない。昔から実践していることを続けているだけ。テレ東は、カネなし、モノなし、ヒトなしのないものづくしの局だったため、足を使い、知恵を出し、他局と同じことは絶対にやらないというプライドだけはあった。それがテレ東の流儀です」
こんな気風から『開運!なんでも鑑定団』、『出没!アド街ック天国』、『ASAYAN』などが生まれた。

番組編成も独自路線だ。大事件が発生し、他局がロケ隊を投入して報道特番の生放送に切り替えても、テレ東だけは「アニメの時間ならアニメ」と編成を変えないスタンスを貫く。

1991年の湾岸戦争時、他局がこぞって報道番組を流す中、アニメ『楽しいムーミン一家』、『三つ目がとおる』を放送し、18%近い高視聴率を叩き出したことは伝説となっている。上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義さんはこう話す。

「生中継はお金がかかるというのもあるが、何が起こっても通常の番組を続ける頑固さがある。通常番組を楽しみに待っている視聴者を裏切らないのがテレ東の考え方です」




ドラマも個性的だ。テレビ評論家の吉田潮さんが指摘する。

「遠藤憲一、松重豊ら脇役ばかりがシェアハウスで暮らす『バイプレイヤーズ』など、他局なら“スポンサーがつかない”と却下されるドラマに果敢に挑戦しています。横並びで同じような出演者のドラマが多いなか、テレ東ドラマは刺激的です」


(女性セブン 2017年12月14日号)