碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【報道】 複数の情報源を通じて、自身の判断を

2016年07月03日 | メディアでのコメント・論評



 先日、長野県塩尻市で行った講演会の要約が、地元紙「松本平(まつもとだいら)タウン情報」に掲載されました。

<講演会 聞きどころ>

 塩尻市の映画館東座は5日、カトリック教会が隠蔽してきた神父の児童虐待をスクープした米国ボストンの地方新聞の記者たちを描いた「スポットライト 世紀のスクープ」上映に合わせ、同市出身でメディア論が専門の上智大教授、碓井広義さんの講演会「今、報道に何が起こっているのか!?」を開き、130人が聴いた。

上智大学教授 碓井広義さん 
「今、報道番組で何が起こっているのか!?」 

複数の情報源から自身の判断を

 この3月、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子さん、テレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎さん、TBS「NEWS23」の岸井成格さんの3人のキャスターがあいついで降板した。

 アナウサーと違いキャスターはニュースの裏側、奥にあるものを知識、経験を通して判断し、自分のフィルターを通して視聴者に材料を提供してくれる役割をもつ。3人は見える形での圧力はなかったと言っているが、私たちが現政権に抱く不安や疑問の代弁者としてきちんとものが言える優れたキャスターだった。

 降板は2月に高市早苗総務相が政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性に言及した件とも関係するのではないか。戦前の国家によるメディア統制への反省を踏まえて不偏不党、表現の自由の確保を原則にした放送法だが、高市発言はあきらかにおどしと言えるし、同法4条に反する。

 しかし、テレビ局側は敏感に反応し、政権に配慮し「うるさ型のキャスターは出しませんよ」という恭順、忖度(そんたく)の態度をとったのだ。報道にとってこの「面倒くさいことはやめよう」の自主規制が一番怖い。

 ネットも加わり、情報の洪水の中で他人の判断にゆだねて安心できる時代ではない。複数の情報源を持ち、情報の背後には国や組織や人が意図をもって送り出していることを想像し、自分の頭で判断する大切さを日常的に考えるようにしたい。

 NGO「国境なき記者団」の「報道の自由度ランキング」によると日本は2010年は150ヶ国中11位だったのが、原発事故後の15年には180国中61位と下がっている。現政権のメディアコントロールがじわじわと進んでいる状況を憂い、おかしいことはおかしいと言い、がんばっているメディアは応援していきましょう。(谷田敦子)

(松本平タウン情報 2016.06.28)

・・・現在、テレビによる「選挙報道」が極めて少ないという、異様な状況が見られます。

まさに「忖度」が行われているわけです。

メディアが選挙について「伝えないこと」が、何に寄与するのか。

その辺りも注視していかなくてはなりません。