碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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読売新聞で、「報道ステーション」誤報問題についてコメント

2014年10月02日 | メディアでのコメント・論評

1日付の読売新聞が、「報道ステーション」誤報問題に関する記事を掲載しました。

この中で、コメントしています。


テレビ朝日社長が謝罪
川内原発安全審査「報道ステーション」誤報で

テレビ朝日のニュース番組「報道ステーション」が、九州電力川内(せんだい)原発の安全審査に関して誤った報道をした問題で、テレビ朝日の吉田慎一社長は30日の定例記者会見で「あってはならないこと。全面的におわびする」と謝罪した。

同社は再発防止策と関係者の処分を検討しているが、識者からは「検証が不十分」との声も上がる。

◆「ミス」強調

問題となったのは9月10日夜の放送。

この日、原子力規制委員会が川内原発1、2号機について、安全審査の「合格証」にあたる審査書を決定し、田中俊一委員長が記者会見した。この決定で、同原発は再稼働の条件をクリアした。

同番組は、田中委員長が会見で、周辺の火山に対する安全審査基準の修正を示唆したと報じ、ナレーションで「修正した正しい基準で再審査すべきだ」と批判した。ところが、田中委員長が修正を示唆したのは、実際には火山ではなく、竜巻の審査基準だった。

さらに同番組は、火山の審査基準に関する質問に対し、田中委員長がほとんど応じていたにもかかわらず、その大部分を省き、回答を拒んだように編集した。

吉田社長は30日の会見で、スタッフの取材メモが「極めて不完全で、雑な省略があった」ことが最大の原因と説明。放送されたVTRの内容をデスクがチェックしきれないなど、「ミスが重なった」と強調した。

ただ、同番組は過去にも火山への備えが不十分だと主張しており、メディア論が専門の碓井広義・上智大教授は「世論を反原発の方向へ誘導しようとしたと言われても仕方がない」と指摘する。

◆検証「不十分」

放送翌日の11日、規制委事務局の原子力規制庁には「田中委員長の受け答えはおかしい」などの苦情が相次いだ。規制庁は同日夕、テレビ朝日に「事実誤認がある」と説明を要求。

同社は社内調査を行い、12日夜の同番組で古舘伊知郎キャスターが「大きな間違いを犯した」と謝罪したが、誤報の経緯や原因には言及しなかった。

30日の会見で吉田社長は、再発防止策を講じるとともに、番組関係者らの処分も検討するとしたが、その結果を番組で伝えるかどうかは明言を避けた。

青山学院大の大石泰彦教授(メディア倫理)は「12日の放送を見ても、なぜ誤報が起きたのか分からなかった。きちんと検証し、視聴者に伝えるべきだ」と話している。

(読売新聞 2014年10月01日)


・・・・原発推進論、一方の反原発論、それぞれの是非は一旦置いておきますが、今回の「報道ステーション」のやり方は、やはり間違っています。

実際の田中委員長の会見と、番組で流された内容を、フツーに比較してみれば、これが「なかったことを、あったことに」、また「あったことを、なかったことに」した意図的な編集であることは一目瞭然だからです。

「報道ステーション」が、もしくはテレビ朝日が、それなりの信念をもって反原発を訴えること自体は構いません。

ただ、こんな具合に、自分たちの主張のために事実をねじ曲げて伝えてしてしまうと、反原発論そのものの信憑性まで疑われかねない。

それは「権力のチェック機関」としての、つまりジャーナリズムとしての信頼を失うことにつながります。

どのメディアも横並びの、もしくは同じ方角を向いている状態は、健全とはいえません。

朝日新聞や「報道ステーション」のように、現政権を厳しく批判するメディアが存在している必要があるのです。

それだけに、自分で自分の首を絞めるような過ちを犯してはいけません。

反政権も反原発も、事実を事実として伝えながら訴えてほしいと思います。