我が郷はかっての馬産地、馬、牛ともに消えて半世紀にもなるのに、お盆には、いまだに牛馬のお墓を人と同じに供養する。
優しい郷である。
彼女は同い年だから、もう70代も半ば、登山仲間の夫を亡くして6年、子供たちは立派に育て上げて、今はでっかい家に一人で住んでいる。
訳あって30代で車の免許は返上、以来、どこへ行くにも自転車で出かける。
話題が充分にたまった頃、天候の具合を確かめてから、いつもの愛用の帽子を被り、小さなリュックを背に10キロ余り自転車をこいでやってくる。
リュックから取り出したお土産を「おばあちゃんを拝ませて」と仏前に供える。
それからは、こちらも話好きな老妻と、持参したおにぎりを食べながら延々、子供の事、孫たちの成長・・・・・等々
話はまだまだ尽きないが、夕方近くなって「そろ、そろ・・・」と帰るパターンが年に数回。
数日後、携帯を持たない彼女からは決まってお礼のはがきが来る。
「忙しい中、長居してごめんなさいい。」
「とても楽しい一日でした」 達筆でお礼のはがきは欠かしたことがない。
メールより何倍もうれしい。
昨日も大分、話して帰ったから、多分、明日かあさってにはうれしいはがきが届く。