遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『Curious George Takes a Trip』   Houghton Mifflin Company

2022-10-20 14:23:40 | レビュー
 Curious George シリーズの続きなのだが、たまたま取り上げたこの英語絵本電子書籍版では、今までのシリーズと比べていくつか異なる点があることに気づいた。本書は2007年のコピーライトになっている。2007年の刊行だろう。

 この表紙で気づいたこと。まず、H.A.REY の没後の出版物に「MARGRET & H.A.REY'S」と冠されていた部分がない。「LEVEL 1」という記載がある。裏表紙の上端には、このレベル1について、Green Light Readers という表記があり、下端には、このレベルは年齢では5~7歳に対応する旨の分類表記がある。(この分類表記に併せて 「READING RECOVERY LEVEL 15-16」、「LEXILE LEVEL 240L」という表記もある。下記のソースをご参照ください。)
 表紙の下端には「Curious about transportation」とあり、「乗り物への好奇心」くらいの意味合いだろう。何の乗り物か? 表紙に描かれた「飛行機」への好奇心・興味を持たせるということのようだ。

 内表紙には「Adaptation by Rotem Moscovich
       Based on the TV series teleplay
       written by Raye Lankford 」   と明記されている。
この表記から、私は teleplay という単語を初めて知った。テレビドラマ、テレビ劇を意味する。その脚本の意味も含むようだ。
 この明記から幾つかのことが分かる。この英語絵本は、ジョージと友達・黄色帽子の男を主人公にしたテレビドラマが先にあって、そのテレビドラマは Raye Lankford の脚本によること。そして、この絵本は Rotem Moscovich がそれをもとに絵本化したという作品ということ。このことで冒頭に載せた表紙、飛行機の右翼部分に書き込まれている「SEE IT ON PBS KIDS」というTM(トレードマーク)付きの箇所と結びついた。

 そこで、著作権の記載を見ると以下のとおり。
「Copyright 2007 Universal Studios. Curious George and related characters, created by Margret and H.A.Rey, are copyrighted and trademarked by Houghton Mifflin Company and used under license. ・・・・・・・・」
テレビドラマが最初なので、Universal Studios が著作権を持つ一方、現在はHoughton Mifflin Company が、Curious George その他のキャラクターに関わる絵本の著作権を継承していることがわかる。著作権は、Margret and H.A.Rey の手を離れたということなのだろう。だから、「MARGRET & H.A.REY'S」の記載がないという点を理解できた。

 さて、この絵本の本筋に入ろう。
 上記のことと関係するが、絵本のタッチが大きく変わった。ページ全体がカラー刷りの絵になっていて、基本的に絵本の本文はページの下部に記され、絵とは分離している。ジョージと黄色帽子の男のキャラクター描画は勿論同じだが、ページ全体に絵がカラフルに描かれている点が大きく異なる。テレビドラマの画面とリンクするシーンが使われている結果なのかも知れない。確証はないけれど・・・・。

 ジョージと黄色帽子の男は、雪が積もる自宅を後に、バケーションとしてハワイに旅行するというお話。旅行の準備万端を整えて眠りにつくのだが、目覚ましの起床時刻をセットし忘れていて、慌てて空港に向かう場面から始まる。
 この絵本は、空港と飛行機に焦点を当てたお話。ジョージは飛行機に乗ったことがないので、すごく興奮している。空港で旅行鞄を載せるカートを使い、搭乗のチェックイン手続き。カウンターでジョージはおもちゃの飛行機をプレゼントされて大はしゃぎ。
 搭乗予定の飛行機が嵐のために遅延していて、搭乗待ちをしなければならない羽目に。 大はしゃぎしていたジョージはオモチャの飛行機をどこかで置き忘れてしまう。それに気づいたジョージは、空港を右往左往する羽目に。乗客を運ぶ空港内のカート、動く歩道、ラゲッジの回転テーブルなど、空港内の各所の場面が登場する。
 搭乗できるようになった時、ジョージが居ない。黄色帽子の男は慌てる! なぜか、ジョージは先に乗り込んでいて・・・・(このあたりは絵本だからか)・・・乗務員に教えられて、黄色帽子の男は飛行機に無事搭乗。座席に着く手前で、ジョージは乗客のおばさんから、これあなたの忘れ物ね!と、おもちゃの飛行機を渡されることに。
 そして、無事ハワイに到着し、日光浴しているシーンでハッピーエンドになる。

 この絵本、飛行機そのものよりも、空港の様子に焦点が当てられている感じ。
 5~7歳の子供には、空港自体が興味の対象になるだろう。飛行機の飛んでいる写真や動画の方が、空港内の様子よりも、日頃目にふれやすいだろうから。

 この絵本の本文は、これまで読んだ絵本と比べて知らない語彙が一番少なかった。
 単語 teleplay 以外には、2つだけ。spot という単語に「見つける、見分ける」という語義もあることをこの絵本で知った。
 Bag were moving on along belt. George spotted the red suitcase.という文脈で使われている。
 もう一つは、get around という語句、「<困難などを>うまく避ける、乗り越える」という意味で使われている。

 寝坊して、家から空港へと飛び出して行く時に、黄色帽子の男は「ハワイに行こう!」と言う。この表現だが、”Hawaii, here we come!" the man said. と本文に記されている。この文を読み、改めて、come の使い方を思い出した。come が(相手の方へ)行くという意味でも使われることを。
 『新英和中辞典』(研究社)を引くと、come について、「go は出発点を中心に考えるが、come は第1に話し手のほうにだれかが移動して来る時に用い、第2に相手を中心にして相手の思う場所へ移動する時にも用いる;その時、日本語では『行く』になる」と。
「I will come to you. 僕が君のところへ行こう。/ I'm coming with you. ご一緒します」が文例に載っている。
 語彙の知識としては知っていても、Hawaii, here we come! なんて表現は自然にはでてこない・・・・。これは今回再認識した表現。私にとっての英語リハビリだ。

 今回は絵本の本文とは別に、最初に記した著作権関連で学ぶことがあった。このシリーズで、Curious George は原作者から完全に離れて、その先の新たなステージに入ったということだろう。絵本の末尾を見ると、このシリーズとして、16冊の表紙がリストアップされている。そして、「Curious George adventures:」と表示されている。
これがジョージの冒険シリーズの1冊だとわかる。

 絵本の絵の描き方が変わって新鮮に感じた。この英語絵本もナレーションが付いている。
 英語リハビリとして、リストアップされているのをさらに気楽に読み継いで行こうと思う。 

 ご一読ありがとうございます。
 

本書と関連してネット検索してみた。一覧にしておきたい。
PBS ホームページ  ⇒ PBS: Public Broadcasting Service
公共放送サービス  :ウィキペディア
READING RECOVERY LEVEL :「RR Books Reading Reading Books」
About Reading Recovery :「UCL」
Lexile 指数 :「ETS TOEFL Primary ETS TOEFL Junior」
Lexile Levels: What Parents Need to Know :「SCHOLASTIC PARENTS」

インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。その点、ご寛恕ください。)


 こちらもお読みいただけるとうれしいです。

『MARGRET & H.A.REY'S Curious George and the Puppies』
                  Houghton Mifflin Harcour
『Curious George Color Fun』 Houghton Mifflin Harcourt
『MARGRET & H.A.REY'S Curious George and the Pizza Party』
                  Houghton Mifflin Harcourt
『MARGRET & H.A.REY'S Curious George Goes to the Beach』
                  Houghton Mifflin Company
『MARGRET & H.A.REY'S Curious George Makes Pancakes』
                  Houghton Mifflin Company
『MARGRET & H.A.REY'S Curious George Goes to the Zoo』
                  HOUGHTON MIFFLIN HARCOURT
『Curious George's First Day of School』
                  Houghton Mifflin Harcourt
『Curious George Goes to the Hospital 』 MARGRET & H.A.REY
                  Houghton mifflin Harcourt
『Curious George Learns the Alphabet』 H.A.REY
                  Houghton Mifflin Harcourt
『Curious George and the Birthday Surprise』 MARGRET & H.A.REY
                  Houghton Mifflin Company
『Curious George Goes to a Movie』 MARGRET & H.A.REY
                  Houghton Mifflin Company