山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

TPPについて(15)-農業への参入障壁とは?

2013-04-15 | 農業

 新規就農に対する参入障壁が高いと言われております。農作業は重労働です。しかも農業で食っていくのは至難の業であろうと思われます。そういった意味での参入障壁であれば、それはよく理解できます。しかし、世間で言われている参入障壁とはどうも違うようです。

 試しに「農業 参入障壁」で検索してみますと、どうも農地取得が困難であることを指しているようです。「農業を始める為の農地が取得できないから新規参入が出来ない。」といった主張が大半を占めているようです。即ち、農地法の規制がある故に新規参入者が事実上農地を所有できない。従って、農地法を改正し、営利企業も含めて農地所有を認めるべきであるといった主張に繋がります。

 果たして、農業を始めるにあたって農地を所有する必要性がどれほどあるのでしょうか。「TPPについて(14)-農業への新規参入の難しさ」でも書いておりますが、新規就農者の約65%は農地の借入れだということです。農業に限らず、他のビジネスを開始するにあたって、初期投資を極力抑えて、できるだけ運転資金に廻したいと考えるのは至極合理的です。余程の資金的余裕が無い限り、固定資産を購入するといったことはないでしょう。店舗・事務所は賃貸、その他什器類はリースやレンタルできるものは購入しないといったことになると思います。農業を始めるには、農地だけでなく住宅、倉庫、農業機械、その他諸々が必要になります。そして、とてもではありませんが収益性が高いとは言い難いものがあります。それが分かっていて、誰が農地を購入してまで参入したいと思うでしょうか?

 仮に、営利企業が農地の所有が可能になったとした場合でも、新規参入にあたって農地を購入するでしょうか。経済合理性からいっても農地の購入はリスクが高いと考えるのではないでしょうか。ましてや購入した農地が農地としてしか転売できないといった縛りがあれば尚更であると考えます。現実の農地法では、営利企業が先般の改正により農地の借入れが出来るようになりました。従って、農地が確保ができないことが参入障壁となっているとは言い難いように思います。

 むしろ新規就農して継続して営農を続けられるかといったことが問題ではないのかと考えます。これは何も農業に限らず、他の産業分野の新規参入でも同様に起こりうることです。例えば、行政書士の新規開業では3年で半数くらいは廃業してしまっているのではないでしょうか。これに比べれば、農業の場合には5年で2~3割程度の離農ということですので、まだ健闘しているともいえるのではないでしょうか。

 農業への新規参入に関しては、農地の借入れは比較的簡単にできます。しかも、皆さんがお考えになっているより遥かに安価に借りることができますし、自治体等が斡旋していることもあります。また、新規就農者向けの融資も用意されております。

 できないできないと農地法を槍玉に挙げるより、実際に調べて行動してみては如何でしょうか。農業に限らず、新規にビジネスを立ち上げるのは大変なことです。規制緩和すれば何事も上手く運ぶようになると考えるのは幻想だと思います。規制があるから出来ないのではなく、規制を前提としてどのようにしたら出来るようになるかといった工夫をすることが大切なことであると思っております。規制緩和を求めるのは、その工夫の一つにしか過ぎません。

 そして就農者からしてみれば農業問題という問題は存在しないように思います。単純に農家という環境の中で一所懸命に生きているという実態があるだけです。いわゆる農業問題というものは、就農者以外の方々と農家との間にある問題であろうかと思います。いわゆる農業問題を議論することは必要なことですが、批判する対象の知識が余りにも不足していたり、思い込みが激しかったりする議論を見聞きすることがあります。「百聞は一見にしかず」と申します。農業を知るには農業を体験してみるのが一番です。その上で、大いに実りのある議論をしていただきたいものです。


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