Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 21

2020-07-31 09:36:52 | 日記
 ギョッ!、とした。私の目に、ほの白く祖母の顔が闇に浮かんでいるように見えたからだ。

 が、それは私の祖母なのだ。階段上部に有るのは私の祖母の顔ではないか!。そう思えば孫である自分が驚く事など全く無いのだ。きっと首の下にはちゃんと祖母の体が付いている筈だ。私はこう考えながら、彼女の顔、首の辺りに目を凝らした。そうして歩みをやや遅くしながら段々と階段へと近付いて行った。

 異質に見えるものに対してこういった勇敢な行動をとりながら、しかしその実、この間の私は内心相当肝を冷やしドキドキしていた。変な事等無い筈だと、心中自分に言い聞かせはしたものの、私は内心の驚愕を抑えつつ祖母の顔を現実の物で、何も害のない物なのだと数回自分に言い聞かせねばならなかった。そうしてその都度彼女に注意深く観察眼を向けた。正直私の歩が止まったのも1度切りでは無かった。

 祖母の顔の横に、彼女の拳の様な手が1つ見えた。それは階段脇に有る手摺上部を掴む彼女の手だった。そうかとそれを理解した私は、彼女の対になる手を探した。果たして、こちら側の階段上部で、私は自身の捜索物を発見した。

『想像通りだ。』

私は芯からほっとした。すると思わずほうっと溜息が漏れた。するとそれ迄強張った表情だった祖母も、ふいと我に返ったように目を上げて私を見た。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-07-31 09:28:53 | 日記

うの華 23

   外出していたらしい母が私の傍に現れた。母は玄関方向から階段のある部屋に入って来たのだ。「あら、如何したの?、こんな所で。」私が部屋にポツンと1人で立っていたものだから......

 早朝一雨きましたが、現在は晴れています。雲が多いのですが、青い空が覗いて、日差しも入り、夏本番が間近い事を感じさせます。今日も何処かの地方で梅雨明け宣言が出されるのでしょうね。
 そうそう、何日か前、蝉を見ました。歩いている先の、丁度足元に当たる場所に飛んで来て、パタッと落ちるように道の端に止まりました。久しぶりのアブラゼミ、茶色い姿に懐かしく感じました。童心を思い出した感じでしたね。

昨日の思い出を振り返ってみる

2020-07-31 09:26:28 | 日記

うの華 22

 どれどれ、やや物見遊山な感じの顔で、父は私が見詰める中、彼の両親の寝所へと入って行った。「やぁ、父さん、具合が悪いんだって。」直ぐに父の朗らかな言葉が聞こえた。私には見え......

 昨日上手くアクセスできなかったので、今日載せました。

うの華3 20

2020-07-28 14:50:55 | 日記
 近所に出歩く様になった私は、散歩の途中で疑問に出会うと、早々家に帰っては父や家族に尋ねたものだった。が、ある日の事、その様に態々家にとんぼ返りしなくても、家までの道の途中に有る近所のお店のおじさんやおばさんに、疑問を尋ねる事で自分の用が足りるという事に気付いた。彼等は機嫌よく回答してくれたのだ。

「智ちゃんそんなに急いで何処行くの?。」「家だよ。」「どこの?」「私の。」「あんたの家で何かあるのかい?」。いや、これこれ云々で父に尋ねに行くと言うと、ああ、それならこうだよと、家に行くまでも無い、私が教えてあげる。と来たものだ。

 こうなるとちゃっかりしたものである、労力を惜しんだ私は手直で疑問の解答を間に合わせようとしたのだ。するとこれまたある日の事、

 「難しいねぇ、難しい事を聞くねぇ。」

と、来た物だ。ここで相手から待ったがかかり、「今度ね、調べておくよ。」という様な正直な答弁が返ってきた。最初にこの返事を聞いた時には、私は酷く驚いたものだ。

 大人なのに、どうして知らないの?。そう尋ねる私に、「大人だって、全て知っているわけじゃ無い。」とか、「考えさせておくれ。」等、子供への説明は案外と大人には難しいという話を、これまた近所の人は私に、あれこれ体裁を取り繕う事無く率直に話してくれたものだ。

 この様に、御近所の大人達の話を聞く内に、私は家の大人達、父もどうやらそうらしい、やはりそうなのじゃないかなと考え、その真実に追々気付きつつあった。

 そこでこの時私は父を深いしなかったのだ。そうして、この時に認めた彼の頬の張りに、私の考察の核心は確定に到達したと言って良かった。私は自分の考えが正しかった事に明快な満足感を得て、そのまま眠りにつきたかった。

 ごおうぅ…、ぐがががが…。

物凄く大きな鼾が横に聞こえ、私を眠りから呼び覚ました。

 父だ!。私は自分の横で、彼の布団に大の字に横になり、大鼾をかいている父の姿を、自分の身を起こして迷惑気に見た。何という事だ。漸く安堵し、落ち着いて眠れるとばかり思っていた私なのに。耳を塞いで父と反対側に突っ伏し、顔を布団に押し付けて寝ようと試みたが、彼の鼾は大き過ぎた。遂にここで私は、眠る事を全く諦めた。

 もう下に降りよう。私は寝床から起き上がると階段へと向かった。そうして、何気なく階段の降り口に目を遣った。私はそこで、そこは屋内で全く日差しが差し込まなくなり仄暗かったが、その影の中に、置かれた様に存在している祖母の顔を1つ発見した。