Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

今日の思い出を振り返ってみる

2021-02-27 19:27:05 | 日記

うの華 168

 翌日私は、昨日の出来事からも有ったのだが、ここ数日で急に増して来た興味の対象、家の中に在る木材の年輪をそれぞれ観察してみていた。 思えば私達が居住にしている日本家屋には木材が......

    昨年は、2作品アップしたようなので、後の記事を載せました。
    お天気は良かったのですが、風が寒い日でした。マスク姿のせいでしょう、最近は、知らない人でも目が合うと、ああと会釈されます。え、誰?😥。と、首をかしげてしまいます。(😓苦)(笑い😅)

うの華3 114

2021-02-25 16:14:56 | 日記
 一瞬、父の瞳が驚愕し顔色が青ざめた様に私には見えた。

 が、見直して見ると、私の目に父の顔は平時の状態の物に映り、彼の瞳は閉じられていた。その後彼の瞼は半分程開いたが、父は視線を下に落としていた。私は父の顔を見つめ続けていたが、彼の顔は、顔色も彼の普段の顔色になっていた。父は平常そのものに見えた。そこで私はまた見間違えたのだろうと思った。ここ迄来ると、今日は自分の感覚が誠に信じがたい、というのが正直な私の気持ちになった。

 私はきょろきょろと座敷の中の2人を再度見直すと、彼等に近寄ろうと考え座敷に踏み入ろうとした。

「待て、」

父が言った。「でも、叔父さん。」と、私に背中を向けている従兄弟が言った。「まぁ、待て、何も言うな、動かないでくれ。」こう父が言い、お前そこにいてくれと言う。私は座敷の入り口で、彼のこの言葉が彼が私に言っているのか従兄弟に言っているのか判別が付かないでいた。私の座敷入り口への出現に気付いていない従兄弟にすれば尚更だろう。父のこの言葉が、自分以外の相手に掛けられているのかもしれない等、従兄弟には想像も付かないに違いない。彼は父の前でじっと静かに立った儘となった。すると父は私に一瞥をくれると廊下の方、座敷出口にもたつく足で歩み寄った。彼は開いた戸口に半ば身を乗り出すと、そこにいるらしい人物にぽそぽそと小声で何か話し始めた。

 「本当だな。」

自分を納得させる様に誰かに向かってそう言うと、暫くして父は部屋の中に戻って来た。彼は怪訝そうで半信半疑技と言う様な表情をしていた。視線は従兄弟と言うより主に私に向けられていた。まぁ、そんな事もあるんだな。父は呟く様に言うとぼうっとした儘の状態になり、やはり暫くは放心状態の体となった。

 相変わらず、私の目に映る父と従兄弟は共に静止状態の儘身動きせず座敷に立っていた。そこで私は2、3歩彼等に近付いた。ぼんやりとする父に変化は見られなかったが、気配を感じたのだろう、従兄弟の方は向こうを向いた儘だったが、その注意がこちらへ向けられた事が私には分かった。小さな黒い頭に、やや顔をこちら振り向けようとする動きがあったのだ。それで私は足音を忍ばせて、こっそり従兄弟の後ろから近付きわっ!と、驚かせたい衝動に駆られた。

 そうっと、そうっと、と、従兄弟の背後に忍び寄った。私が従兄弟の背に手を掛けようと両手を持ち上げかけた時、ハッとした感じで父の意識が私に向けられた。彼は私と視線を合わせると、

「いつの間に、」

お前いつの間にそこ迄来たのだと、さも私に不審そうに聞いて来る。私が今だと言おうとして口を開き掛けると、「まぁ、待て、動かないでくれ。」と、父は相変わらず、待ての指示を出して来るのだった。今回は、動いているのが私1人だった事から、この彼の静止が私に向けられた物だと私は判断した。

 「誰に言っているの?。」

従兄弟が父に声を掛けた。やはり彼は私の座敷への参入を勘づいていたのだと私は思った。しかし、自分の直ぐ背後まで近寄られているとは、そこ迄は思ってもいないだろうと、私は目の前の小さな黒い頭を見詰めほくそ笑んだ。

 「お前に、」

と父は口にして、やや間を空けたが、「言ってもいいんだな。」と言った。曖昧なニュアンスだ。言ってもいいんだが、と、父は続けると、どっちに言ってもよい言葉だったなと言った。彼は顎に手をやり視線を落とすと、その儘無言で首を傾げ何事か考え出した。

 ふと、父は視線を上げ私の方を見詰めた。お前今何をしようとしていたんだと、その彼の言葉の語尾には咎める様な調子が感じられた。何だろう、父は何か怒っている調子だと私は思った。ついドギマギとした焦燥感が私を襲った。何って?、思い当たる事柄が私の胸には浮かばないのだ。

「何をしようと思っていたんだ。」

父はその様に狼狽えた私を見て取ると自らの勢いが増した様だ。ふんとばかりに両足で座敷の畳を踏み締めすっくとばかりに背筋を伸ばした。瞳もきつい光が増して、彼はぐっとばかりに私を見据えて来る。

「言ってみろ。」

うの華3 113

2021-02-24 17:43:44 | 日記
 「それでは元気でおありなのですね。」

私の耳に急に大きな声が聞こえた。やはりその声は私が思い当たった女性、一郎伯父の奥さんに当たる伯母の声の様だ。私は思った。

 「では、私達はこれで。」と、続いてハッキリとそんな声も聞こえて来た。キッパリとした伯母のその口調に、居間にいた私はハッとした。廊下の奥で何だか険悪そうな雰囲気が漂っている様だ。そう私は先程から感じていたが、これでやはりそうらしいと私は合点した。

 先程から居間にいて、廊下の声が小声になり聞き取れなくなってからの私は、自然、身近な座敷の中に在る私の父と、三郎叔父の従兄弟の会話に注意が向いていたのだが、今度は何事だろうと身を固くして、再び廊下の方の物音に耳を澄ませた。祖母と伯母らしい人物は何を争っているのだろうか?。

 まぁまぁと、微笑んで取りなす様な祖母の声がした。そう急がなくても、せっかく来たのだから挨拶ぐらいして行きなさい。そんな事を彼女は言っている。祖母と伯母、さっき2人で挨拶していたんじゃないのかな?、と私は不思議に思った。が、それもよく聞こえ無い話し声だったからと、私は、先程の話は聞き間違えたのかもしれないと考え始めた。祖母の穏やかな声を聞くと、2人が争っていると私が取った事も間違いだったのかもしれない。こう考え始めると私は自分の思索に耽り始めた。

 「如何してそんな事、子供達にそんな事させられません。」

伯母の声だ。やはり穏やかな雰囲気とは言えなそうだなと私は思った。その後はぽそぽそと祖母と伯母の互いに語り合うらしい気配がしていたが、「もう、いい加減にしては如何です。…」と、どうやら私の父の声も会話の中に入って来ている事を私は聞き取った。その内女の子達の、ええ、はいと言う様な、何かに頷く返事の声があり、廊下は何とは無く静かになった。

 「もうお前は帰れ。」

急に障子襖の向こう、こちらから間近な場所ではっきりとした私の父の声がした。先程から従兄弟と彼が話し合っていた場所だ。「もうここへ来た目的は果たしただろう。」、そうも父の言う声がした。それに対して私の従兄弟は何やらごねごねとぐずっている様子だ。

 「未だだよ。未だお願いはある。」

途中で叔父さんに呼ばれたからここに来たのだと、従兄弟にすると不満気に父に苦情を言う声がしている。もういいじゃないかと父が言えば、最後が一番の、私がしたいお願い事なのだと、従兄弟はこれは叔父さんの言う事でも譲れないと頑張り始めた。

 本当に、何だろう?、何を長々と揉めているのだろうと、私は父と従兄弟の遣り取りが本格的に気になり始めた。そこで私は一歩歩を踏み出して、思い切りよくパタパタパタと歩を進めると居間を後にして、隣の階段のある部屋に入ると座敷の入り口へと一気に進んだ。

 座敷が私の視界に入って来ると、一番に押し入れの襖が開いていてその中に収められている仏壇が目に入った。そうしてその前に置かれた、畳の上に有る座布団が目に入った。座布団の上には紐で繋がった小振の拍子木がちょんと載っている。これには、ああと私の気に留まる物が有った。

 『打ち鳴らしてみたいな。』

私はふと思った。さっき従兄弟が打ち鳴らしていた奴だ、羨ましいな。私は思った。そうして、私は座敷の戸口に立つと立ち止まり、部屋の中を覗いて父と従兄弟がいる辺りに目を遣った。こちらを向いた父がいる。そうしてそんな父の前、私に背中を向けるようにして父の前に立つ、従兄弟の幼い姿を私はすぐに認める事が出来た。



うの華3 112

2021-02-23 20:46:30 | 日記
 さて、ここは廊下である。一段下がった所からこの家の台所に入って行く。その下がった廊下の段の窪みに、彼女は自分の孫の1人である彼女の三男の長子、今座敷の内にいる方の孫の兄に当たる子が、蹲る様にして隠れている姿を覗き込んだ。『やっぱり、この子まで来ているんだわ。』彼女は呆れた。

 「やっぱり、お前まで来ていたんだね。」

彼女は孫に声を掛けた。「一体如何言うつもりなんだい、お前まで来て。」つい苛立った感情の儘、彼女の声には叱責の念が込められた。

 この家の、お前と同じ私とお祖父ちゃんの孫の、従兄弟の一人の一大事だと言うのに。今この家は取り込んでいる所なんだよ。子供のお前達の相手をしている暇はないんだと、彼女はめくじらを立てて目の前の男の子に詰め寄った。

 すると子供は恐縮して目を丸くしたが、慌てて言い訳の様に彼女に言った。来ているのは自分だけじゃない。他のいとこも来ている。と。彼は自分の後ろを振り返って見せると台所の廊下の奥を指さした。孫の言葉に彼女は何だってと言いながら、彼の指差す方向へときつい視線の儘目をやると、流し台の影からちょこんと女の子が1人顔だけを出した。

 まぁ。と彼女が驚くのも無理はない。お前まで、と彼女が言う様に、その子は彼女の長男、一郎の子である。この女の子は一郎の次女に当たる女の子だった。

「もう、だめじゃないの顔を出しちゃ。」

そう言ってから、隠れていたのにとその子の横から立ち上がり、もう1人姿を現した女の子がいた。この子は先の女の子より背丈が高い。2人並んでみると彼女達はよく似た面差しをしている。この事から分かるが、この女の子達は姉妹である。後から立ち上がった子は姉であった。

 「あら、お前まで来たのかい。」と、ここで女の子達の顔を揃って見た祖母の声は、柔らかく、声音も温かいものに変わった。

 と、次に台所の先のトイレの戸が静々と開き、中からそそとして若い婦人が現れた。あらと廊下のこちらにいた年配の彼女は驚いて感嘆らしい声を発したが、如何やらこの若婦人の出現は彼女の予想の範疇であったらしく、彼女の感嘆の声にはそう驚いた気配がこもってい無かった。

 「姉さん、来てくれたんだね。ご苦労様。」「お母さんこそ、この度はお悔やみ申し上げます。ご心痛な事ですね。」と、廊下の降り口で寄り合った女性2人は挨拶し合った。その後姑と彼女の長男の嫁に当たるこの若婦人は、世間一般の無難な挨拶を交わし合っていたが、ところで、と、嫁の方から今この家が抱えている取り込み事に話題は変わった。

 今日ここへ来た本題に入りましょう。皆さんもう式の手配はお済みですか?。私も取り急ぎ子供達を集めて手伝いにやって来ました。と、あれこれと自分達がこの家にやって来た理由を説明した。何から手伝いましょう、親戚筋への連絡は滞り無く済みましたか、皆さんどのくらいでお越しでしょうか?。と彼女は姑に尋ねた。

 「それがねぇ、」

彼女は言葉を濁すと元気無く嫁に答えた。「そう急がなくても良い様なのだ。もしかすると、もう、手配しなくても済みそうな様子なのだ。」そう彼女は現状を説明し始めた。

うの華3 111

2021-02-23 20:40:11 | 日記
 祖母はああ言ったけれど、と、私の胸中には未だ何となく失態したのではないかという不安が渦巻いていた。祖母が消えた廊下の先の気配を窺うと、台所への降り口の辺りで、祖母の声と誰だか判別の付かない人の声がしていた。

 「お前まで…、」これは祖母の声だなと分かる声だ。…。如何言うつもりなんだい、お前まで来て。…。何だって。まぁ、お前まで。あら、…それがねぇ。…。

 祖母の声が優しく変化したと思ったら、彼等の会話には祖母では無い女性の声が混じっていた。その後私が唯一彼等の中で判別出来た祖母の声も細くなり、居間に佇んだ私の耳には声同様に彼女達の話の内容も、ぽそぽそとした小声の遣り取りだという事のみが分かるだけで、いくら私が耳を澄ましても全く声の判別は出来無くなった。部屋の柱時計の元、私は1人ぽつねんとしていた。

 如何やらと、私は祖母の話し相手の声に、自分の記憶の中にある女性の声を探し当てた。『伯母さんの声だ。』。それはかつてこの家で出会い挨拶した父の長兄、一郎伯父の細君の声だった。そう気付くと、廊下の声の中に他にきゃぴきゃぴと女の子らしい声が混じって来るのが分かった。私はその女の子の声に思い当たらなかった。誰だろうと思った。何故人の家の台所に老若男女、複数の人々が寄り集まっているのだろうか?。『何事だろう?』と私は不思議に思った。