Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 164

2021-05-31 09:41:39 | 日記
 呆れたね。こんな大事な話を、あれが嫁であるお前さんに何も話してないとは。

「あれがそんな手抜かりをする者だったとはなぁ。」

舅はいかにも呆れ果てたと言う様子で、息子の嫁の目の前で嘆息してみせた。嫁はそんな大仰な舅に常とは違う気配を感じた。胸騒ぎを感じて、彼女は改めて舅の顔を見詰め直した。すると彼の目が笑っている。ドキン!とした彼女は、その彼の笑いの理由は何だろうかと怪しく思った。そこで今迄の、舅が往来の方の入り口から入って来てから今迄の、彼の言動を思い出してみた。当然、この店の店主の言った言葉も彼女自身の脳裏には浮かんで来る。まさか…。と、彼女は思った。

 『否、そんな筈は…無いだろう。』彼女は自分の胸に湧いた黒い不安を打ち消した。結婚してからこの十何年か、彼女は舅一家の惣領息子の嫁として落ち度なく勤め上げて来た筈だ。そうだと内心頷くと、彼女は寡黙になり、自身の瞼の裏にパラパラと嫁いでからの様々な出来事、それに対応して行った自身の各采配の言動を思い出していた。どれも手抜かりは無かった筈だ、否それどころか、こうやって今思い出してみても、自分自身上手く収めたと自負できる場合も数回含まれている。『確かにそうだ。』彼女は再確認すると、内心得意の笑みを浮かべ、自身に対して喝采のエールを送った。『大丈夫だ!舅の言いたい事は離縁の話では無い筈だ。』。彼女は内心の自負を抑えつつ、控えめに微笑んで舅の顔を見詰めた。するとそんな彼女に舅は口を開いた。

 「お前さん達は自由なんだよ。」

結論から言うとね。舅は言った。「何も案じなくていいんだよ、将来の事は。あんたとあれ、子供達、お前さん達一家はね。」詰まりはそう言う話なんだよ。と、舅は穏やかに優しく微笑むと落ち着いた口調で彼女に言った。彼女は舅の言葉が意味する所を急には理解出来無かった。判然としない顔付きの嫁と、何か胸に含む顔付きの舅。彼らの傍に密やかに座す姉妹を他所に、大人2人の間には沈黙の時が流れた。舅は如何にも優しく微笑むと目の前の嫁に勧めた。「さぁ、それを持ってお行き、大枚だよ。もうそれはお前さん達の物だ。自由にお使い。」。

 「それは如何言う事でしょうか?。」

彼女の口から、遂にきつい口調で彼女の舅へ質問が飛んだ。夫が浮気でもしたというのだろうか?。如何にも胸に一物が有りそうで、秘密めいてほくそ笑んでいる様子の舅に、小切手帳を目の前に置いて、嫁である彼女は可成り苛立ち始めた。彼女は嫁である自分に対して彼が意地悪く何か隠し事をしていると感じ、そんな彼に今迄同じ家族の一員としてやって来た自分に対しての隔てを感じ取ると、彼女は彼の家の嫁に対して、自分という人間に対して、彼の非礼を思い至る迄になりふんぶんと憤っていた。

 舅は彼女の勢いに、おやと気勢を削がれた様子になった。彼は俯き加減になると、何を間違えたのかねぇと呟くと、あれがちゃんと言っておいてくれれば。こんな事には。等、私の方から言うと、ほれ、こんな私だから上手く言い出せなくてねぇと、言い訳の様に嫁に言うと、彼自身の口から出した言葉を舅は頭の中で繰り返した。彼はその都度彼自身の口をごねごねとまごつかせていた。

「旦那、負けちゃダメだ。ここが事件の押し所ですぜ。」

そんな男客に、食堂の亭主が加勢する様に声を掛けた。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-05-30 07:28:52 | 日記

マルのじれんま 36

 「おかえりなさい。」マルと紫苑さんの2人が寺の門を潜ると、本堂脇に在る庫裡(付属の家屋)の入り口でこう言って若い女性が出迎えてくれました。勿論この女性はシルです。 「伯父様、こち......

    昨日の思い出なのですが、今日アップしました。今日は曇り空です。日曜日ですね。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-05-29 09:13:39 | 日記

マルのじれんま 35

 ばらばらばら…。大粒の雨粒です。雲行きが怪しいと思ったら、とうとう雨が降り出しました。「生暖かい風が吹くと思った。」やはりねと紫苑さん。雨が降ってきましたな、避難しましょうとお隣......

    今日はこの後は曇りの予報です。昨年2作品書いたようなので、今週末はこれらをアップして、のんびりします。😊

うの華3 163

2021-05-28 13:43:11 | 日記
 それなぁに?、子供達が不思議そうな顔付きをすると、彼女の手元を見詰めて訊いた。子供等の母で有る彼女は、暫く子供達に答える事なく黙った儘逡巡していた。手切金?、全く思いも掛け無い話だ。店主の勘違いだと思うと、彼女は内心彼の事を侮蔑してしまう。さっき迄は良い腕前だと思い、彼に対して上流階級の雰囲気を感じていたのに、やはりこんな所で食堂を開く様な男では、本当に、こんな場面ではそんな事しか思いつかないのだろうさ。と彼女は思った。

 彼女は子供達の質問を他所に、今手に持った小切手帳をこのまま受け取って仕舞って良いものかどうかと迷っていた。こんな時夫なら如何するだろうか?、とも彼女は考えてみた。『夫に断り無く自分がこれを受け取って仕舞ってよいのだろうか?。』容易に答えの出せ無い彼女だった。

 「お義父さん、困ります。」彼女は舅に声を掛けた。「あの人に断り無くこんな大事な物を、」彼女は口から出す言葉に迷っていた。「自分の方で受け取って仕舞って良いのかどうか。」彼女はそう言うと、再び困りますと言って言葉を結んだ。

 それに対して舅は「いいんだよ。」と答えた。あれもそうしてくれと言っていたんでね。彼は嫁にそう打ち明けると目を伏せた。彼自身も言葉を選ぶ様子で、テーブルの上に彼の視線を這わせていた。

 いいんだよ。もうそれはお前さんの物、お前さんの家族、お前さんの家庭の物なんだよ。その話しはあれと私の間でもう話してあって、既に共に了解済みなんだ。と舅は嫁に明かした。

 嫁は腑に落ちない物を感じていた。夫名義のこの帳面は、確かに舅が、彼の惣領息子である夫の為に蓄財した物の物だろう。だが、何故今これが自分の手に渡されたのだろうか?。如何にも彼女にはこの事が要領を得無い状態だった。「でも、何故、今?。」彼女はそう舅に問い掛けてみるのだった。店主の言った言葉は確かに自分も聞いていた。が、と彼女は思う。しかし全く彼の言葉を鵜呑みにしていなかったのに、『まさか、そんな話のお金では無いだろう。』と、彼女はこの時にも再び思った。

 舅はポカンとした顔付きになるとやや口を開けた。彼には嫁で有る自分の反応が意外だったのだろう。彼女にも彼の反応が意外だった。嫁舅、共に判然としない状態で暫し互いの顔を見詰め合っていたが、ではと、舅は言った。

 「あんたは何も聞いていないんだね。」

あれから。と、彼は自分の息子である彼女の夫の仔細を、息子の嫁である彼女に確認した。ええと、それに対して彼女も会釈して言った。「私は何も聞いていないんです。この件について思い当たる様な話しは何も。」そう言うと、彼女は舅の説明を待った。

 彼は言い淀んでいた。「ええと、…。」何から説明したら良いかと彼は考えていた。目の前の息子の嫁に、酷く衝撃を与えない様にと思うと、彼は話す言葉を選び、説明する為の出来事の、話の順番を考えてしまうのだった。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-05-28 12:04:52 | 日記

大分よいです!

 朝は清々しいですね。空気が新鮮な香りです。朝食も美味しくいただきました。もうだいぶ良いのですが、もう1日お休みしようと思います。...

    昨年も結構お休みしましたね。今年も、もう大分よいです。