Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

蝶ちょう(16)

2018-12-31 09:34:31 | 日記

 『私も家に帰ろう。』そう思うと私は家路へと踏み出しました。何歩かみ出した私でしたが、最初の曲がり角に来る前に何かがピタリと私の歩を止めました。

『何も、あんな子のせいで自分の楽しみの蝶取りを止める事は無いんじゃないかな。』

そんな疑問の様な思考が私の脳裏に浮かんだのです。あんな人の事を悪く言うような子の為に、待っていても返事もしなかった子の為に、自分の興趣を取り止めるなんて、楽しみの時間を台無しにするなんて、それこそ愚かだ、愚の骨頂というものだという風に考え直しました。

 私は振り返って空き地の方向に続いている道を眺めました。目の前の電信柱、アスファルトの道から伸びている有線等を何気なく眺めながら、戻ろうかと考えました。戻ろう、戻って蝶との楽しい時間を過ごそう。私はそう決めると蝶が待っている空地へと戻ってきました。そして再び蝶取りに興じ始めました。

 最初は努めてにこやかに、そして段々とその日の最初の様に弾む気持ちを私は取り戻して行きました。その後父がやって来て、今度はお前あの子を殴ったのか、あの調子ではアザになるぞとか、また意味の分からない事を言い始めた時、私は昨日に続いて2度目の事になるので父のこの意味不明の言動に少し慣れて来ました。それで注意して、背中を父に向けたまま父の言葉を考察していました。

 『私がそんな事をする子だと思っているのかしら?』父は自分の子がそんな事をすると本気で考えているのかしら、そんな事を思い父の方を振り返ってみると、道に立っている父の姿が遠く小さく見えました。何て詰まらない人なんだろう。私は生まれて初めて自分の父の事を詰まらない人間なのだと感じました。あんな人の言う事を今までうんうんと素直に聞いていたのだと思うと、それらの事が皆馬鹿々々しくなってしまいました。それ所か、いっそあの人の言う通り自分は悪い子になって仕舞った方がいいのではないか、そんな事さえ思って、再び父に背を向けるとふんと自虐的にニヒルに笑ってみるのでした。

 でも、それも馬鹿々々しい事だ、間違った事でその為に自分を悪くしてしまうなんて、それこそ自分の為にならないというものだ。まだ若く、人生が始まったばかりの私なのに。「自分の思うように、自由に好きに生きて行けばいいんだ。」と、日頃父の言っていた言葉を思い出すと、自身でもそうだと呟くのでした。振り返ってひらひらと飛翔する蝶の姿に、私もあの憧れの蝶の様に自分の思うように自由に飛翔すればよいのだと考えると、私は遠く道に佇んで心配そうに私を見やる父ににこやかに笑って見せるのでした。「私そんな乱暴なことしないわ、馬鹿じゃないんだから。」と。

 


今日の思い出を振り返ってみる

2018-12-31 09:23:41 | 日記

 

 
美湾

 食事をした船内はこじんまりとしていて落ち着き、内輪で寛げる雰囲気がありました。覚えているメニューは前菜の「カッテージチーズのソテー」です。初めて食べましたが、厚切りのお豆腐が1丁......
 

 クッキーもそうでしたが、前菜のチーズの大きさに驚きました。これでもうお腹がいっぱいになるのではないか、そんな心配をしたものです。食べると入るものですね、元々私はよく食べる方ですが…。


蝶ちょう(15)

2018-12-30 20:50:24 | 日記

 「私嘘なんかついてないよ。」

相手はそう言うと、不思議そうな顔をして私が散々罵倒する言葉を黙って聞き流していました。如何にも怪訝で訳が分からないという相手の顔つきや、私を見詰める物言いたそうな口元に、1人で怒鳴っていた私は言いたい事を言って少し気が晴れたので、向こうの言い分を聞こうかと言葉を切りました。

 私は相手が何かを言いたいのだと思ったので、「何か言いたいなら言えば。」と言うと、黙って聞き役に回り向こうの言葉を待ち受けていました。すると急に向こうは相好を崩してシュンとした顔になり、肩を落とすとわーんとばかりに声に出して泣き出してしまいました。その後泣きながら意地悪と言うと、相手はその儘、特に私に向かって何か言葉を言う事も無く、只うわーんとばかりに声を上げて泣きながら踵を返すと、ばたばたと泣き声を上げて家へと向かって走り出して行ってしまいました。遠くなって行く泣き声が向こうの通りからも響いて来て、相手の子が帰って行く道筋を示していました。

 相手の子の言い分を待っていた私は、拍子抜けした感じで呆気にとられ、その子のそんな後ろ姿や鳴き声をその場で見送っていました。待っていたのに返事が無かった事で、私はまた相手への怒りが再熱して来ました。両手の拳を握り締めた儘、その場に暫く佇んだ儘でいました。

 あの子とは昨日迄はあんなに仲良しだったのに、私はそう思うと気持ちが沈んで、蝶取りへの遊び心が削がれてしまいました。私は空き地を見やりました。何事も無かったように蝶が2、3白い色を浮かべていました。


今日の思い出を振り返ってみる

2018-12-30 17:09:47 | 日記

 

 
美湾

   ホテル玄関のガラス戸を通り過ぎ、外に出た私は透けたガラス窓越しにホテル内にいるアルパカを見やりました。するとご機嫌な顔付きでうきうきとした様子にみえました。人なら笑顔で嬉しそ......
 

 年末忙しい時期ですが、今日の思い出を振り返ってみるです。


蝶ちょう(14)

2018-12-29 09:39:21 | 日記

 私は直立した感じで両手を伸ばし拳を握り締めていました。顔も怒りの形相でしたから、次には手が出て相手の頬でも殴るような私の雰囲気に、向こうは顔を背けると拳を防ぐように頬に腕を上げました。しかし私が何もしなかったので、相手は一寸拍子抜けした感じで如何したのかと問い掛けて来ました。自分が嘘つきってどういう事なのかと尋ねて来ます。

 「お父さんに嘘ついたでしょう。」

誰が?、あなたが、誰のお父さんに?、私のよ、何時?、昨日、等と、何時もは名前で呼んで仲良く遊んでいた相手なのに、私があなた呼ばわりまでして話をすると、

「そんな事言ってないけど。」

と、向こうの方も話し方を素っ気なく変えて、私嘘なんかついていないと主張するのです。

 相手は何だか考え事をしながら話しているらしく、話す言葉は半ば心ここにあらずの頼りない返事の仕方や内容になっていました。それで私の方では真面目に私の話に付き合う事もしないような、この子はとてもいい加減な子なのだと判断しました。そうして益々腹が立ってくるのでした。

 私の内面に昨日父から言われた謂れの無い言葉への怒りがふつふつと湧いて来ます。この子のせいで私は悪い子だと父に思われているのだ。

「嘘つきとは遊ばない。」

あなたなんて大嫌い、嘘つき!。そう言い放つと、その後も相手を散々嘘つき呼ばわりして大嫌いだと叫びました。