Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 151

2021-04-30 09:34:54 | 日記
 それは、紅茶付きなの?。娘の質問に、多分そうでしょうねと母は答えた。学校祭のバザーを過ぎると何処もそうね。娘達の言葉に、本当にそうねと母も相槌を打った。店主がモダンだねぇ、この辺りは、皆さんハイカラなんですな。と店内の親娘に声を掛ければ、学校祭のバザーで皆覚えて来るのよと、事も無げに彼女達の中から長女が応じた。

 「あちらは未だ就学前なのに、どちらから習って来られたのかしらね。」

母は誰に言うとなくそんな疑問を店内のテーブルに投げ掛けてみる。ここ等は子供のいる家が多いからね、店主が彼女に答えた。「その辺りからでやしょう。」。そうねと彼女は店主に微笑しながら応じた。

 そうして置いて、彼女は彼女の長女に、「今からお湯を沸かして、パンの用意が出来上がるのを待つんですって。今そこだから、40分頃でもいいわね、ここを出るのは。」と安心させる様に言った。母の言葉に、彼女は安心して胸を撫で下ろした。

    母と姉娘は、盛んにおにぎりをぱくつく末の子の相手をしながら、共に、ここを出て行ってからのその後の細かな算段を始めた。

「お前も頂きなさいな、持ちませんよ。」

母は、緊張感からかおにぎりに手を出さない儘の姉娘に、確り昼食を摂るよう勧めた。

 彼女達が食堂で出されたおにぎりを食べ終え、もう後10分程でここを出ようかと、頃合いを測りながらテレビを見ていると、姉にせっつかれた妹が横丁を眺めに出た。

「あれっお祖父ちゃん。」

妹娘の驚いた声にその母が耳を澄ませば、

「おや、お前、1人かい。」

大人の人と一緒なんだろうねと、不審そうな舅の声が聞こえて来た。『あの声はお義父さんだわ。』、彼女は確信した。確かに彼女の夫一郎の父の声である。お義父さんが食堂へ来られたのだ。昼時だものねと彼女は思った。が、不幸が有ったばかりの彼がここにやって来た事を意外にも思った。

    すると、彼女が思う間も無く、店の入り口の暖簾を彼の手で除けて舅の顔が現れた。

「お前達来てたのかい。」

と、彼は長男の嫁や、その孫の長女の顔を認め、彼女達に自身の親しみの笑顔を向け優しい声で語りかけた。

 あら、お義父さん、この度はまぁとんだ事になって、と、驚いた素振りで立ち上がった嫁の彼女は、店にやって来た舅にお悔やみの言葉を始めた。すると、いやいやと、彼は自分の手を横に振って彼女の言葉を遮った。

「未だだよ、あれは大丈夫の様だよ。お悔やみには未だ早いよ。」

彼は長男の嫁に細々と言った。

    え、それは一体如何言う事でしょうか?。と、怪訝そうに彼女が舅に問い掛けると、彼は、

「あれはあれで案外としぶとい子の様だ。この世に縁がある様でね。」

大丈夫、大丈夫と嫁に繰り返した。彼は明るい笑顔になるとにこにことして普通の口調に戻った。否、普段より明朗な声音になった。嫁は舅の快活な言葉を受け、彼の言葉に余計な言葉を挟まず、それは良かったです事とのみ言うと、彼女もホッと安堵の笑みを浮かべて舅を見返した。

 幼い子が不幸にあうなんて、そんな理不尽な事が無くて四郎さんも幸福、良かったですね。お義父さんも安心されたでしょう。きっとご心痛な事だったでしょうに、お義父さんもご苦労されて、さぞや気疲れされた事でしょう。等々、彼女は舅に店内の椅子を勧め、その苦労を労った。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-04-29 09:35:59 | 日記

マルのじれんま 19
 さてドクター・マルと弟のエンがもめた一件が有った翌日、マルとの約束の時間に、シルは自分のワークデスクに着いて彼を待っていました。しかし彼はなかなか彼女の相談室に現れませんでした。......

    今日のお天気は雨。今後一週間程は雨模様の天気予報です。花の多い時期、今年の作品にも写真を載せたくなります。
    ゴールデンウィークが始まって、雨続きの予報に、私は外に出るなという神様の思し召しかしらと思ったりしています。こちらの春の大祭もこの時期なので、今年は元々コロナで中止になっていましたが、この雨予報ではあってもお流れになったかもしれません。
    祭りは例年雨天中止です。1年に1度、折角の祭りなので、時には小雨決行の場合もありましたが、これは今年は、やはりしない方が良いという天からのお告げかもしれませんね。変異型が広まりませんように。近隣の県比べると、こちらの県は変異型が多い様です。

うの華3 150

2021-04-28 11:08:46 | 日記
 さて、食堂でおにぎり等頼んで、テーブルに落ち着いた母娘がお茶など啜り、キョロキョロと店内を見回してみると、食堂の柱に小さな古めかしい振り子時計が掛けられている。その 時計の針は丁度正午を指していた。未だそんな時刻なのかと、時計の針を見た彼女は意外に思った。
 
 思い返せば、義妹からの急な電話を受けた時、自分は我知らずの内に気が動転していたのだなぁ。直ぐに取る物も取り敢えず家を飛び出したのだっけ。あれは確か11時半前だったと思う。概ね20分頃だったろうか。その後は慌てふためいて子供達の学校を飛び回って…、子供2人を伴ってここへ来たんだった。それから家の前であの子に会って、…、あれこれ話していた時間が10分程かしら?。そんなものだったかしらと、振り返って考えていた彼女は逆算した。その間忙しく動き回っていた彼女には優に一時間半は過ぎたと思われる時間だった。『1時間も経ってないのね。』冷静になってみると、彼女には時の進み具合の遅い事がやはり不思議で意外に思われた。

「半も回った頃に、ゆるゆると出る事にしましょうか。」

時計に目を遣りながら、彼女は子供達に自分の予定を告げた。

 「そんなにのんびりでいいの?。」

神経質そうな語調で、彼女の長女が口を挟んだ。それに対して、「まぁ、それでいいわね。」と、彼女は長女と視線を合わせず、伏目がちになると言葉少なに彼女に答えた。母である彼女はその儘の姿勢で、根を生やしたようにどっしりと椅子に腰を落ち着けた。そうして彼女はテーブルの上に肘を付くと、彼女の両掌を組み合わせた。伏目がちにテーブルを見詰める彼女の口からは、ふうっと吐息が漏れた。

 そんな母の様子に、彼女の長女は自分の母の言葉を納得したかに見えた。彼女は母の傍の席に黙って座ると、静かに口を閉じていた。が、それでも彼女は自分の目の前の母の暢気さを気に病む様子で、その後もソワソワと立ったり座ったりと落ち着かない素振りを見せ始めた。内面の焦燥感から、彼女は食堂の椅子にじっくりと腰を落ち着けていられ無い様子に見えた。

 一方次女の方はというと、店内に入るや否や聞こえて来たテレビの音声にすっかり自身の注意を奪われていた。彼女は顔をテレビに向けた儘で無意識に母や姉の動きに自分の動きを合わせていた。母や姉がテーブルに着くと、彼女は母の反対側の空いた椅子に素早く腰掛けた。その儘彼女は顔だけをテレビの方向へ向け、まるで吸い寄せられた様にその放映画面に見入っていた。そんな調子の彼女だったので、傍にいた母と姉2人の話を彼女自身が聞いていたのかいないのか、それは如何にも怪しいと言う気配の彼女だった。

 「心配なら、」

つと母は椅子から立ち上がった。彼女は自分の姉娘の落ち着かない様子に配慮して、子の不安を和らげる事にしたのだ。電話してみるわねと、彼女は店の主に許可を求めると店内と調理場を仕切っている囲いの端に立った。

 この囲いには調理した料理を載せたり、客の食事が済んだ後の空き容器、洗い物類を載せる為の細長い台が取り付けて有った。この長台は調理場を囲う仕切りの中間辺りの高さに存在していた。調理場の竈門が置かれた部分から店内に大きく開かれた窓口、その開放部分を中心にして、台は窓口の下にぐるりと囲いに沿って取り付けられていた。その長い台より少し高めの位置で、さもその台の延長に有る様な形にして、調理場から店内に出る出口近く、店内通路に少々飛び出した空間の位置にこの店の電話台は設られていた。彼女はこの台の上に置いてあった黒電話を借りる事にしたのだ。

 彼女は手早く黒色の受話器を手に取ると、そのダイヤルに彼女の人差し指を差し込んだ。そうして、今迄にしばしば電話していた事から既に彼女が記憶済みの、彼女の義弟三郎家の電話番号をジーコロロ…と回した。その後、彼女は愛想良くはいはいと喋り出すと、おや、まぁ、そう、と相手に応じた。それでそれで、と、彼女は一旦、電話の向こうの相手と長く話込む様子に見えた。が、ふいと切り良い場所で彼女が「ところで…」と言うと、実はそちらの坊ちゃんの事で問題がと、こちらの事情を話し始めた。彼女が簡潔にこちらの用件を話し出したと思った所で少々、瞬く間に彼女は受話器を電話機にガチャリと掛けた。

 既に注文を受けた料理を客のテーブルに運び、調理場の丸椅子に腰を掛け、のんびりと足組み等して組んだ足の上に新聞を広げ、俯いて紙面を見ていた店主は客が乱暴に受話器を置く音に驚いて顔を上げた。彼は思わず通路を覗き込み電話していた女性客の顔色を窺った。調理場の直ぐ横に電話の台が置いてあったからだ。するとこの店のご主人と目の合った女性客は、彼に言った。

「お代は、お愛想と一緒に後でいいわね。」

そう店のご主人に声を掛けると客は、彼女が元いた場所へとさっさと戻って行った。「へい。」呆気に取られた様な顔付きで、店主は畏まって返事をした。

 「丁度お昼にした所だそうよ。叔母さん2人と息子さん、3人一緒だそう。」これであなたも安心でしょうと、母である彼女は心配そうに自分を見詰める姉娘に言った。電話の音に驚いた末娘も、母の顔をじいっと見詰めていたので、彼女は2人の娘に向かうと言った。電話のあの様子では向こうさんはたっぷり30分は大丈夫だ。彼女はそう説明した。それで向こうさんは何を食べているのかと、彼女の説明を受けた娘達が尋ねると、彼女等の母は「何と、サンドイッチですって」と意外そうな声で答えた。


今日の思い出を振り返ってみる

2021-04-27 19:18:45 | 日記

マルのじれんま 18
 一騒動の後の店内の後片付けが済んだ頃、ドクター・マルは物思いに沈みこんでいました。そこでシルは彼を誘って、パーラーの隅にある別のテーブルの椅子に2人で落ち着きました。彼女はそこで......

    すみません、間違えました。一昨年の物と2作品あったので、古い方のタグをクリックしたようです。昨年の方、アップしました。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-04-27 19:11:41 | 日記

今日の思い出を振り返ってみる

親交 45 その後彼は祖父に抱えられて自室に戻ると、再び前後不覚に陥りばったりと寝床に倒れ込み、そのままの姿勢でグァー、グァーと、寝息も荒く眠り込んでしまいました。彼がこんなにも深......

    良いお天気でした。鉢の植え替えなどしていました。
    コロナの接種券が昨日から郵送ということで、母の分が今日来ました。ワクチン接種の足音が聞こえるみたいです。未だ先の話なので、ポツポツですね。😊