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【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※4回目の紹介

2015-02-18 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第1章 避難計画の罠プロローグ」含むを複数回に分け紹介します。4回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「プロローグ」⇒「第1章 避難計画の罠」の紹介

前回の話:【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※3回目の紹介

第1章 避難計画の罠

 毎日新聞(2014年5月31日・西部朝刊)

「現場発:鹿児島県避難試算 川内原発事故、バスで10時間移動 高齢者、不安の声『耐えられるか疑問』」


 鹿児島県が29日に公表した九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の避難シミュレーションは、複合災害による避難ルートの途絶や支援が必要な高齢者らへの対応などがほとんど考慮されておらず、識者からも「楽観的なシナリオ」と指摘された。川内原発を巡っては再稼働に向けた原子力規制委員会の優先審査が進んでいる。一方で周辺には過疎と高齢化が進む集落も多く、住民からは不安の声が上がっている。

 川内原発から5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)内にある薩摩川内市寄田地区は、海に面した山間部に集落が点在する過疎地域だ。地区の住民登録数は4月1日現在、205世帯329で、65歳以上の高齢化率が約58%。市の避難計画では、住民たちは直線で約40キロ離れた鹿児島市内の公共施設に避難することになっている。

 シミュレーションは自家用車での避難が前提だが、長距離の運転が難しい高齢者にとっては非現実的だ。市の調査では地区の約100人がバスでの避難を希望している。だが山間部の道路は狭く、大型バスが通行するのは難しい。バスに乗るにはいったん集会施設に集まる必要もある。他方で地区内にある自治会の一つは昨年春、高齢化で役員になる住民がおらず解散した。避難の際に、避難者の確認などをする世話人すらいない状態だ。

 シミュレーションは、避難指示から2時間で全員が避難を開始すると想定した。県原子力安全対策課は「要援護者やPAZ内の住民は優先的に避難させるので、スムーズにいく」と主張するが、住民組織「寄田地区コミュニティ協議会」会長の川端文男さん(69)は「高齢者が多いのに集落は広範囲に離れている。避難開始までの準備に相当時間がかかるのでは」と危惧する。

 風向きなど状況によって2ルート設けられている避難経路上にも不安要素が多い。地区から約12キロ離れたいちき串木野市中心部までは、県道43号を南下して山間部や沿岸部を通るルートだが、土砂災害計画区域がいたるところにある。しかもルート周辺には政府の地震調査研究推進本部がマグニチュード7・2程度の地震発生の可能性を指摘する断層帯もあり、避難どころか孤立する恐れさえある。

 この区間を抜けたとしても、いちき串木野市の人口密集地が待っている。シミュレーションは、基本的に5キロ圏の住民が避難した後に5~30キロの住民に避難指示が出されると想定し、「最も標準的なパターン」で、5キロ圏内の住民が30キロ圏外に出るまで10時間15分かかると試算した。だが、川畑さんは「事故のニュースがあれば、みんな一斉に逃げるのではないか」と話し、渋滞でさらに時間が延びることを懸念する。

 支援が必要な高齢者らを抱える施設にとって問題はより深刻だ。寄田地区の隣接地区にある高齢者福祉施設「わかまつ園」のグループホームには83~97歳の認知症高齢者が9人いる。管理者の折田貴美子さんは「仮にシミュレーション通りにいっても、長時間の移動を耐えられるだろうか。認知症の人たちはバスに長時間いると脅迫観念にとらわれることもある」と言う。

 今回のシミュレーションについて、薩摩川内市の川内原発建設反対連絡協議会長、鳥原良子さん(65)は「避難先までどれだけかかるかもわからない。県は市民を安全に避難させるという意識に欠けている」と批判した。


■ことば

 ◆川内原発の避難シミュレーション

 ◇完了まで最長28時間
 自家用車で逃げるのを前提に、原発から30キロ圏内の住民の90%が30キロ圏外に出た時点で「避難完了」と定義した。一台あたりの乗車人数を変えるなどして13パターンの避難時間を試算。最短で9時間15分、最長28時間45分という結果になった。

*****

(1)

 暑い夏だった。

 とりわけ金曜の夕方は、脱原発をアピールするデモ隊の騒音が、蝉のあらんかぎりの鳴き声と競うほどに騒々しく、蒸し暑さをさらに掻き立てる。

「よりによって、なんでこんなタイミングで打合せなんだよ! ぺッ」

 仙石坂を下り、JTビルの脇から内閣府本府ビルに向かう上り坂の途中のタクシーの車内から、原子力規制庁原子力防災課長の守下靖は唾を外に吐いた。

「・・・金曜日の午後6時といえば、脱原発の御一行様のお出ましだぜ。内閣官房も何を考えてんだかよう」

※続き第1章 避難計画の罠プロローグ含む)は、2/19(木)22:00に投稿予定です。

 

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


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