議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

ココイチのビーフカツ横流し事件

2016年01月14日 11時45分22秒 | 廃棄物事件簿
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最近の処理業者のお騒がせネタとしては、やたらと火事が多いですが、
久々に派手な事件をおこしてくれました。

ご存知のように、CoCO壱番屋(ココイチ)のビーフカツに異物混入の可能性が
あったため、これを処理委託したところ、なぜかスーパーで売られていた
という事件です。

要は、処理業者に処理費を払って委託したのに、それがそのまま転売されていた
ということです。もちろん、その処理業者が直接スーパーに売ることはできない
ので、複数の仲介業者経由だったようです。ということは、既にそのような
ルートを持っていた可能性もありますね。前科ありかも?

処理業者による転売、横流し事件は、それほど珍しくありません。
メディアに取り上げられた事件としては、再春館製薬所の化粧品の横流しが
2006年ごろにありますが、表面化しない事件も少なからずあります。

当然、化粧品や食品のように、多くの人に影響がある、それも健康上の
問題が生じかねないものについては、特に大きく取り上げられます。

■対策のポイント
ということで、横流しなどされる可能性のある廃棄物の処理委託には、
十分な注意が必要です。

処理業者をどのように選定、委託するのかがポイントとなってきます。

・会社としてそもそも信頼できるか
 →廃棄物処理法を知っていてもいなくても、担当者と話して、現場を見れば
  それなりに分かるはずです。

・施設のセキュリティはどうか
 →外部からの侵入が容易にできない施設であるべきでしょう。

・社員教育をしているか
 →使えるモノ、食べれるモノを廃棄するというのは、良心がとがめます。
  よいことと思って、社員が持ち帰ったり、転売したりしている可能性
  もありますので、徹底した教育が必要です。

・コンプライアンス意識はあるか
 →処理業者のコンプライアンス意識を測る方法としては、廃棄物処理法の
  遵守状況がベストでしょう。意識が高ければ、転売や横流しを
  会社ぐるみでやろうということにはならないでしょう。

今回、ココイチ(壱番屋)が委託していた、ダイコーという会社は、
「さんぱいくん」にも情報登録していませんでした。HPもありません。
私だったら、恐ろしくてこの時点で検討リストから削除します。
もちろん、優良認定を受けている訳でもありません。

この様なリスクの高い廃棄商品を委託するのであれば、相当なチェックをして
しかるべきです。排出事業者によっては、処理施設に投入するところまで、
同行して目視確認していることもあります。


●ベストな方法
・処理委託する前に、破砕などをしてしまう。
 →どの業者に出すのであっても、リスクは残ります。自社で破砕などをする
  ことで、横流しされる可能性はなくなります。
  もちろん、自社で作業するのであっても、自社の作業員をちゃんと教育
  する必要は残りますが。。。


■廃棄物処理法

・実は、廃棄物処理法上の問題には、なりにくい案件です。
 なぜなら、受け取った段階では廃棄物という形ではありましたが、
 実際には有価売却されていたからです。廃棄物処理法は廃棄物だけを規制
 する法律ですから。
 具体的には、無許可で廃棄物を処理をすることを禁止しているのですが、
 廃棄物ではありませんし、転売してしまって、処分をしていませんから。

・処理業者は、廃棄物処理法では、契約書通りの処理をする義務は負っていません。
 なので、転売しても廃棄物処理法上は問題なしです。

・マニフェストは、中間処理、最終処分をした場合にだけ返送すればいいのであって
 していないのであれば出さなくていいのです。というより、処理していないのに
 マニフェストを返送したら、そっちのほうが違反です。

 もちろん、マニフェストが戻ってこなければ、排出事業者は措置内容等報告書を
 提出しなければならないですけど。それだって、処理業者の違反にはなりません。
 ただ、処理業者としてはそんな面倒なことを避けるために、処理していなくても
 マニフェストを返送するでしょうけどね。実際には、ここで廃棄物処理法違反
 で警察、行政の出番があるかもしれません。

■民事
・お気づきかもしれませんが、契約違反(不履行)になりますね。
 損害賠償請求の対象にはなると思います。ココイチがそれをやるかどうかは
 ともかく、ココイチがダイコーに法的な制裁を与えるとすれば、そこでしょう。

■刑事
・先ほどのマニフェストの虚偽記載(未処理返送)の他には、詐欺ですね。
 処理するということで、処理費まで受け取っておいて、転売して転売益まで
 懐に入れているのですから。

■ココイチへの影響
直接的な業績への影響ったって、実際はどうってことないでしょう。
スーパーでビーフコロッケ売られたからと言って、ココイチの販売には影響
しないでしょうから。

だた、イメージですよね。問題はスーパーで買う場合であって、ココイチで食べる
分には何ら問題ないのですが、なんかやな感じはあります。

あとは、担当者、大変な心労でしょうね。
自分が担当者になるかも、と思われる方、お気を付けください。
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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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今のところウェブで出ているリンク、貼っておきます。

ココイチプレスリリース
http://www.ichibanya.co.jp/comp/whatsnew/sangyouhaikibutusyorigyousyaniyoru%2Ctousyaseihin%28bi-fukatu%29fuseitenbainoosirase.pdf

http://www.yomiuri.co.jp/national/20160113-OYT1T50135.html

http://www.asahi.com/articles/ASJ1F66YLJ1FOIPE01M.html

http://news.yahoo.co.jp/pickup/6187458

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016011402000124.html


ちなみに、ココイチはハウス食品の傘下に入るはずです。
http://toyokeizai.net/articles/-/91566

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8 コメント

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HPありました。 (堀口昌澄)
2016-01-14 15:36:26
会社名「ダイキン」もしくは子会社が「ダイコー運輸」と違いますが、ここでしょう。許可番号が同じです。
http://daikogroup.co.jp/outline/index.html

会社名が最新でないという時点で、信頼に足るとは言えませんが。
返信する
補足です (堀口昌澄)
2016-01-15 09:06:51
処理委託した廃棄物が転売されたからと言って、それ自体での排出事業者への罰則適用とかはありません。
排出事業者としては、委託基準、マニフェストを運用していれば“廃棄物処理法上は”大丈夫です。

もちろん、横流しを知っててやっていたのであれば、別の話ですが、それにしたって廃棄物処理法違反じゃないでしょう。何しろ、生活環境の保全上支障のある不適正処理があったのではないのですから。
返信する
やはりマニフェスト虚偽記載返送のようです (堀口昌澄)
2016-01-15 09:19:19
こんな記事が出ていました。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016011390203753.html
不正転売していたのに、
「ダイコーは産廃管理票(マニフェスト)で、4万枚をすべて堆肥化したと虚偽の報告をしていた。」
ということです。
返信する
排出事業者責任 (通りすがり)
2016-01-19 09:37:07
たまたま記事を拝見させていただきました。
この件に関しては、廃棄物処理法上の排出事業者の責任はないのでしょうか?きちんとした知識があるわけではないのですが、私の会社でも数年前から廃棄物処理の委託先の現地確認などを(義務化されたと聞き)定期的に行っています。「不適切な処理などの問題が起これば排出事業者の責任を問われる」と認識していたのですが、問題はないのでしょうか?
返信する
排出事業者責任 (堀口昌澄)
2016-01-19 19:52:46
ビーフカツが不適正処理されていれば措置命令の対象になる可能性はありますが、そもそも今回の横流しは廃棄物処理法上の不適正処理ではありません。なにしろ、有価物として販売され、環境影響は全くないのですから。したがって、廃棄物処理法としては、横流しがあったことそれ自体を問題とは考えません。環境の面だけから考えると(誤解を恐れずに言えば)、人間が食べるのが一番いいのであって。。。
したがって、廃棄物処理法以外の法律に触れる可能性はあるかもしれませんが、廃棄物処理法の責任は壱番屋にはないでしょう。
もちろん、契約書、マニフェストを見ていないので、何とも言えません。よくチェックすれば、何かに引っかかるかもしれません。
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排出事業者責任 (通りすがり)
2016-01-20 08:56:15
なるほど。「中間で有価で販売された時点で廃棄物ではなくなる」ということに納得です。ありがとうございました。
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ダイコーの廃掃法違反事由 (事件の行く末が気になる人)
2016-01-23 11:41:39
ダイコーの廃掃法違反事由としては、マニフェスト虚偽記載だけなのでしょうか。
処分業許可の範囲外の行為(堆肥化ではなく「選別(?)」)とも考えられ、無許可変更にも問われてもおかしくないのではと感じています。(または、積保による有価物抜き取り行為?)

処理業者は委託契約外の処理(再生を含む)をしてはならない、という規定がないのは、廃掃法の抜け穴になっているのでしょうか。
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マニフェスト虚偽記載だけでしょう (堀口昌澄)
2016-01-25 14:46:34
事件の行く末が気になる人 様

回答遅くなり申し訳ありません。

ダイコーが、廃棄物であるビーフカツを選別した後、使える物を有価物として販売した、というのであれば、選別(=積替え保管)を無許可で行ったということにはなり得ます。

ただ、全量を有価物として扱っていたのでしょうから、ダイコーの管理下に入った時点で有価物というべきだと思います。したがって、廃棄物の処分、運搬、積替え保管にはなりません。

もちろん、廃棄物の定義は総合判断説によるものであり、そう考えればどんな解釈でもあり得るのですが。

契約は、あくまで排出事業者との間で交わされる物であり、それに違反したら契約違反になるだけです。廃棄物処理法、許可の範囲内であれば問題なし、契約は民民で自由にやってください、という考え方だと思います。


今回の事件は、廃棄物が不適正処理されて環境に悪影響を与えたというより、食品とすべきでないものを、食品として扱ったというところにこそ問題があると思います。
廃棄物処理法で責任追及するのは、本当はおかしいと思います。刑法で行くなら、やはり、詐欺かと。
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