議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

八百屋さんのボールペン

2008年12月11日 05時43分21秒 | 政策提言
 さて、タイトルからどんな内容か、お分かりになるでしょうか。もちろん、廃棄物ネタですよ。




■ボールペンは産業廃棄物か一般廃棄物か
 八百屋さんが耳にボールペンを挟んでいますが、アレが壊れた場合、産業廃棄物になるのでしょうか、それとも一般廃棄物でしょうか。

 答えは、文句なしに産業廃棄物です。八百屋という事業活動に伴って排出された、プラスチック主体の廃棄物です。もちろん、トマトなんかを置いている緑色のプラスチック製のザルも、産業廃棄物になります。

 ということで、今年の6月には相当数の八百屋さん、魚屋さん、果物屋さん、酒屋さんがマニフェストの交付等状況報告書を提出したので、自治体の窓口が混乱した、、、なんて話は聞いたことがありません。

 確認したことはありませんが、燃えないゴミとして市町村が回収してくれているはずです。こりゃちょっと変ですよね。
 産業廃棄物だったとしても、市町村なら併せ産廃処理ができるからOKじゃん、と思いそうですが、併せ産廃には落とし穴があります。併せ産廃でも、八百屋さんは市町村と産業廃棄物の処理委託契約書を締結しなければならないからです(詳しくはこの記事をどうぞ)。もちろん、パッカー車で回収に来た一般廃棄物収集運搬業者に、産業廃棄物であるボールペンの運搬を委託すると違反です。

■言いたいことは
 個人経営の企業で、廃棄物は少量(例えば毎月ビニール袋1個)しか排出されないのに、契約書、マニフェストの管理をし、しかも交付等状況報告書を毎年出さなければならないというのは、ナンセンスだと思います。このように、今の廃棄物処理法では、小規模な排出事業者であってもそれぞれに管理義務を課しています。しかし効率性、実効性を考えるならば行政がその仕事を一手に引き受ける方が良いはずです。一般廃棄物と同じような形ですね。

 つまり、現状産廃とされているものでも、少量である、有害性がないという条件を満たすのであれば、一般廃棄物と同じような運用を可能としてもよいのではないでしょうか。

 「実態として一般廃棄物として運用されているので、今のままでいいじゃないか」という議論もありえます。しかし順法の観点からすると、現状には明らかに問題があります。八百屋さんはともかく、大企業がグループ会社に対して行う監査において、よく問題になります。こんなところで皆さん悩んでいるわけですが、それこそムダな社会的コストだと思います。

 ということで、区分を変えたくて仕方がないです。皆さん、どう思われますか?

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4 コメント

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同感同感 (廃棄は禅 問答)
2008-12-19 13:19:14
ほぼ同じ発想から、
私は産業廃棄物と一般廃棄物という強制的区分の撤廃を主張したいです。
ただ、「認可を受けた産業廃棄物業者さん」という存在はあってもいいような気がします。
それは歯医者における保険外審美治療のような・・・。

もうひとつ、業種限定も撤廃したほうがいいように思うんですがね。
製造などによって大量に排出する業者こそ再資源化しやすい・・・再資源化すべき・・・(有価化もしやすい)のであって、たまに中量しか出ない場合は困るんですよね。
返信する
抜本改正 (堀口昌澄)
2008-12-22 00:06:19
廃棄は禅 問答様

コメントありがとうございます。

「廃棄物処理法のどこを変えたらよいと思う?」という質問をすると、「全部」という回答が少なくありません。その意味するところは、廃棄物の定義、区分のゼロからの見直しなんだと思います。それは同時に業についての見直しも意味します。

しかも、環境省のお役人も自治体の職員の方も、同じように考えている方が少なくありません。でも、これまでの蓄積、既得権などの問題があり、手を付けるのに尻込みしているのが現状です。

でも、だからこそやったほうが良いのでしょう。あとは覚悟の問題です。我々はこれから、循環型社会とか低炭素社会に向けて大きな社会変革を起さなければなりません。そんな大変なことをしなければならないのに、法律一つ変えることが出来ないのでは話になりません。

そしてこのことは、環境省に「怠慢だ」と言うよりもまず、我々の問題として声を出していかなければならないと思います。

民主主義なんですから、どんどん声をあげましょう。このブログでもよいですし、仕事中の雑談でも、政治家の先生に相談するとか、所属する業界団体内で議論を盛り上げるとか、パブリックコメントでも、直接環境省に相談に行ったりとか、方法はいくらでもあるはずです。

そういえば、署名活動ってありましたね。そのうち、やりましょうか?
返信する
声は上げているのですが通じません (真茶香)
2008-12-22 22:31:54
 昭和55年ごろ、当時、既に廃棄物の権威と言われていて、現在某大学の教授となっておられる方に、(当時の)現行の廃棄物の区分は改めるべきだとお話ししたことがあります。
 廃棄物を「生活系廃棄物」と「それ以外の廃棄物」とし、家庭からでるゴミと同等の八百屋のボールペンや事務所の紙ゴミは生活系廃棄物と併せて処理することを妨げないと言うような提案だったのですが、なぜ改めるべきなのか理解して下さいませんでした。(だから、いまでも一般廃棄物と産業廃棄物という枠組みが変わらなかったのでしょう。)

 奇しくも、本稿が掲載されたと同じ12月11日のeicネットのQアンドA(http://www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=30575)のA-3で、「解体して薪にした後は有価物だから、廃棄物の焼却にあたらない。」という解釈が紹介されていますが、考え用によっては「薪として燃料に使う」というのはあくまで口実であって、パレットを解体して寸法を揃えるのはあくまでも廃棄物の焼却をするための前処理に過ぎないという解釈も成り立ちます。
 これも「廃棄物」の定義が客観的に定められていないからで、この解釈に立てば解体した後に生じた「薪」を燃料としてお風呂を沸かしている場合、これを廃棄物処理法違反だということはできるかもしれませんが、この「薪」は一般廃棄物でしょうか?産業廃棄物でしょうか?「薪」になってしまった後からこれを特定することは至難ですが、これを犯罪事実として特定しなければ告訴や告発だけでなく、司法は起訴もできません。
 廃棄物処理法違反は裁判員制度の対象外ですので、フツーの人の感覚でおかしいと思うこのようなことを判決に反映させることもできませんが、このように違反だということはできても、違反事実を特定できないような体系の法律は根本から作り直すより他はないということだけは言えるでしょう。
返信する
違反事実の特定 (堀口昌澄)
2008-12-22 23:38:26
真茶香様

コメントありがとうございます。

犯罪として成立させるには、どの法律でもかなり面倒なんだとは思いますが、廃棄物処理法はその中でもトップクラスなんでしょうか。民法より明らかに訳が分からないことは分かるのですが。。。

そういえば、一般廃棄物と産業廃棄物の不法投棄で罰則が違うと、どちらか分からない場合に不都合だから揃えよう、ということで改正があったと記憶しています。でも、おっしゃるとおり産業廃棄物か一般廃棄物か特定できないとと起訴できないのであれば、意味がないですよね。

それにしても、一般廃棄物、産業廃棄物という区分を作ったおかげで起訴できないなんて、本末転倒もいいところですね。
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