議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

建設工事の発注者は排出事業者になれるのか

2011年06月15日 09時13分22秒 | コンサル日誌
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廃棄物処理法の改正で新設された法第21条の3では、今改正の目玉でもある
「建設廃棄物の排出事業者は元請業者である」という規定をしています。

一応引用します。
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土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する
工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる
場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についての
この法律(第三条第二項及び第三項、第四条第四項、第六条の三第二項
及び第三項、第十三条の十二、第十三条の十三、第十三条の十五並びに
第十五条の七を除く。)の規定の適用については、当該建設工事(他の者
から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた
建設業(建設工事を請け負う営業(その請け負つた建設工事を他の者に
請け負わせて営むものを含む。)をいう。以下同じ。)を営む者(以下
「元請業者」という。)を事業者とする。
***************

記事のタイトルにあるとおり、この改正案が出た段階から「発注者が排出事業者
になることはできないのか?」という質問をいろいろな方から頂きました。
私も環境省で質問したのですが、「そんなことを考える発注者もいるのか」
と少し驚いているようでした。
そのときの質問は文書で行い、「検討してください」と伝えたうえで、
施行通知が出るタイミングで再度同じ質問をしたのですが、、、どうも課題
として認識されていなかったようです。

理由としては、
・取るに足らないレアケースと考えられていた
・現場の声を改正内容に反映する仕組みが不十分だった
・忙しすぎて、検討できなかった
が考えられるでしょうか。

途中で担当も変わりましたしね。

担当の方が悪いとは思いません。しょーがないでしょう。
部長さんや課長さんが悪いとも思いません。
ただ、現場の声をしっかりと集める(届ける)仕組みがまだまだ不十分なのでは
ないかとは思います。

■見解
ま、それはともかく、環境省としては公式見解はないはずです。
最近あまり情報交換していないので分かりませんが、非公式見解もたぶん
ないと思います。

個人的見解としては、工事契約のなかで、特定の排出物について「勝手に
処理委託しないで、現地においておく」旨の取り決めがあれば、当然その場合
の排出事業者は発注者になると思います。

廃棄物処理法は、民間の契約内容についてまで制限するわけではないので
すから、この契約で問題ないはずです。

また、「発注者が処理委託しても廃棄物処理法違反にはなりませんよね」
ということは環境省に確認しています。例の、他人の廃棄物を処理委託しても
何の違反も問われない(規制がない)というやつです。この場合でも、
元請業者が責任を問われる可能性がないわけではない(たぶん事実上ないと
思いますが)ですが、そうであっても罰則や行政処分の対象にはなりません。

そう考えると、建設工事の発注者が、建設廃棄物の排出事業者として処理を
しても、実際には問題は発生しないのではないかと思います。

みなさん、どう思われますか?

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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いつも評価が高い演習です。

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
再委託について (あさ太郎)
2011-06-15 22:52:50
こんばんわ、いつも勉強させて頂いてます。頭がこんがらがってきたので、教えて頂きたいのですが、排出事業者が混合廃棄物を中間処理業者(許可内容は破砕・切断・選別・焼却)に委託している廃棄物を選別もしくは破砕したのち別の中間処理業者で焼却をしてもらうのは再委託に該当しますか?

返信する
再委託 (堀口昌澄)
2011-06-16 08:48:01
あさ太郎様

おはようございます。

再委託とは、処理業者が排出事業者から請け負った処理を自ら実施することなく他社にやらせることです。

排出事業者がA社に選別、破砕を委託し、実際にA社が選別、破砕をした後に他の中間処理業者に焼却してもらっても、それは再委託にはなりません。

A社は、受託した処理を行えば、その後最終処分を他の会社に委託してもよいのです。というか、それが一般的な方法です。なお、最終処分がどこになるかは、排出事業者と中間処理業者(A社)との間で交わされる契約書に記載しておく必要があります。
返信する
再委託 (あさ太郎)
2011-06-16 15:03:18
堀口様。
返信ありがとうございます。
私の意見ですが、A社が選別・破砕・切断の許可しか無い場合は、それで解るのですがA社には焼却の許可があるのにどうして、B社で焼却が再委託にならないのか?
また、排出事業者とA社との契約書に記載されていない場合は再度追加書類等は出さないといけないのでしょうか?
また、委託契約書でB社の扱いは最終処分先になるのですか?
そして、排出事業者がB社で焼却していることを知らない場合は違反になるのでしょうか?

返信する
許可の問題ではありません (堀口昌澄)
2011-06-20 10:46:19
あさ太郎様

委託した内容を再委託するかどうかが問題です。したがって、A社にどんな許可があるかどうかと、再委託になるかどうかは関係ありません。

通常の処理委託において、最終処分先が追加された場合、処理業者A社との契約書に記載を追加=覚書などの締結が必要です。ただ、B社に再委託した結果、最終処分先が変わった場合にどうすべきかは、明確にはなっていません。そこまで考えていないケースがほとんどと思いますが、覚書にその旨記載したほうが、無難とは思います。
なお、この場合B社は焼却ですので、通常は最終処分にはなりません。B社の焼却灰の行き先が最終処分になります。
排出事業者は、B社に再委託されていることを知らなかったとしても、それだけで違反を問われることはないでしょう。知っていたのであれば、別ですが。
返信する
遅くなりました。 (あさ太郎)
2011-06-28 15:42:42
堀口さん。返信遅れまして、すみません。
わかりやすい解説ありがとうございました。
返信する
初めまして (なるみ)
2011-07-01 10:38:00
ブログにコメント投稿するの始めてなんですが、建設工事に係る発注者は排出事業者ではないですよね。元請けが排出事業者になると。マニフェスト書くのも元請けだし。って今まで思っていました。
返信する
元請が排出事業者です (堀口昌澄)
2011-07-01 10:59:06
なるみ様

コメントありがとうござあいます。
おっしゃるとおり、基本的には元請が排出事業者で、発注者が排出事業者にはなりません。

この記事は、例外的な扱いについての検討をしています。
返信する
責任の所在を明確にしたいのでしょうけどね (真茶香)
2011-08-14 16:26:00
本日の「YOMIURI ONLINE」の記事を見て投稿する気になりました。

表題「逃げる中国人3人、山狩りで逮捕…金属廃材盗む」

思わず笑ってしまいました。廃材から連想するのは廃棄物。盗んでくれたらうれしいばかりのはず。盗まれたのが「金属の端材」とか、せめて「金属くず」であれば良かったのですが……

さて、環境省の役人が「排出者になりたい発注者なんているの?」と発言したという堀口さんのコメント。廃棄物の適正処理に責任を持ちたい」という殊勝な施主で無くても、「施主の支払ったお金で調達した資材の端材」の所有権は誰にあるのか?窃盗の対象となるようなものであれば所有権を主張する者がいてもおかしくないですね?
換金又は利用できるか否か?発生した段階では不明な場合、とりあえず排出者としての地位を明確にして(当然、廃棄物の処分費は発注金額から除きます。)おいて、有価物を抜き取った後、排出者としての地位で処分を行うと言うのはありでは無いでしょうか?
旧家の解体を頼まれたとき、「床柱は取っておいてくれ」とか「屋根の藁は肥料にするから残しておいてくれ」などと言われたことは、多くの方が経験しているのではないでしょうか?
返信する
そういえばそうですね (堀口昌澄)
2011-08-15 09:17:56
真茶香様

コメントありがとうございます。

解体するからといって、その全てが廃棄物になるとは限りませんから、解体後のもので必要なものはそこにおいといてくれ、というのはアリに決まっています。

一方、解体後のものが、有価でないと明らかな場合であって、発注者が自ら処理業者を選定、委託したい、という場合は厄介ですね。

いずれにせよ、この2点は、別物と考える必要があるのでしょう。
返信する
対象の工事が不明瞭です (田中義人)
2011-11-03 23:34:27
堀口様 初めまして。
質問をさせていただきます。

第21条の3の中で 【土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)】と書かれていますがこの建設工事の対象がはっきりしません。

例えば、マンションを解体するのであれば今回の「建設工事」の対象となると判断できますが、マンションの1室に設置されたサーバー群を撤去する場合は「建設工事」に該当するのでしょうか?

これまでは全て元請側で排出事業者となり処分して頂いていましたが(覚書にその旨記載してあります。)、法令の中に「土木建築に関する工事」と記載されている為、対象外ならば発注者で処理しなければならないかと危惧しております。

お考えをお聞かせ願えれば幸いです。
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