泉飛鳥塾

「古(いにしえ)の都・飛鳥」の原風景と共に、小さな旅で出会った風景等を紹介したいと思います!

奈良県にある石室がそっくりな「ムネサカ古墳・峯塚古墳」(2)

2022年02月19日 17時25分39秒 | 歴史
奈良県明日香村に所在する「岩屋山古墳」は、近鉄飛鳥駅から約5分位の所にある古墳です。古墳は開口しており石英閃緑岩(通称、飛鳥石)の切石を使った見事な石室はとても有名です。この石室とそっくりな「小谷古墳」(橿原市)・「ムネサカ古墳」(桜井市)・「峯塚古墳」(天理市)があります。2回にわけて、紹介したいと思います。
前回は、「岩屋山古墳」(明日香村)・「小谷古墳」(橿原市)を紹介しました。
今回は、奈良県にある石室がそっくりな「ムネサカ古墳・峯塚古墳」(2)を紹介したいと思います。
〇奈良県桜井市に所在する「ムネサカ一号墳」は、山上にある古墳です。「ムネサカ一号墳」の石室は「岩屋山古墳」と同じ設計図(規格)をもとに同一工人集団が作ったと思われるそうです。東西にそっくりな2基の古墳が並んでいます。元は4基あったようですが、内2基はすでに消滅しており、通常「ムネサカ古墳」といえばこの1号墳を指します。県史跡で径45m、高さ8mの2段築成の円墳です。石室の全長は16.6m、玄室長4.6m、幅2.7m、奥壁、側壁ともに2段積みの花崗岩の切石を使っており壁の隙間には漆喰が詰められており今も見ることが出来ます。玄室内の床面には、直径40cm前後の石が平坦に敷かれ、石床としていたようです。石室の様式は、明日香村の「岩屋山古墳」とほぼ同スケールですが岩屋山ほど切り石は平坦化されていません。被葬者は、近くにある栗原寺の建立に関係した中臣氏との関連が考えられます。7世紀中頃の飛鳥政権をささえた貴族の墳墓の一つと考えられているようです。
今まで色々な古墳を探訪しましたが、探しだすのにひと苦労した古墳でした。その分、見つけた時は大感激でした!

                  
  
〇奈良県杣之内町に所在する「峯塚古墳」は、古墳時代終末期の円墳です。東方から延びる尾根の南裾に位置し、南向きに開口する横穴式石室を有しています。
墳丘は3段に築かれており、横穴式石室は全長11.11mの大きなもので、羨道の入口付近を除くと築造当時の姿をよくとどめています。玄室は長さ4.46m、奥壁幅2.58mで、天井石までの高さは2.4mあります。玄室に使用されている石材は、大きなものでは幅4.5m、高さ1.2mにもおよび、2段構成で玄室の天井石を支えています。いずれの石材にも丁寧に加工された切石が用いられており、古墳時代終末期の横穴式石室の特徴を示しています。築造時期は7世紀中頃です。被葬者は、物部氏の系譜をひく石上氏による最後の古墳と考えられています。 
石室の形態としては「岩屋山古墳」(明日香村)と同様の特徴を有しており、「岩屋山式石室」と捉えられています。各地域の有力豪族同士で石室が似る例は少ないですが、終末期に入ると「峯塚古墳」や「小谷古墳」・「ムネサカ古墳」のように地域を超えて同一設計で石室が築造されるようになり、石工集団が豪族管理から朝廷管理に移行した様子が示唆されるようです。 
「岩屋山古墳」と「ムネサカ古墳」は、以前紹介させていただきました。その時に同様な古墳があると知り、今回「小谷古墳」・「峯塚古墳」を探訪してきました。
「峯塚古墳」の石室を見て、同じ設計図(規格)をもとに同一工人集団が作ったと思われていることが、実感できる古墳(石室)でした!
〇4つの古墳を見ての感想です
・「岩屋山古墳」(明日香村)
明治時代のイギリス人のウイリアム・ゴーランドが「舌を巻くほど見事な仕上げと石を完璧に組み合わせてある点で日本中のどれ一つとして及ばない」と紹介しています。真に、その通りだと思います。丁寧に加工された切石が用いられており、これに匹敵する古墳(石室)としては、奈良県桜井市にある「文殊院西古墳」ではないでしょうか・・・
・「小谷古墳」(橿原市)
丘陵にむき出しの状態の石室が見られます。残念ながら、柵がしてあり中に入ることができない状態です。もったいない・・・
「ムネサカ古墳」(桜井市)
どうして山中にひっそりと、これだけの立派な古墳(石室)を築いたのでしょうか・・・ 
・「峯塚古墳」(天理市)
これだけ立派な石室を持つ古墳ですが、これまでに発掘調査は実施されていないようです。竹藪のなかに、ひっそりありました。調査を行い、もう少しきちんと整備しては・・・
奈良には、「岩屋山式石室」の古墳がまだいくつか存在しているようです。また、探し出して古墳探訪をしてみたいと思います!

          
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奈良県にある石室がそっくりな「岩屋山古墳・小谷古墳」(1)

2022年02月12日 17時56分49秒 | 歴史
奈良県明日香村に所在する「岩屋山古墳」は、近鉄飛鳥駅から約5分位の所にある古墳です。古墳は開口しており石英閃緑岩(通称、飛鳥石)の切石を使った見事な石室はとても有名です。この石室とそっくりな「小谷古墳」(橿原市)・「ムネサカ古墳」(桜井市)・「峯塚古墳」(天理市)があります。
今回は、奈良県にある石室がそっくりな「岩屋山古墳・小谷古墳」(1)を紹介したいと思います。
〇奈良県明日香村大字越に所在する「岩屋山古墳」は、周辺には牽牛子塚古墳や真弓鑵子塚古墳、マルコ山古墳等、多くの終末期古墳が点在しています。
墳丘は1辺約40m、高さ約12mの2段築成の方墳で墳丘は版築で築かれており、下段テラス面には礫敷が施されていることが明らかとなりました。埋葬施設については石英閃緑岩(通称、飛鳥石)の切石を用いた南に開口する両袖式の横穴式石室です。規模は全長17.78m、玄室長4.86m、幅約2.8m、高さ約3mで羨道長約13m、幅約2m、高さ約2mを測ります。7世紀中頃の古墳と思われます。墳形は下段部が明らかに方形であることから、発掘調査では方墳とされていますが、下段部は方形であるが、上段部を八角形に築いた八角墳ではないかという説もあるようです。八角墳と言えば、飛鳥地域では天皇のみ許された古墳の形態です。
被葬者については、「斉明天皇」等が候補として挙げられています。
近鉄飛鳥駅から徒歩約5分位の所にあり、自由に見学できます。

         

〇奈良県橿原市に所在する小谷古墳(県指定)は、貝吹山から北東に延びる丘陵の先端に築かれています。墳丘の流出が激しいため墳形は不明ですが、方墳、あるいは円墳であったと考えられます。墳丘の規模は30m前後、高さは約8mで、墳丘の大きさに比して背の高い腰高の古墳と言えます。
埋葬施設は巨石を用いた両袖式の横穴式石室です。規模は全長約11.6m、玄室長約5m、玄室幅約2.8m、玄室高約2.7mをはかります。羨道は高さ約1.8mと、玄室より一段低くなっています。明日香村の岩屋山古墳と同じ形の石室と考えられます。玄室には竜山石(たつやまいし)製の家形石棺が残されています。石室の形状から7世紀に築かれた古墳と考えられます。被葬者は明らかでないですが、皇族を含めた有力氏族の墓と推定されています。
残念ながら現在柵がしてあり、中に入ることはできません。外からみても、立派な巨石の石室を持つ古墳だと伺えます。

                 
  
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推古天皇と竹田皇子の合葬墓?「植山古墳」

2022年02月05日 17時42分26秒 | 歴史
奈良県橿原市五条野町にある「植山古墳」は、大阪の太子町にある「山田高塚古墳(推古天皇陵)」へ改葬される前の「推古天皇と竹田皇子」の合葬墓ではないかと言われています。 
現在「植山古墳」は、歴史公園として整備が行われています。明日香村から車で約5分の所にあります。久しぶりに、訪れました。
今回は、推古天皇と竹田皇子の合葬墓?「植山古墳」を紹介したいと思います。
〇古墳公園として整備されている「植山古墳公園」の園路を登ると、眺望が開け西には二上山や葛城山を望むことができます。すぐ近くには、奈良県最大の「五条野丸山古墳」(全長318m)の前方後円墳を見ることができます。
古墳の丘遺跡部には、大阪(太子町)に改葬後、古墳を守るための柱塀の跡がみつかり、現在柱跡が復元されています。
「植山古墳」は、東西40m、南北27mの長方墳(長方形の墳丘の古墳)です。墳丘には、東西に並ぶ2つの横穴式石室があることから、双室墳と呼ばれることもあります。現在「植山古墳」の墳丘部分は、保護のためブルーシートに覆われています。遺跡部は、長方形の外形復元・双室墳の石室の修復を行い、将来公開の予定だそうです。
              

〇「植山古墳」に使われていた石材が、周辺に所在する「八咫烏神社・春日神社・スサノオノミコト神社」で見ることができます。
横穴式石室の中には、扉を設けるための閾石(しきみいし)があり、扉やその壁の一部が近くの「八咫烏(やたがらす)神社」「春日(かすが)神社」「素戔鳴命(すさのおのみこと)神社」の境内にある「踏石」などに使われています。以前、研修で教えていただきました。
「植山古墳」から出土した扉材の一部と考えられる石材は、丁寧に加工されていました。3つの神社は、近鉄岡寺駅から徒歩15分の所にある「植山古墳公園」の周囲にあり徒歩で行けます!
それにしても、どうして神社の「踏石」などに使われているのでしょうか・・・
・「八咫烏(やたがらす)神社」
         

・「春日(かすが)神社」
      

・「素戔鳴命(すさのおのみこと)神社」
    

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