この30年で日本の読書環境は激変した

雑誌「現代の図書館」(48巻1号 通巻193号)に、永江朗さんによる「この30年間で日本の読書環境は激変した」という記事が掲載されていた。
とても面白いのでメモを。

出版化学研究所の発表によると、2009年の雑誌と書籍の売上額は2兆円を割り、1兆9356億円となった。
売上額だけみるなら、1988年のレベル、バブル前の売上額にもどった。

ただし、新刊発行点数は7万8555点。
3万7064点だった1988年の倍以上。

点数が倍になったのに、売上額が同額というのは、出版社にとって1点あたりの販売額が半減したというのに等しい。
出版界の「本が売れない」という嘆きは、こうした実感からくるもの。

でも、読書環境は激変している。
当時はブックオフもアマゾンも古書店のサイトもなかった。
マンガ喫茶もなかったし、図書館の貸出冊数もかなり増大した。

売上額というのは、あくまで「取次ルート」によるものだ。
永江さんの文章を引用してみよう。

「ブックオフの売上げも、まんだらけの売上も、ネット古書店やヤフーオークションやアマゾン・マーケットプレイスの売上は含まれていない。さらにいうなら、出版社が読者に直接販売する雑誌の売上もここには含まれていない。だから、書籍・雑誌の売上額が1988年レベルになった原因は、活字離れ・読書離れなどではなく、新刊書店離れだというべきである」

つまり、売上額イコール読書量ではないのだ。
ひとは新刊書店以外のところで、本を得て読んでいる。
とすると、売上減を活字離れと称してきた出版界は、虚報を流していたということになる。
おそらく、今後とも虚報を流し続けるのではないか。

「これまで出版界は本が売れない理由を「活字離れ」、つまり国民が本を読まなくなったからだといってきた。なんとお気楽な商売だろう、出版業とは。どこの世界に、商品が売れないのは消費者がバカになったからだといって開き直る製造業者や流通業者がいるか」

永江さんは手厳しい。

この記事の末尾では、電子書籍についても触れられている。
レコードがCDになり、ネット配信になったように、電子書籍が紙の本にとって変わるとは思えない、紙の本と電子書籍は共存していくのではないか、というのが永江さんの見立て。

個人的には、紙の本を一冊買ったら、同本の電子書籍がオマケでついてきてくれるとうれしい。
読みたいと思ったとき、紙の本が手元になくても、端末があれば読むことができる。
紙の本と電子書籍はたがいのバックアップになるだろう。
両方買うのはツライので、オマケにしてくれないものか。
そうしたら、絶対端末を買うのだけれど。

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