散日拾遺

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3月25日 世界初のディーゼルエンジンが公開される(1901年)

2024-03-25 03:46:25 | 日記
2024年3月25日(月)

 毎年、春分が過ぎると月の形が気になり始める。今日が満月のはずなのに、ああ無念、東京は朝からすっぽり雨雲の中。

 ごらん、冬は去り、雨の季節は終った 
花は地に咲きいで、小鳥の歌うときが来た。
雅歌 2:11-12

 松山郊外のウグイスの声、足下一面のホトケノザ、雲の上なる月を思い描いて過ごすとしよう。

> 1901年3月25日、イギリスのマンチェスターで、世界初の二気筒ディーゼルエンジンが公開された。ディーゼルエンジンは、ドイツ人ルドルフ・ディーゼルの発明した圧縮発火型エンジンで、植物油で稼働することからオイル・エンジンとも呼ばれる。
 ディーゼルが初めてエンジンの特許を得たのは、1892年であった。当時の内燃機関は蒸気機関だったが、燃費が悪く大きな装置が必要なため、大企業では使われていたが、小規模な農民や職人といった人々が使うには適さなかった。そこでディーゼルは、たやすく生産可能な植物油を燃料として、効率よく働く経済性の高いエンジンを開発しようと考えたのだ。
 しかし、特許をとったもののディーゼルエンジンは構造が複雑で、すぐには実用化に至らなかった。四年後、ようやく安定稼働するようになり、工業用動力として使われ始める。鉄道や船舶も徐々に蒸気からディーゼルエンジンへと切り替わっていった。
 1913年9月26日、ルドルフ・ディーゼルはベルギーからイギリスに向かう汽船から突然姿を消した。その後遺体が港に流れ着き、船から落ちて亡くなったことが確認された。自殺、事故死の両方がささやかれたが、真相は未だに明らかでない。
晴山陽一『365日物語』(創英社/三省堂書店)P.90

Rudolf Christian Karl Diesel
1858年3月18日 - 1913年9月29日

 ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの違いがなかなか十分には理解できず、しかし「農民・漁民や職人の使いやすい、効率よく働く経済性の高いエンジン」という発想の優れたる所以に深く感じ入る。
 ペッテンコーファーといいディーゼルといい痛ましい最後を遂げたものだが、ディーゼルのそれは不吉に謎めいている。

> 1913年9月29日の夕刻、ディーゼルはロンドンでの会議に出席するため、アントウェルペンから郵便蒸気船ドレスデン号に乗船した。船上で夕食をとった後、翌朝6時15分に起こしてくれという言葉を残して、午後10時ごろ自室に戻った。しかし、翌朝には彼の部屋は無人で、ディーゼルの姿はどこにもなかった。その部屋を調べてみると、ベッドを使った形跡がなく寝巻も畳んであったが、腕時計はベッドの左に外して置かれていた。彼の帽子とオーバーはきちんと畳まれた状態で後甲板の手摺の下に置かれているのが発見された。
 10日後、オランダの船 Coertsen の乗組員が北海のノルウェーに近い洋上に浮かんでいる死体を発見。その死体は腐敗がひどく、人相もわからず、船に引き上げることもできなかった。その代わりに船員はピルケース、財布、IDカード、ポケットナイフ、眼鏡ケースなどを死体から回収している。同年10月13日、それらの品をルドルフの息子が父のものだと確認した。
 ディーゼルの死については様々な推理がなされている。伝記を書いた Grosser は自殺の可能性が高いとしている。商売敵や軍による殺害とする陰謀論もある。しかし、いずれも証拠に乏しく推測の域を出ない。
 ディーゼルの失踪直後、妻のマルタはディーゼルからその航海に出る直前に渡された鞄を開けてみた。ディーゼルはその鞄を渡すとき、翌週まで開けないように指示していたのである。中には20万マルクの現金と預金口座が空になっていることを示す書類が入っていた。

 さらに痛ましいのは「失踪後、ドイツでは長く墓も作られないような有様であった」と上記サイトにあることで、どんな事情があるにせよ、世界の農漁民や労働者にこれほどの貢献を為した人物へのふさわしい扱いとも思えない。それだけに下記の事実が喜ばしい。

> 日本で小型ディーゼルエンジンを開発した山岡孫吉(ヤンマー創業者)により、1957年、生誕100年、エンジン開発60年を記念して、アウグスブルクのヴィッテルスバッハ公園に石庭苑が寄贈された。
同上
 
 ヤンマーは気骨のある企業で、ルドルフ・ディーゼルの志を正しく継承・発展させている。ヤン坊とマー坊の天気予報は、昭和の子どもにとって懐かしい日々の背景だった。「僕の名前は」に始まるテーマソング、たぶん死ぬまで忘れはしないだろう。

Ω

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