いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

メンバーシップ、ジョブ、あるいはトレーニング

2011年02月17日 20時03分14秒 | 日本事情

(本文とは全然関係ない、春の兆しの中の裸の樹木)

メンバーシップとジョブという切り口。

日本は本当は身分社会である。メンバーシップを持っている者どもと持っていない者ども。

日本のメンバーシップは、そのカタカナ日本語にもかかわらず、村社会の面子(めんつ)という意味である。

村人。それは田畑(でんぱた)に象徴される既得権を持つ者ども。

■大卒の就活とはこのメンバーシップをめぐる冒険に他ならない。就職では"就社"であると昔から言われてきたのはこのことである。

おいらががきんちょの頃、つまり日本が世界第二位の経済大国としてヨーロッパ諸国を驚かせていてしばらくたった頃、英国の放送局が製作した繁栄ぬっぽんを冷やかすドキュメンタリー番組を見た。「日本人に仕事を尋ねると彼らは職種を答えることなく、襟の社員バッチを見せつけるのであった」という内容。その襟の社員バッチはどこぞの大企業のバッジに違いなかったのだろう。当時その意味はわからなかったが、えらく欧州人がそのことをバカにしていることが脳裏に焼きついた。

今頃やっとわかったよ、メンバーシップとジョブ。

最近の大学生の就活の痛さを批判する切り口として「大手・有名」志向批判がある。さらにはその背後に親の期待・指図があるとの指摘も。いい悪いを超えて、おいらの賛成・反対を超えて、そのおやごさんの"「大手・有名」志向"は理解ではできる。だって、メンバーシップ取れば、"楽"だもの。

おいらはメンバーシップに無縁だ。でも、幸いジョブには恵まれているのかもしれない。バイトだけど昼間から論文書いてもいいし。何しろ、40過ぎても実験/ができる/をやらないといけない。

■新卒の話に戻って、40過ぎてバイトのおいらが指摘したい二、三の事柄 ;

トレーニング;

1.新卒就職によるメンバーシップの取得の恩恵は、実は、ジョブ・トレーニング享受の権利であること。いいかえると、ジョブ・トレーニング享受なきメンバーシップは、終身刑であろう(後述)。

α)大手商社などは新入ですぐ担当言語習得のための研修を受けられるらしい。現地に行って語学習得とビジネス入門。

あるいは、β)ある大手プラント化成品メーカーは新卒ですぐプラントで 研修 業務。プラントでの仕事の習得とは別に、その全プラントのマスバラ・エネバラ*1を把握することが課題(全情報は与えられるが 自分で企画してデータ取りをして、自分ひとりで計算)だそうだ。さらには、原価計算も自分で企画してやるとのこと。
(*1, マスバランス、エネルギーバランス。物質収支、熱収支のこと。プラントのプロセスに出入りする物質と熱のすべて把握し、プロセス設計の妥当性と実際性を検算する。理論と生データの総合の精華。)

こういう研修は大学院に行っても享受できない。

さらに、20代というのは1日15時間(含む自宅での自習時間)働いても大丈夫なので、その力のあるときに搾取的仕事をさせられるのか(#1)、ジョブ・トレーニングを享受のできるのかは大違いである。

(#1,もっとすごいのが、"ジョブなきメンバーシップ"という社内失業。若いのに社内失業というのもあるらしい⇒社内失業と呼ばれて。これがメンバーシップ・ジョブの関係で最悪の状況だ。終身刑だ。若いのにトレーニング(on the job)を受けられず、腐っていくのである。やめない当人たちもどうなんだろう?やはり、メンバーシップが惜しいのだ。ジョブがなくたっていいのだ。)

30年後の社長;

2.メンバーシップ取得的就職は将来の社長・重役候補の可能性が期待されること。

就活情報でみないのが(おいらが気づかないだけか?)、就職・採用というのは、新卒が会社に入ることだけではなく、会社だって、新入社員採用と同時に、30年後の社長を探していること。(もちろん、別に毎年の新入社員から社長がでるわけではないが、数年に一度は必ずでる。)

欧米の普通の資本主義社会では社長業はジョブである。社長の業務というジョブがあるのだ。欧米資本主義における社長は株主と契約し社長業務を行う。株主の意に沿わなければ、解任。へこたれなかったら、また別の社長業務のジョブを探す。欧米のベテラン社長は何社もの社長をやった経験をもつこととなる。

日本の会社で例外的なのはあのカルロス・ゴーンの日産などである。こういう例は少ない。ほかの大多数の日本企業は生え抜きの社員が社長となる。つまり、メンバーシップ保持数十年というメンバーしか社長など経営者になれない。村人しか村長さんになれない社会である。

今のこの大多数の日本企業の社長たちは、ほとんどみんな数十年前は大卒の新卒一括採用の新入社員だったのだ。

別においらはそういう生き方は趣味ではないが、もしあなたが新卒で大企業に就職したいなら、30年後の社長候補であることを考慮に入れて、面接問答の想定でもしてみたらいかがだろうか? 

40過ぎてバイトのおいらのいうことなので何の説得力もないだろうが...。ただ、death valleyのバイトで上記α)、β)の習得のつじつまをちぃーとは独力であわせることができたことが、望外の幸せであった。










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