いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

筑波山麓江戸時代の"子供手当"

2010年04月11日 19時15分02秒 | 筑波山麓


―今日の筑波山麓―

■江戸時代の間中ずっと仙台伊達家(表高62万石)は常陸の国の筑波山麓と霞ヶ浦湖畔に1万余石の領地を徳川家から与えられていた。陣屋は龍ヶ崎にあった。(拙記事、・伊達政宗、来ました、 ・ 『仙台藩領と阿見地域』

常陸仙台藩領は3地域に分散していた。筑波郡、信太郡、龍ヶ崎。下の地図で筑波郡とあるのが仙台伊達領の3村の大砂・西高野・吉沼(現在もある)。信太郡は阿見町、龍ヶ崎は陣屋のあったところ。色絵地図(図2)は大砂・西高野・吉沼(図左・つまりは東から)の3村。

日本は村が社会の基本的構成単位。色絵図(図2)でおもしろいのは村同士は癒着しておらず、独立していること。平野の中の"離島"みたい。村ごとの自治がおこなわれていたのだろう。お互い地域意識とか希薄だったと推定される。なぜなら、自分の村がほぼ全世界だったのであろうから。

図1 図2

今の地図⇒http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=36.1488220008509&lon=140.0350509928319&z=15&mode=map&pointer=on&datum=wgs&fa=ks&home=on&hlat=36.1472279188&hlon=140.03685343729&layout=&ei=utf-8&p=

筑波山麓江戸時代の"子供手当"

仙台本領では宝暦年間(1750年~)に飢饉があった。貧困で子供を間引く領民が多くなった。そこで藩政庁は法を定め役人を当て1807年から、
「赤子養育仕法」に則って領内の村々を巡回し、
・領民に対する堕胎・間引を防ぐための教育
・幼児の養育状態の監査
・懐妊婦の保護および出生調査の実施
・養育費の支給 

を実施した。(出典;~我、領民の母たらん~ 観心院

伊達領である龍ケ崎でも実施;

赤子養育仕法は、飢饉、疫病、人口制限(堕胎・間引)などによる人口減少を緩和するために、仙台藩では、文化四年(一八〇七)養育方係役人が任命され、藩政の一環として制度化されており、龍ヶ崎領でも村々に赤子制動方が任命されている。養育料の支給は、本領では「親類・与頭・肝入・制動役折入吟味の上」代官並びに赤子養育方係横目連名で願い出ることになっており、龍ヶ崎市岡田家には、弘化三年からの赤子養育金御蔵出入帳が現存しているが、藩からの赤子養育手当金では賄いきれず、制動方の大庄屋からの献金や軍用金からの流用などがみられる。更に注目する必要があるのは、その支出の内容であるが、赤子養育金の本来の目的である養育金の貸付や赤子制動方への手当への支出は微々たるもので、貸付金の額が大半をしめていることである。貸付金は赤子養育金の運用のため始められたものと思われるが、幕末には、本末転倒して、赤子養育金とは考えられない貸付が大半を占めており、しかも無利息で、長期間のものが多い。今後の研究にまつべき点も多いが、藩財政の窮乏が赤子養育金の運用にもひずみをかけたものとおもわれ、幕末には、龍ヶ崎領においても、御用金の強制とともに不健全な赤子養育金の運用が領内の農民の生活を圧迫していたものと思われる。 内山純子(解説)『龍ヶ崎市史 史料集』

■幕藩体制での"子供手当"は領主の都合。領主は主観的には儒教に基づく慈愛の精神を発揮しているつもりではあるのだろう。しかし、実際は人口減少で田畑を耕して年貢を納めてくれる人がいないと藩の石高が減る。そうして、幕府認定の表高を割ると、財政難となる。なぜなら、参勤交代や幕府に言いつけられた事業や江戸城での格式行事の出費が出来なくなる。つまり、"デフレ"・藩経済縮小の忌避。

封建社会でなく自由な社会であれば民は子供を産もうと、持たないと勝手・自由。お上からとやかくいわれることではない。まず人がいて、それに奉仕するために政府がある。自由主義の原理。

だから、現在の民主党の子供手当はこの自由主義の原理に反する。それは財政難になりうる危機を避けるべきという観点ばかりではなく、民は子供くらい自分で育てられる自負心があって当然で、政府の支援を受けて子育てをするのは民への侮辱であるという観点に基づく。子育て支援って国民をバカにしていると感じる神経。政府は大きなお世話だ!、という思想。

↓参考例
13000円ばらまくよりも、月に16時間働けるようにすれば、いいのにね。
お金をもらうことよりも、稼ぐことに興味を持てばいいのにな。
私、また、変なこといってるのかなぁ。

nm_kの日記

●もっとも、この幕藩体制の「赤子養育仕法」のもう半分は堕胎の禁止。啓蒙と監視。赤子制動方という役人は妊婦の確認と出産の確認をする。堕胎の禁止といえば米国保守派の大原則(日本の"保守"派は知らない)。妊娠中絶をする産科医が銃で撃たれる事件が頻発したことは有名。でも、この中絶禁止反対派は政府が乗り出して政策として禁止・監視を行うべしという思想。政府にお願い!という考え。禁止・監視しないと国民は堕胎すると国民をバカにしているとみなさざるを得ない。なので、上記の自由主義と同じである思想とは言えない。

▼この飢饉、人口減少、農村荒廃時代の「移民政策」のネタも見つけたので、また今度。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (nm_k)
2010-04-12 09:54:52
江戸時代の子供手当ての話の中で、自分の独り言が引用されており驚きました。でも、嬉しいです。
政府からの侮辱であるとは考えていませんでしたが、確かにそのように受け取ってもいいのかもしれません。自由主義に反している、というのももっともだと思いました。
返信する
引用 (いか@)
2010-04-13 06:33:52
nm_kさん、おそれいります。

ちらほらネットを見ていて、直截に受給より稼ぐがいいと訴えている例はみなかったので、

勝手に引用させていただきました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。