COCKPIT-19

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親父と息子

2010-07-23 04:03:10 | 日記・エッセイ・コラム

僕が今お付き合いしてる人は、6年前の倒産を境にして、その前後二つに分類される。 後者で知り合った中の一人に「W」さんがいて、先週末、彼の長男が会津若松市に開店したフレンチレストランに招かれ、試食してきた。 オーナーシェフとなったT君は、フランス各地のレストランで修行の後、磐梯山麓のリゾートホテルで何年か働き、昨年嫁さんをもらい、2人で協力しながら、1ヶ月前開業にこぎつけた。

準備期間中に一度夫婦で我が家に見えた。 何かアドヴァイスが欲しいと言われ、僕の考える成功パターンを話した。 まず価格設定はランチを1200円、ディナーはその倍ぐらいとし、この予算で客の期待を裏切らない料理を出す。 ワインは他店で数千円程度のモノを、2500~3000円ぐらいで提供し、持ち込み歓迎。 その場合持ち込み料は一本1000円。

最初から予約制とする。 理由は食材のロスをなくすことと、客待ちの時間をゼロにして、予約のないときは休養と勉強に当てる。 手持ち資金は300万と聞いたので、内外装と家具はこの範囲で収め、厨房機器はリースを充当。 家賃は売り上げの2~3日分を想定し、最低7~8台が駐車できる立地を選ぶ。 さらに地元と東京で幾つか参考になる店を挙げて、行ってみるよう薦めた。

当日は十数年かぶりに磐越西線の鈍行を利用してみた。 単線で停車駅は12、そのうち10は無人駅、そのひとつひとつが懐かしい、所要時間75分。 途中 猪苗代湖や磐梯山を望みながら標高600mまで登り、その後会津盆地まで一気に下る。 駅から歩いて数分の、メインストリートに面した店に着いたのは夕方6時過ぎ。 白を基調としたシンプルなオープンカウンターで、テーブルは16席。 

僕の進言を8割方採用し、連日予約の客で1・5回転する好調ぶりとのこと、 ところがコース料理を食べ終えて感動が沸かない、「旨かった」の一言が出てこない。 食べ物商売で、作り手の思いや心が伝わってこないのは、深刻な問題。 帰り際外まで送ってきたWさんに、どうだった? と聞かれ、嘘は言えなかった。 今回 カネもクチも出さず、建築のプロを送り込んだだけの親父だったが、僕の直言をどう受け止めたか 気になる帰途だった。