COCKPIT-19

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[コルシカ島への旅」 (4)食材・ワイン&マフィア

2016-12-10 09:52:06 | 旅行記
シャンパンが抜かれ、長老モリコーネ氏の乾杯で歓迎夕食会が始まった。 コルシカと日本、互いに神秘的ともいえる未知の相手国だが、4か国語がすざまじく飛び交う中で緊張感がほぐれ、次第にジョークも通じ合うようになる。 ご馳走はコルシカならではの食材や素材を使った伝統料理で、栗の森で放し飼いにした豚肉料理や、高原地帯で飼育したヤギの乳を加工したチーズ、栗を粉にしたパンなどで、手をかけた家庭料理の暖かさが伝わってくる。

この島はさまざまな勢力の侵略を受け、800年近い暗黒時代を経験する。 それ以降も島民たちは100年以上もの間、島全体を覆う標高2800mにも達する峻厳な山岳の中腹で、親族を単位とする小集落で他人の目につかない生活を営んでいた。 山にこもり海には全く近ずくことがなかったので、魚貝類を使った料理はほとんどない。 海の存在は島民にとって脅威であり、未知であり、生死をさまよう境界の地として恐れられていた。 

長老によると親が子供を叱る際に「悪いことばかりしていると海に連れて行くぞ!」と言われたという。 コルシカ人にとっていかに海が恐ろしいものであり、親しみのもてないところかを知ることができる。 また島に広がっている灌木の密林を「マキ」と言い、そこに犯罪者が逃げ込むと逮捕は不可能と言われていた。 そこから第2次世界大戦中にナチス・ドイツとヴィシー政権に対するレジスタンス活動を続けた人たちを、マキと呼んでいたらしい。


さてシャンパンを飲み終えると、楽しみにしていたコルシカ・ワインの登場だ。 標高が高く花崗岩と石灰質の土壌、海流の影響で涼しく少雨、さらに並外れて日照時間の長いコルシカはブドウ栽培に最適。 さらに徐草剤を使わずに済むことから、日本でもオーガニック志向のワイン・ラヴァ―の間でフアンが増え続けている。 ところで今回の旅行の出発間際に各国の大使を務めたF氏と昼食を共にした際、コルシカ・マフィアはイタリア・シチリア・マフィアと並んで最強であるという話を聞いた。


強さの理由は、フランスからの独立運動と地域経済・資本家・政治家・犯罪組織・労働者などが渾然一体となっており、閉鎖的な社会風習と相まって、皆が知っていることでも誰も口を開かないから。 また内部抗争で多くの死者が出ても一般市民や観光客が犠牲になることはなく、スリ・泥棒なども少なく治安はきわめて良好。 マフィアは北と南に分かれており、夕食の席で圧倒的に強いのは文句なしに此処北のマフィアと聞き、あらためてモリコーネ氏を見直してしまった。