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「クラシック機・JU52/3m」 墜落事故で思うこと

2018-08-13 21:34:11 | 航空機
8年以上も前に書いた僕のブログ「ユンカース・JU52/3m」にアクセスが続いている。 8月4日午後、アルペン遊覧ツアーのフライトで、スイス南部の都市・ロカルトから、チューリッヒ郊外のデューベンドルに飛行中の旧軍用プロペラ機「JU52/3M」が、標高2540mのアルプス山脈中腹に墜落、乗員乗客20人全員が死亡したからだ。 この航空機は1930年代にドイツのユンカース社が開発したもので、ヒットラー暗殺未遂事件を映画化したトム・クルーズ主演・製作「ワルキュレー」の撮影でも、ヒットラーの専用機として主要な役割を演じていた貴重なクラシック機。

鋼管構造にジュラルミンの波形外板を張った全金属製の尾輪式機体に、BMWの空冷星形9気筒725馬力×3基のエンジンが機首と両翼に取り付けられ、巡航速度211Km/H、航続距離1300Km、乗員3名+乗客18名、生産機数は5000機。 ルフトハンザ・スイス航空・南アフリカ航空など民間航空機としても幅広く使われ、長期間の路線ではドイツとノルウエーの間を1955年まで20年間も飛び続けた。 現役で運航してるのは僅かに数機で、そのうちの4機をスイスのJu-Airが所有し、観光ツアーなどで飛び続けており、今回の事故機はそのうちの1機。

古い経年機は事故のリスクが高いのではないかと懸念する声も聴くが、実はその逆であり、新しい機体ほど初期の段階で予期せぬトラブルが多く発生している。 これらを一つ一つクリアーしながら安全性を高めていくのが飛行機の世界。 史上最初のジェット旅客機・英国デ・ハビランド社製「コメット」に、連続して発生した「空中爆発事故」などはその最たる一例。 当時の航空工学・金属工学の分野で未知の領域にあった重大な欠陥が解明され、この事故を契機に故障の拡大を食い止める「フェイルセーフ思想」が普及し、航空機の安全性を著しく向上させている。

こうした重大事故は別にしても、最近では米ボーイング社の新鋭機「Bー787型機」なども、これまで大小幾つかのトラブルを改修してきており、現在も全日空機の多くがエンジン点検のため足止めされている。 ところで、飛行機はどんなに古くなっても最初の試験飛行時の性能を維持することが決められている。 例えば離陸時、もしパワーが少しでも低下してれば大事故になりかねないからだ。 さらに経年旅客機などの場合、各種の計器類・パネルなどの航空電子機器などはアップグレードされ、飛行条件の良くない天候時のフライトでも支障なく運航できるよう安全性が確保されている。

欧米ではクラシック機への思い入れが強く、徹底したメンテナンスを施しながら古い飛行機を長く飛ばし続ける伝統が受け継がれている。 「JU52/3m」と同年代に開発され、世界の航空機輸送を大きく変革した米ダグラス社の「ダグラス・DC-3」なども、いまだに飛行できる機体が150機以上も存在し、遊覧飛行や観光ツアーで多くのフアンを楽しませている。 そうした中で起きた「世界初のクラシック機墜落事故」が与えたショックは大きく、事故原因の究明が待ち遠しい。 クラシック機の維持管理にはカネと時間がタップリかかる・・・1時間のフライトに費やする時間は、驚くなかれ、およそ100時間。