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運航停止が続く、新型機・「737MAX」の行方

2019-08-01 04:01:22 | 航空機
僕はこのブログで、「旅客機の技術革新がどんなに進んでも事故は必ず付きまとう、最後に乗員乗客の命を救うのはパイロットの経験と技量で、万一に備えた訓練を怠ってはならない」と記述してきた。 しかし昨年から今年にかけて連続して起きた「ボーイング737MAX」の墜落惨事は、残念ながらパイロットの出番がないまま多くの人命を失ってしまった。 この辺のところを「ハドソン川の奇蹟」で驚くべき判断力と操縦技量で全員の命を救った機長、チェリー・サレンバーガー氏が、下院運輸委員会の公聴会で次のように語っている。

「事故機のパイロットが機首を上げるべく悪戦苦闘しながらも、時間が足りなくなっていく様子が手に取るように分かった」。氏は事故機と同様の飛行をシュミレーターで経験していたのだ。「悪戦苦闘」とは、ソフトウエアのトラブルで突然降下の指示を出すオートパイロットと、これを解除して上昇に戻そうとする機長との闘いである。 僕が乗っていた小型機などは、操縦桿を動かしただけでオートパイロットが外れ手動操縦に切り替わったし、旧世代の旅客機も同様に、緊急時オーパイを一瞬に解除することができた。 

ところが737MAXの場合、解除に何段階かの複雑な手順を踏まなければならず、サレンバーガー氏はこれを指して「時間が足りなかった」と報告したのだろう。 おそらく機長は墜落直前まで緊急マニュアルを片手に、秒単位の操作を必死に行っていたに違いない。 墜落事故の根源となったのが「操縦特性補助システム」(MCAS)という装置で、これは737シリーズの中で737MAXのみにしか取り付けられていない。 なぜ、複雑な装置が必要だったのか? ここに事故の本質を解く大きな問題が隠されている。

737MAXは、燃費改善のために新しい大型エンジンを採用し、17%の削減を実現した。 これはユーザーである航空会社にとって大きな魅力で、受注増にもつながった。 一方開発段階で問題も生じた。エンジンの大型化で取り付け位置を従来の737より若干上方・前方に移動させたため、機首がヘッドアップする特性が生じたのだ。 これによる失速を防ぐために考え出されたのが「MCAS」だったのだ。 いわば古い機体に新しいエンジンを載せたアンバランスを補うために生まれた苦肉の産物が、「MCAS」だった。

当然、型式証明を出した米連邦航空局(FAA)も巻き込んで、改善対策への作業が進んでいるものの、直接の原因となったソフトウエアや、システムの手直しだけで問題が解決するとは思えない。 構造的なところまで踏み込んで安全を完璧なものにしないと、ユーザーや犠牲者の遺族も納得しないだろうし、FAAの型式証明の再承認も難しいと思うからだ。 ボーイングの商用機受注の7割、売り上げの3割、営業利益の5割近くを稼ぎ出してきた737MAX。 「急がば回れ、利益より安全優先」の教訓を抱えながら苦悩するボーイング社の行方が注目される。 

 

    



2 コメント

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表現は難解ぶっても… (アムリタ)
2019-09-17 08:32:54
表現は難解ぶっても、中身は空っぽですね。自分だけが正しいと上から目線で考えていらっしゃるのでしょう。
人間の力。 (アムリタ)
2020-01-19 11:42:22
私は20代の頃から時々映画フィルム映写のアルバイトをしておりましたが、映写機を選べる時は必ずマニュアルにしておりました。オートマは楽ですが、映写中にトラブルが起こった時すぐに止められません。その点マニュアルの方がフィルムの掛け代え等は面倒ですが、いざという時対処がしやすいです。本当の便利さって何でしょうね。

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