COCKPIT-19

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「眼にできる癌」を知っていますか?

2020-05-04 02:29:00 | 健康・病気
世界中が「コロナウイルス」一色に染まり、他の病気はすっかり影が薄れてしまった感もあるが、最近身近に起きた「希少癌」についてレポートしたい。 女房の左下瞼(まぶた)に俗に言う「ものもらい」ができたのは、1月の半ば頃、痛くも異物感もないので様子を見ていたが、消える気配がないので、かかりつけ眼科クリニックの診察を受けた。 点眼薬を処方され、ウイルス性ものでもないので心配ないとの説明だったが、薬を使い切っても治らないので再度診察を受けると、切除したほうがいいと眼科の中核病院を紹介された。 

東京の大学病院から派遣されてる若いドクターの診察を受けた結果、病名は「眼瞼腫瘍」。 2週間後の週初めに手術と決まり、一泊の入院が必要だと説明を受ける。 ところが間際になってドクターが当日来れなくなり、 急遽手術の執刀は院長が行うことになり、再診察の結果入院は週末まで延長された。 「入院診療計画書」によると、手術後の再発に備え「冷凍凝固術」を施し、腫瘍の病理検査を行うとある。 さらに「抗悪性腫瘍薬の点滴」とも記されており、癌を疑っていることは間違いなし。 抜歯と同程度に軽く考えていた僕の認識は、根底から覆された。

眼の癌はいわゆる「希少癌」で、発生頻度が少ないため、一般の眼科医も含めて十分な情報が伝達されていないのが現状。 1975年のデータで年間死亡者数は54人、そして最も多いのが皮膚がんの一種である「眼瞼がん」。 推定年齢70代半ばの老院長は、たぶんこれまで眼の癌に遭遇した経験があり、女房の腫瘍を見て直感的に癌を疑ったのではないか思われる。 手術の終わった後も、同系列の病院でCT検査による転移の有無を確認するなど、病理検査の結果が出るのを待たずに癌を想定した治療を進めている。

幸い心配してたCT検査の方は問題なく、残るは病理検査の結果がどう出るかだが、最悪の場合に備えて予備知識も得るように努めた。 仮に癌と宣告されれば「放射線治療」が必要となり、鉛の保護版を眼瞼の裏に入れ、眼球を保護しながら照射するようになるらしい。 これには特殊な機器が必要で、対処できる施設は限られているから、東京での長期入院も覚悟しておかねばなるまい。 年齢的なことも考慮すると、どの程度の治療まで耐えられるかも心配で、眠られぬ夜も続く。 救いは患者当人が意外に平然だったこと。

コロナ厳戒態勢下における一週間の入院生活は、亭主も面会謝絶、病院食以外の差し入れも厳禁、まさに刑務所以上の軟禁状態が続いた。 そして週末前日の診察で、横文字の多い文書に目を通していた院長が顔を上げ、「病理検査の結果はセーフです」と、ぶっきらぼうに告げられた。 その他の説明やねぎらいの言葉も一切なし、足元の素足にゴム草履の姿が印象に残った。 老院長の直感は外れたが、患者家族の受けた精神的苦痛を責める気は起きなかった。 常に「万が一」を考えるのが医師の使命だと考えたからだ。