鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

庄内地域医療情報ネットワーク研究会

2022-03-15 12:27:16 | 日記

年度はコロナ禍で開催できなかった。今年も開催をどうするか議論があったが、このような活動は継続が大事であること、オンラインでの学会や研究会が広く一般的に行わることが可能となった今の時代、とくに情報ネットワークをテーマとする本研究会としては開催すべきあろうということになった。

まずは、庄内の医療情報ネットワークの歴史を振り返ってみたい。当地区の情報ネットワークの歴史は2001年のNet4Uの運用に始まる。2003年には荘内病院に、2008年には日本海総合病院に電子カルテが導入され、地域での医療情報化の基盤ができた。その後、病院・Net4Uと地域の診療所を結ぶネットワーク(ちょうかいネット)が構築され、現在に至っている。その間、Net4Uは、医療と介護を繋ぐヘルスケアソーシャルネットワークとして全面改訂され、おもに施設を含む在宅医療における医療と介護を繋ぐシステムとして発展してきた。酒田では2018年より薬局間でお薬情報共有システムが運用され、ちょうかネットは秋田へもネットワークを拡充している。

庄内地域医療情報ネットワーク研究会の歴史である。1回目は、全国規模のIDリンク研究会と合同で開催され全国から315名の参加を得て盛大に行われた。その後は、医療と介護の連携をテーマを主に年1回開催されてきたが、ここ2回はテーマが(医療情報ネットワークの)「未来」や「進めよう」というにテーマに変わってきている。参加人数は年々減少傾向にあるが、医療情報ネットワークが当たり前になってきた証左なのかもしれない。

山形県内4医療圏毎の参加施設数の比較である。庄内医療圏は、病院、診療所、薬局、訪看、介護施設などの参加数はいずれもトップ。とくに、介護施設の参加が多いのが目立つ。

4医療圏の登録患者数、アクセス数の比較。ちょうかいネットが多く、ついで、べにばなネット、Oki-netの順。

鶴岡医療圏の医療機関や施設からの開示請求数の推移、荘内病院、日本海総合病院ともに右肩上がりで増加している。2021年度は、荘内病院へ900、日本海総合病院へ400、庄内余目病院へ100の開示請求があった。

2016年にデータをとっているので、今回は、荘内病院にお願いして調査してもらい施設類型の割合の推移を調査してみた。2016年度は、医科診療所が多くを占めていたが、2021年度は、全体にバランスがとれているようにみえる。数的には、介護系施設が2から9へ、歯科診療所の0から3、訪問看護ステーションの2から5の増加が目立つ。

2016年と2021年度の施設類型毎の登録患者数の推移である。薬局、歯科診療所の実際の利用は少ないことがわかる。介護系施設、訪看の伸びが著しい。医科診療所の利用患者数は減少している。病診連携という意味では、順調に推移しているわけではない。今後の課題と考える。

参加施設はトータルで141。近年は、訪問看護・訪問リハ、介護系施設の参加が増えおり、全職種バランスよく参加している。

参加職種の内訳。数字は調査年度にアクセスした職種毎のユーザ数をカウント。ここ数年、看護師>介護職>医師の順位は変わりはないが、看護職、介護職の割合が増加しており、看護師と介護職で7割を占める。

2013年から過去8年間の職種毎のユーザー数の年次推移。近年、看護師の増加が著しく、介護職、リハ職の利用も順調に増加傾向にある。一方で、医師、薬剤師、歯科医に著変はない。

歯科医師、衞衛生士、言語聴覚士、作業療法士、寒冷栄養士、薬剤師、医師、看護師など多職種で構成されるチームを結成。食支援が必要な患者宅へ訪問し、チームメンバーで課題を検討し、患者家族を支援する活動を行っている。情報共有にはNet4Uを利用。アセスメントシートや動画を含む画像をチームで共有することで、実際に患者宅へ訪問しなくてもディスカッションができている。

Note4Uは、患者家族もパソコンのみならずスマホやタブレットを利用し、Net4Uにアクセスできるツール。連絡ノートに書きこむことで患者・家族に関わるチームと様々な連絡や情報のやり取りが可能となる。

在宅医、ケアマネ、訪問看護師、病院所属の認知症看護認定看護師などよりなる在宅チームが家族と共に患者本人の願いを支え、在宅看取りを行った事例。

荘内病院に入院したコロナ患者の肺炎症状などが重篤化した場合、日本海総合病院へ転院しエクモなどの治療が必要になる場合がある。そのような事例においてちょうかいネットが活用されている。また、宿泊療養施設に入所した患者のバイタル情報をちょうかいネットのフェイスシートへ登録し、保健所や病院、診療所などが参照している。

鶴岡地区の新型コロナへ対応(荘内システム)の概要図、第5波はオミクロン株の特性から患者数は多いが軽症が大多数という特徴がある。鶴岡地区では、荘内病院は重症例の対応に特化し、若年層の患者は医師会を中心とした開業医がトリアージとその後の経過観察を行っている。情報のやりとりは電話とファックスがほとんどであり、折角の医療情報ネットワークが活用されているという状況にはない。(以下つぶやき:病歴、家族構成、保険証番号など個人情報丸出しの情報がセキュリティーなど全く考慮されていないファックスでやりとりしているいることに全く問題を感じていない国、行政はいったいどんな感覚なんだろう。個人情報保護法があるのに・・。IT後進国なんだな~)

2018年にオンライン診療が解禁となったが、少なくとも当地区では普及しているという状況にはない。鶴岡地区は山形県のオンライン診療導入支援事業を受託し、在宅患者におけるオンライン診療の実証事業を実施した。オンライン診療は、十分使えることは実証できたが、運用の実際には訪問看護師などの介在が必要であること、また、診療報酬が低く設定されていることが普及の阻害因子と考えられた。

東北公益文科大学の鎌田先生は、「連携」について研究しているが、医療連携、多職種連携の先には、社会連携が必要と訴えている。社会連携とは、複数異分野が 関係する連携事象のこと。情報ネットワークも同じような考え方にたつと、横軸の基盤化にあたる部分が、医療情報のデジタル化と考える。実質的には電子カルテの普及である。一方縦軸の高度化は、医療情報利活用に当たるだろう。デジタル化した医療情報をどう利活用していくかが課題であるが、現在、ちょかいネットは医療連携に利用され、Net4Uは多職種連携に活用されている。さらに、社会連携という文脈ではNote4Uを代表とする患者主体のシステム(Personal Helath Record)がそれに値するだろう。将来的には、医療情報は患者さん自身が直接アクセスし、活用していく時代へ発展していくものと考えている。

 


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